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7話:憧れの初依頼

す、すいません。

家の事情があって書く時間がとれないので遅くなりました。

それでは7話始まります。

小鳥の囀ずる音と窓から射し込む光によって俺は眠りから覚めていく。


「知らない天井だ」

寝ぼけた頭は何故知らない天井を見ているのかと思ったが、直ぐに覚醒した意識により今の状況を思い出す。


「ああ、そうか。昨日異世界に来てここは異世界の宿か」

う~ん、と伸びをしながらベットから起き上がる。


「ふ~、今は何時くらいなんだろうな」

ベットから降りて、窓を開けるとひんやりとした朝の空気が部屋に侵入してきて肌に鳥肌を立てる。


だけど不思議と寒くは感じない。

「今日は初依頼に挑戦だ」

俺の心は熱く燃えたぎっていた。

「よし、頑張るぞ」

俺は一度頬を両手で叩いた。これで気合いは完全に入った。



「一ノ瀬~、起きているか~」

一時間位部屋でのんびりしてたがさすがに暇になってきたので一ノ瀬と亜里沙の部屋を訪れた。


ドンドンドンドン、何度も扉をノックする。俺は何も一ノ瀬を無理矢理起起こそうとしているわけではない。

一ノ瀬が起きている気配を感じたのでノックをすることにした。

亜里沙が寝てるのは確認するまでもない。


ズンズン扉の向こうで音がする。やっぱり起きているようだ。

「るっさいわね。そんなに叩かなくても聞こえてるわよ!」

扉を開く音と共に怒りの形相の一ノ瀬が顔をだす。


「お早う一ノ瀬。この宿俺達だけだから一ノ瀬は起きてるようだったしノックしてみたんだ。だけど何で直ぐに出てこなかったんだ」

ノックをしてから数分は出てこなかったぞ。


「うるさい! 女の子の部屋にこんな時間にくるのがいけないのよ!」

「……ああ、もしかして身だしなみチェックしてた」

「そんな事直で聞くなんてデリカシーがないわね」

そういうもんなのか? 亜里沙とはそういう事気にしたりしたかったからな。


「ふ~ん、そんな事言っていいのか」

「な、何よ」

一ノ瀬が俺の余裕な態度に驚いている。

バカだな。俺には自称なんでもカ~バ~ンがある事を忘れてやがる。


「フフフ、これは何か分かるかな」

俺は肩に下げているカバンから小さなポーチを取り出す。


「何よそれは」

「化粧品等を入れてるポーチ。服もあるぞ」

俺は異世界に行くときには化粧品等や服を持っていくと決めていた。


「あ、あんた、何でそんな物を持っているの」

「まあ、こんな事もあるかと思ってな。いるだろ?」

「え、ええ、貰うけど……ありがとう」

本来の使う予定とは違うけど、まぁ、一ノ瀬が喜ぶならいいか。


「その化粧品のどれもが親戚のオッチャンの会社が作った品なんだけど凄いぞ」

「へ~、それは凄いはね、……ん? あんたもこういうの使うの」

「ああ、せっかくオッチャンがくれたやつだからな。っても肌に気を付けてるくらいだけど」

肌のキレイさは結構自信がある。


「ほ~、確かにあんたって肌キメ細かいし、弾力性もありそうだしキレイよね~」

一ノ瀬が俺の肌に触れながら言ってくる。

まあ、褒められるのは悪い気分ではないな。


「なんか、あんたって童顔だし服もあるのよね。女装ができるじゃない。似合うかもよ」

「変な事言うのやめろよ。今のがフラグになったらどうすんだよ」

女装なんて絶対にやんないからな。……絶対にやんないからな!



「んで、あんた何しに来たのよ」

身だしなみを完璧に整えた一ノ瀬が今更ながらに俺の訪問理由を尋ねる。


「暇つ……亜里沙を起こしに来たんだ」

「あんた今暇潰しって言おうとしたよね」

地球では毎朝俺が亜里沙を起こしに行ってたんだ嘘ではない。


「はぁー、じゃあ早く起こすのよ」

俺が亜里沙を起こすのに三十分かかった。




「はるばる~♪来たぜ、大草~原~♪」

俺は今大草原に来ている。何のためかって? 決まっている。初依頼のモンスター討伐で来たのだ。

憧れてた冒険者。テンションが上がって変な歌を歌うのもしょうがないだろ。


「あんたよくそんなテンションになれるはね」

「やっぱりモンスター討伐はキツいか」

テンションMAXの俺とは反対に、一ノ瀬は何処か暗い。

そりゃそうだ。冒険者になるとは言ったが、今から行うのは生き物の殺害だ。

テンションMAXの俺の方が変わっているんだろう。


「ううん、そうじゃない」

「えっ」

どうやら俺の考えは違ったらしい。じゃあ何故一ノ瀬は暗いんだ。


「私も最初はキツいって思ってたの、でもいざモンスターと戦うんだと思ったら急に頭が冷静になって、それが少し怖いなって」

「一ノ瀬……」

モンスターと戦うと思った瞬間に冷静になるなんて事あるか? もしかしたら異世界に来たときか職業を得たときに、モンスターとの戦いに躊躇しないように俺達の何かが変えられたのかもしれない。


「大丈夫だよ~灯ちゃん。灯ちゃんはとってもやさしいから~。それに亜里沙もがんばるから~」

亜里沙は両手を前でグッとして微笑みながら言う。

「亜里沙……ありがとう」

亜里沙は一ノ瀬の恐怖が何かは理解してないだろう。でも亜里沙は一ノ瀬の事なら知っている。一ノ瀬の優しさを知っている。

一ノ瀬は亜里沙の微笑みに自分が感じていた恐怖が消えたのか、すっきりした顔をしている。


「よし、伊勢! 亜里沙が頑張るって言ってるんだから私達も頑張るわよ」

「おう!」

よし、全員やる気はバッチリだ。


「依頼はゴブリン三体の魔石だ。一人一体でやるか、三人で戦うかだけど、俺は今回は後者でやるべきだと思うけどどうだ」

いきなり一人一体よりも先ずは戦いを経験するべきだ。


「わかったわ、あんたのお陰で動きやすいし何時でもいけるわ」

「うごきやす~い」

一ノ瀬と亜里沙が着ているのはTシャツに短パンと動きやすい服装になっている。

それに一ノ瀬は勇者ということで長剣を、亜里沙は魔法を使いやすくするという杖を持っている。

俺が着ているのは近くのコンビニや家に居るときなど万能なのではと思っているジャージで、手には一ノ瀬よりも小さめの剣を持っている。まぁ、一ノ瀬のは重たいからなんだけど。

うーん、それにしても学生服からジャージになると開放感がやっぱり違うな。


「うわ~~、る~くん。なんか緑色の子がこっちに向かって歩いてくるよ~」

亜里沙が前方を指差して何かが見えると教えてくる。

「えっ、そんなの見えるか」

亜里沙は緑色の子供が見えると言うけど俺が広大の草原の先を見ても、亜里沙が見えるという子供は影すら見えない。

亜里沙の見間違いだろうか、それとも……。


それから一分くらいたった頃だろうか、今度は一ノ瀬が亜里沙が指差した方を見て声を上げる。


「あっ、本当だ。亜里沙、よくあんなの見えたわね」

どうやら一ノ瀬も亜里沙と同じ者を見たようだ。だけど俺が見ても何にも見えない。


「おっ、あれの事か」

一ノ瀬が声を上げてからさらに時間がたつと、草むらの間からうっすらとだがやっと俺にも二人が見たものが見えてきた。


緑の肌に尖った耳で、手に何かを持っている小さな子供のような姿をしている。

あれが俺達の目標で異世界物にもほぼ必ず出てくるモンスター、ゴブリンだ。

しかし、目が2,0の俺よりも遥かに先に気づく、亜里沙と一ノ瀬は職業の影響か普通の人間レベルではなくなっている。

やっぱり大魔法使いに勇者はそれだけ強力なんだな。


「二人とも、あれが今回の目標であるゴブリンだ」

「あ、あれが」

「ドキドキするよ~」

俺が二人にモンスターの事を話すとその場にわずかな緊張がはしる。

一ノ瀬はモンスターを倒すのは平気そうだと言っていたが実質初の戦闘だ。緊張するのだろう。緊張しているのは何時ものほほんとしている亜里沙も同じだった。


もちろん俺だって緊張はしている。

二人と違い俺のステータスはどういうわけか見れなかった。だけど今の俺が強いとは思えない。

ヒモの力の発動の仕方も謎のままだし緊張してもしょうがないだろう。

だけど不思議と緊張しながらも恐怖心は微塵もない。


これは俺にも一ノ瀬と同じようになってしまったのか、それとも俺は元々戦闘する覚悟ができていたからか。

……どっちでもいいか、今は憧れのモンスターに集中しよう。


「いくぞ」

俺は何処か今の状況に酔っているのか妙に低くカッコいい声を顔をキメながらだす。


「分かったわ。行けばいいのね」

一ノ瀬が緊張でか一人真っ先にゴブリンの所に飛び出していった。


「あっ、バカッ、一人で突っ走るな」

俺は一人で前に出た一ノ瀬を追いかける。


「あっ、そうだ。亜里沙! 援護できそうだったら頼むぞ」

「うん! まかせて~」

亜里沙と一ノ瀬はまだ力を自由には使えない。一ノ瀬が森林で熊のモンスターを倒した時や、亜里沙が人里のありかを言い当てた時のように無意識でしかまだ使えないのだ。

つまり一ノ瀬は負けはしないと思うが苦戦はする可能性はある。



「ちっ、やっぱりか」

俺の前方では一ノ瀬が滅多打ちされていた。

どうやらゴブリンが持つ木の棒で殴られているようだ。

幸い一ノ瀬が怪我をしている様子はない。


……凄いな、勇者の一ノ瀬をゴブリンでは傷つける事さえできないのか。


俺は一ノ瀬に攻撃するのに集中して隙だらけのゴブリンの後ろに周り無防備な背中を斬る。

返り血が俺にかかった。血がかかったにも関わらず俺は冷静だった。

やはり異世界に来たときに俺達は何かが変わったのかもしれない。


「ぐぎゃゃゃゃゃ」

不意打ちでゴブリンは叫び声をあげながらあっさりと死んだ。

死んだゴブリン胸からは紫色の小石が落ちる。


「これで一匹か」

俺はゴブリンの胸から出た小石を拾う。

これは魔石といってモンスターの心臓ともいえる部位だ。これを壊されるとモンスターは確実に絶命するらしい。魔石はギルドで売ることが出来る。魔石には少量の魔力があるらしく、そこに魔力を少し注ぐと魔石は発光するらしく小さな魔石は主にライト等に使われて、大きく純度の高い魔力が入っている魔石は武器等に使われる。

さっきそれをギルドで聞いたときには熊の魔石を出していれば一ノ瀬に怒られずにすんだと後悔した。


ズドドドドドッッ、俺が魔石を手に取り見つめていると大量の足音のようなものが響いてきた。


「ね、ねぇ、伊勢……あれってもしかして」

「な、何だ」

大量の足音のようなものと一ノ瀬の震える声に俺は嫌な予感がしながらも顔を一ノ瀬が見ている方向に向ける。


「……嘘だろ」

俺達が呆然としたのは優に百は越えるゴブリンの大群がこちらに迫って来ているからだ。


な、なんで急に……くそ、最後の叫び声か!

どうやらゴブリンは死ぬ間際に仲間を呼んだようだった。


……どうする、あんな大群俺達では勝てない。一ノ瀬と亜里沙なら勝てると思うけど今の力を自由に出せない状況だと厳しい。


こんな時俺が主人公なら力に目覚める所だけど……まぁ、何も感じないな。

仕方ない。


「こうなったらしょうがない」

「どうするの伊勢」

こうして話している間もゴブリンの大群は迫ってきている。ならこの手しかないだろ。


「逃げるんだよ~」

俺は背を向けて逃げる準備をする。

「はぁーー、あんた、私達が町に逃げたらあのモンスターも付いてくるかもしれないでしょ」

「そんな事はわかっている。だから死んだゴブリンの血を浴びまくっている俺が囮になる」

ゴブリンの臭いを染み付かせた俺が囮になって違う方向に逃げれば何とかなるかもしれない。


「何よそれ」

「い、一ノ瀬?」

一ノ瀬が顔を俯かせて低い声をだす。

俺が囮になると聞いて怒ったのだろうか。


「ヒモのあんたが格好つけるんじゃないわよ!」

一ノ瀬が剣を両手で上に持ち上げる。

「そういうことは……勇者の私に任せなさい」

一ノ瀬がそう言った瞬間一ノ瀬の体が光を放ち始める。

……これはあの時の光。

「これならいける」

一ノ瀬は剣を強く握る。すると、光が剣へと流れ込んでいっている。

「ハァァ!!」

一ノ瀬は剣に纏わりつく光をゴブリンへ向かって放つように振りおろす。

シュッッ、そう聞こえたと思ったらゴブリンの大群に衝撃が襲い土煙をあげる。煙がはれた後にはゴブリンの前衛が魔石を残して消失していた。

何が起きたのかは俺には分からないが恐らくあの光で消し飛ばしたんだろう。

「ハァハァ、どう、半分減らしたわよ」

一ノ瀬は顔を汗まみれにしながら息を荒げる。今のは一発しか撃てないのかそれとも慣れてないからかは分からないが……すげぇ。だけど減ったのは前衛にいた半分だけだ。もう力尽きた一ノ瀬や無力の俺ではゴブリンを倒す事はできない。

他に倒せる奴といったら……

「いっくよ~」

「だよな」

そんなの大魔法使いの亜里沙しかいないだろう。


俺の頭上を炎の塊が通りすぎていく。

……ああ、本当にすげぇ、一ノ瀬と亜里沙は俺が憧れていた異世界の勇者と魔法使いになっている。

凄いけど悔しい。俺もこのレベルになれるんだろうか、いや、なるしかないだろ。

異世界に来れればよかったけど、こんなものを見せられたら憧れちまうよ。


俺の視線の先では一ノ瀬による地面の抉れと亜里沙による炎の焦げあとがあった。

ゴブリンの大群はたったの二人よって壊滅させられた。

大群がいた後には大量の魔石が落ちているのみだ。


ゴブリンの討伐数、俺、1体、一ノ瀬、55体、亜里沙75体。

初依頼ゴブリン三体の魔石3個の獲得……圧倒的の魔石を得て達成。








前書きにもありますが執筆する時間がなくて遅れました。

主人公が覚醒するのはまだまだ先です。

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