2話:異世界はキレイ
異世界転生(運命から逸脱した者)も同時に投稿しました。
そして、1話しか書いていないにも関わらず日間にてランクインしていました。
ありがとうございます!
それでは2話始まります。
……うっ、何だこれ。この鼻を強力につく臭いは………
「っっ……あれ?」
眠りから目覚めたらしい俺は体をそっと起き上がらせる。
すると吐き気を催す青臭い臭いが鼻腔をついてくる。
鼻を押さえながら周りを見ると広大な草原にいるようだった。
これは草の臭いだったのか。
…………って、草原?
「――ぁ」
寝おきの頭が完全に目覚めたと同時に目の前に広がる光景に俺は気づいた。今いる広大な草原に木々が生い茂る薄暗い森林へ続く道、森林の上からは大きな山々が見える。そして、ここからはよく見えないが山頂の上空を優雅に飛ぶ、飛行機くらいはあるんじゃないかと思わせるバカでかい生物。
その生物は地球ではあり得ない赤色の光を発している。
「ふ、ふふ、ふふふふふふ……来たっ、来たぞ! 俺はついに異世界に来たぞ!」
やばい、胸が興奮で、これまでにないくらいビートを刻んでるぜ。おっと興奮しすぎたな。今はその前に、
「亜里沙と一ノ瀬はどこだ」
一緒に来たであろう二人を探さないとな。
あんなカッコつけて一緒に扉を潜ったのに二人は別の場所にいます、じゃシャレになんねーぞ。
キョロキョロと探していると少し離れた所に倒れている二人を発見する。
倒れている二人のもとに慌てながら駆けていく。
「……よかった。無事だな」
二人に外傷は特にない。どうやら寝ているだけのようだ。
「にしても、本当に仲いいな」
無事を確認できて一安心した俺は二人を起こそうと声をかけることにした。
「お~い、亜里沙、一ノ瀬ー、起きろー」
しかし、二人に反応はなく目覚める素振りを見せない。
「お、おい! 一ノ瀬! 亜里沙! 起きろ」
まさか二人の身に何かがと俺は軽く叩いたり揺すったりして起こす。頼む起きてくれ!
必死になって二人を起こしているとピクッ、と一ノ瀬の瞼が反応を示す。
「一ノ瀬! 一ノ瀬!」
再度呼びかけると一ノ瀬は薄く目を開いていく。
「……う……ん、くさい」
「起きたか。たく、心配したぞ」
今度こそ無事を確認できて一安心していると一ノ瀬の様子が少しおかしかった。
何かぽーっとしてるような……あれ、何か悪寒がする。
「…………えっ? ……キャァァァ」
「ぐふぉっ!」
突然悲鳴を上げた一ノ瀬に膝でみぞおちを蹴られた。
まさかの強襲に俺は地面を転がりながら呻き声をあげる。
「ごほっ、ごほっ、うぉぇ、一ノ瀬、キサマよくもやってくれたな!」
今のはまじで吐きそうだったぞ。
「あああああ、あんたが私の頬に手を当てて微笑むのがいけないんでしょ! なに、私に変なことしてないでしょうね!」
一ノ瀬は自分の体をまさぐり異常がないかを確認している。
「ふぅー、どうやら平気なようね」
「あたりまえだーー! お前は俺が寝込みを襲うような奴だと思ってるのかよ!」
「…………思ってない」
……何だよその間は、何で体を抱いて少し下がるんだよ。
「俺はただお前が眠ってたから起こしただけだよ」
どうやら一ノ瀬は俺を疑っているようなので誤解をとかなければ。必死の説明によって俺の言葉を信じたのか一ノ瀬は下がっていた体を前に戻してくる。
「でも、あんた私の頬に手を当ててものすごく優しく微笑んでたし」
ああ、頬を軽く叩いていたからそう勘違いしたのか。
「それはな……」
お前らが無事で嬉しかったからだよ。と言葉を続けようとしたけど恥ずかしいな。
「それは……ほら、あの光景のせいだよ」
うん、これは嘘ではないしな。微笑んでた2割は本当にこれが理由だし。
「あの景色? 確かに緑と山でスゴいキレイな風景だけど、あんたそんなのに感動するような奴じゃないでしょ」
一ノ瀬は何言ってんのコイツ、という目で見てくる。
「お前失礼だな。俺にも風景を見て感動することくらいあるわ! 俺が言ったのは空の事だよ」
「空がどうしたの……よ」
俺が指差す方向に顔を向けた一ノ瀬は、ぽかーんと口を開けて固まる。
「なっ、すごいだろ! あんな赤く光ってる生物なんて見たことないだろ! しかもあんな巨体なのに空飛んでんだぞ! 間違いない! ここは異世界だ」
「……本当に来ちゃったんだ」
一ノ瀬は呆然としながらも俺に同意した。
「……やっぱ来て後悔してるか?」
俺が聞くと一ノ瀬はゆっくりとだが首を横に振った。
「ううん、さっきも言ったけど後悔はしていないわ。ただ、本当に異世界に来たと思うとどう反応すればいいのか分からないのよ」
確かに、俺は異世界に憧れてたから直ぐに喜べた。だけど普通の人が異世界に行ったら、どう反応すればいいのか分からないのかもしれない。
「笑えばいいと思うよ」
「笑う?」
「異世界異世界、言っている俺だけどな、ここがどんな場所かは分からない。もしかしたら危険な事もいっぱいあるかもしれない。だから今は、キレイな風景を見て笑っとくのもいいと思うぜ」
何を言っているんだろうな俺は、知らない所で女の子が笑えるわけねーのに。
「悪りぃ、やっぱ意味わかんねーよな」
「ううん、暗い気持ちになるより全然いいと思う。ありがとう伊勢」
一ノ瀬はお礼と同時に笑顔を俺に向けた。
「ああ、別に俺は大した事言ってねーし。そ、それより亜里沙を起こさねーとな」
少し恥ずかしくなった俺は、赤い顔を隠すために今だ眠っている亜里沙を起こしにかかる。
「にひひ、私も手伝うよ」
こいつ、俺が照れてるのを分かっているな。まぁ、笑ってくれたし照れ損にはならないか。
「亜里沙、そろそろ起きろー」
ゆさゆさ揺らすが反応はない。
「もっと強く揺すったら?」
一ノ瀬に言われて、ゆさゆさっ、ゆさゆさっ、勢いをつけて揺するがやはり反応はない。
「くそっ! おい、起きろ! 亜里沙!」
流石眠り姫と言われるだけはある。
ちらっと俺は最初に倒れていた所に転がっている鞄に視線を向ける。
どうする、バックには非常食が何日分かはある。
「なぁ、一ノ瀬、バックに食糧入っているんだけど、亜里沙起こすのに使うべきだと思うか」
「えっ、食べ物あるの! なら、今あげるのはもったいないんじゃ……そうだ! 食べ物で起こしてから鞄にしまえばいいじゃない」
一ノ瀬はパンと手を叩き名案だと言いたげな顔をする。
「フン、わかってないな一ノ瀬、断言しよう。もし鞄に食べ物をしまったら亜里沙がキレると」
俺はそこだけはキッパリと言う。
「な、何を、そ、そんなに怖いの」
俺の勢いにビビったのか一ノ瀬が不安げになっている。
「ふっ、あれは人間ではないよ」
そうあれは二年前……うっ、俺の脳が思い出すのを拒否している。
「驚かさないでよ! ねぇ! 起きるのよ亜里沙」
一ノ瀬は亜里沙を必死に起こそうと何度も揺する。
「う……ふみゅ、……あかりひゃん?」
「よかった。亜里沙、やっと起きた……」
体を起こした亜里沙に一ノ瀬がホッとため息を吐いている。
「へぇ、随分早く目覚めたな」
俺が毎朝起こすときは十分以上はかかるのに。
「……亜里沙?」
一ノ瀬が心配そうに亜里沙の名を呼ぶ。俺もすぐ気づいたが目覚めた亜里沙の様子が変だ。左右をキョロキョロと向いて目の前の一ノ瀬はともかくすぐ横にいる俺に気づいていない。
「どうかしたか?」
俺が声をかけるとピタッと亜里沙の焦点が俺にあたる。
「る~くん? あれぇ~、ねぇ天使さまは?」
亜里沙は首を何度も傾げながら俺に聞いてくる。
「天使? 夢でもみてたのか」
目覚めた亜里沙はぽーっとして寝ぼけている。だから俺は夢でもみたんだと思ったのだが「あっ」と、一ノ瀬まで天使という言葉に反応をしめした。
「なっ、何だよ、一ノ瀬も同じ夢でもみたのか?」
「分からない。でも確かに光輝く天使を見たような気がするのよ」
「おいおい、何か俺、嫌な予感がするんだけど」
二人同時に天使を見た。普段なら同時に夢をみるなんてスゴい偶然だなですむ。
だけど今は異世界だ。天使に何か意味があったとしたら、それを見てない俺はもしかしたらやばいんじゃないのか。
「ねえ、亜里沙も起きたから聞くけど私達これからどうするの?」
「えっ」
俺が思考に耽っていると一ノ瀬が声をかけてきた。
「えっと、そうだな。この世界に人が住む村や町があるならそこを目指すべきだと思うんだけど……そもそもここはどこなんだ?」
「なっ、 そんなの私が知っているわけないでしょう! ねぇ、本当にどうするの」
一ノ瀬が顔を真っ青にして不安がっている。
「う~ん。そうだな」
人が住む所を探す。
俺は異世界転移物でこれが実はすごい難しいんじゃないかと考えている。
ましてや今俺達がいるのは広大の草原で、進むには森林を通り抜けないといけない。
さっき見たデカい生物のように地球とは違うものがいる世界なんだ、もしかしたらモンスター等もいるのかもしれない。だとしたら人里に着くのは相当大変だろう。
「まぁ、それでこそ異世界なんだけどな」
正直俺は大変な事を含めて異世界に憧れを抱いている。しかし、亜里沙と一ノ瀬いるから安易な選択はできない。
「う~ん、どうするかなぁ?」
うーん、と俺が首をひねっているとクイッと、亜里沙が森林の方を指差す。
「ねぇ、るーくん。あそこ、あそこに人が住んでいるよ」
突然亜里沙が森林に指を向けてそう言い出した。
「えっ、亜里沙分かるの」
「うーん……うん多分だけど、何かそんな感じがするんだ。灯ちゃんは感じない?」
どうやら適当に言っているのではなく亜里沙は何かを感じ取ったらしい。
「全然感じないわ。そもそも亜里沙も私もこの場所は初めてでしょ」
「そうなんだけど不思議だね~」
「いや、不思議って……」
「……」
俺は亜里沙と一ノ瀬の会話を聞きながら考えていた。
二人が見たという天使、何故か人がいる場所を感じるという亜里沙。これは試してみるべきか。
「よし! どうせ何のあてもないんだ。ここは亜里沙の言うとおりに進んでみよう」
「お~!」
「まぁ、亜里沙と伊勢が言うなら私に異存はないわ」
「なら決まりだ。森林を抜けるぞ」
俺は二人を連れて森林へと歩いていく。
「あついな」
額を流れ落ちる汗を腕で拭う。
森林の中は日があまり射さらないから涼しいかと思ったけど……じめじめとした空気が肌にまとわりついて余計に暑く気持ち悪いな。
「本当に最悪よ。あー! お風呂に入りたい」
「もう少しの辛抱だよ~」
一ノ瀬と亜里沙も文句を言う事はあっても本気で嫌がっている感じがしない。暑いだけでなく整備されてなくでこぼこの地面で俺でも大変なのに大した奴等だ。
「ほらっ、ちゃんと水分はとれよ」
適度の水分補給は必須だ。俺は持っていたペットボトルを二人に差し出す。
「分かってるって。……んきゅ、ぷファー、いやー本当にあんたがいてよかったわよ」
一ノ瀬はペットボトルに入った水を一口飲んでから俺に向けてペットボトルを渡してくる。
「まあな、それで亜里沙どうだ? もう着きそうな感じはするか?」
「うん、もう少しだよ~」
ほっ、良かった。モンスター等に会わないで着けそうだ。
「良かった。どうやら安全にたどり着けそうね」
「ばっ、ばか! そんなことを言ったら」
フラグになるだろ。俺がそう言おうとした時だった。のっそりと十数メートル先の木と木の間から漆黒の熊が現れたのは。
「ほらっ! 一ノ瀬がフラグになるような事をいうから!」
「えっ、えっ、私のせいなの」
俺に怒鳴られた一ノ瀬はえっ、えっ、と狼狽えている。
「るーくん、灯ちゃん、喧嘩するんじゃなくて逃げた方がいいんじゃないかな~」
亜里沙の正論に従い俺達は急いで逃げたした。
ここで俺達はミスをおかした。熊というのは走って逃げたら追いかけてくるのだ。そして熊は足が速い。
「くそ! 走りずらいぞ」
周りは木だらけで地面には根が張り巡らされている。
元々の速度差もあり熊との距離はどんどん縮まっていく。
クソッ、どうする。森を抜けて人に助けを求めるにも後ろに逃げているからドンドン遠ざかっていってる。
「やばいやばいやばい。くそっ、焦ってとりぬくい」
バックにはこういう時に備えて準備していた物がはいっている。
しかし、焦りから自分が何を取っているのかが分からない。
「あっ」
ズタン、俺の前で走っていた亜里沙が、根に足を引っ掻けてしまい転んだ。
「亜里沙! がっ」
俺は急いで止まろうとする。しかし、勢いをつけた体はすぐには止まらず俺も根に足を引っかけて前のめりに転んでしまった。
しかも最悪の事に俺は木に顔面からぶつかってしまった。
鼻から血がドクドクと流れているのが分かる。だけどそんな事は気にしてられない。
勢いよく前のめりで倒れた俺は亜里沙よりも前にでている。
今、熊との距離が一番近いのは亜里沙だ。
熊はもうすでに亜里沙の直ぐ近くに迫っている。
「亜里沙にげろ」
転んだ時にケガでもしたのか足がものすごく痛い。
くそっ、動け、動けよ。このままじゃ亜里沙が……頼む。来るなら俺の所に来い。
そんな俺の願いむなしく熊は亜里沙の方に向かう。
熊が口からヨダレをだしながら腕を上げる。その腕は丸太のように太く手には鋭利な爪がある。あの腕で攻撃されたらまず助からない。
脂汗を流しながらも俺は亜里沙に近づこうとする。
そのスピードは遅く亜里沙のもとにつくよりも熊が腕を振りおろす方が早かった。
「亜里沙ーーー!!!」
俺は亜里沙を助けようと火事場の馬鹿力なのかででた力で地面をけり飛び込もうとする。
「させない」
俺地面を蹴ろうとしたその時、横を風が突き抜ける。
「……一ノ瀬」
それは信じられないそくどで駆ける一ノ瀬だった。
「亜里沙は絶対に殺させない!」
一ノ瀬は熊の巨体を殴りつける。
すると信じられないことに熊は体をのけぞらせて腕は亜里沙の前を空振りする。
『グォォォォォォォォォ』
熊は絶叫をあげてよろめいている―――効いているんだ。一ノ瀬のたったの一撃でまともにたっていられないほどに。
「ハァァァァ」
一ノ瀬はダメージをおっている熊に追撃を仕掛けようと拳を握る。
「……何だあれは」
俺は驚愕する。
にわかに信じがたいことに一ノ瀬の掌が真っ白の光を発している。
『グァォォォォォォォォォ――――』
発光する一ノ瀬の拳に殴られた熊は先程とは比べ物にならない苦痛の叫びをあげている。
ピキンッ――――――――
ガラスが割れたような甲高い音がすると同時に熊が仰向けに倒れる。
……これは息絶えたのか。
「大丈夫! 亜里沙」
倒れた熊には目もくれずに一ノ瀬は熊に襲われそうになった亜里沙にケガはないかと心配そうにしている。
「うん、灯ちゃんのおかげだよ~」
「よ、よかった~」
安心したためか一ノ瀬は泣いている。
「それにしても灯ちゃんすごいね~、どうやったの?」
「私もよくわかんないけど、なんか倒せるような気がしたの。そしたら急に力が湧いてきて」
一ノ瀬は自分でも先程の力に困惑しているようだった。
「……ははっ、やっぱりそうか。異世界物ではあたりまえだもんな」
俺の思った通りだった。先程、人の住む場所を感じたという亜里沙、急に力が湧いたという一ノ瀬。亜里沙の力はよく分からないけど、一ノ瀬の力は明らかに人間を越えていた。それに謎の光……二人は得たのだ。異世界物の定番。チートと呼ばれる強大の力を。
亜里沙が死にそうだった事も忘れて俺は歓喜していた。
この世界は本当にファンタジーの世界だと。もしかしたら自分にも力があるんじゃないかと。
そんなわくわくした想いを俺は感じていたんだ。。
この時の俺は一ノ瀬の力を目の当たりにした興奮で失念していたんだ……二人にある共通点が自分には無かったということに。
次回町につきます! ……多分!




