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運命のコはクマちゃんオパンティー♪

作者: 彩良 桜花

「は?」


 オレは思いっきししかめっ面をして、目の前の相手をガン見した。


「だから、クマちゃんオ・パ・ン・ツだって♪」

「いやいや、言い方変えてもパンツはパンツっすよね?」

「はぁ~」


 うわ~、その溜め息と表情、めちゃめちゃ蔑まれている気がするわ! いきなり「クマちゃんオパンティー♪」って言われれば、そりゃ硬直するっつーの! なに(しも)に入ってんだよ!


 さて何故、オレがこの問題発言をしたオヤジ……いや占い師の元へとやって来たかと言うと……。まずはオレの名は夏芽蓮(なつめれん)。十九歳の大学一年生だ。今年晴れて大学へと入学し、羽を伸ばしエンジョイライフを満喫していた………のだが!


 仲のいい連中が次から次へと彼女が出来始め、とうとう彼女なしがオレ一人となった。なんでオレよりイケてないヤツ等が易々と彼女をゲットしやがったんだ。焦ったオレはヤツ等に問い詰めてみたところ、口を揃えてこう答えた。


「マーベラス様々の助言だ」


 だと……。は? オレは答えた連中の頭がおかしい狂者なのかと耳を疑った。いかにもド怪しい名前の「マーベラス」様ってさ? その人物とは、どうやら「占い師」のようだった。性別や名前とかだけで、相手がどんな人物か洞察し、的確なアドバイスをするらしい。


 特に恋愛に関するアドバイスは抜群らしく、彼の言う通りに実行すると、必ず恋が成就すると大評判らしいのだ。オレは正直占いなんて全く信用しない(たち)なのだが、自分だけ彼女がいない焦りから、背水の陣如く、占い師の元へとやって来たのだ。


 で、目の前にいるのが例の「マーベラス」様だった。見てくれは小太りで白髪の顎髭ありのおっさんだ。しかも、この占いの場所も裏口コミでしか知り得ない、とある路地にあった。路地の端っこに簡素なテーブルを挟んで、対面式でオレは占い師にアドバイスをもらっていた。……が、下されたオレへの助言は、


「お主の運命の相手はクマちゃん柄のオパンティーを穿いたコだよ~ん♪」


 だったのだ。これが大評判の看板を背負う人間の発言なのだろうか。オレがポカンとしていたら、占い師は「オパンツ」だと言い直したが、んなの言い換えなくてもわかってら!


「オレに犯罪者になれと?」

「あ~ん、これだから若いもんは短絡的思考で困ったチャンねん」


 殴ってもいいですか? こっちは金払ってまで真面目に聞いているんだ! なのになんなんだ! さっきからこのおっさんは! 喋り方からしてナメてやがるし。若造だからってオレの事バカにしてんのか!? 普通パンツなんて見れねーだろ!


「じゃぁ、どうやって確かめれば「なんでお主は彼女が欲しいのだ?」」


 オレの質問はフルシカトして占い師は逆に問うてきた。


「それは仲のいい友達みんなが彼女出来ちゃって、オレ一人が独り身で」

「それだけ~?」


 なんだ? 急に占い師の表情が真顔になって、まるで見透かされるような鋭い視線を向けられていた。空気が張り詰めたように重くなって、オレは思わず吐露していた。


「……アイツより先に彼女作って見返したいんだよ」

「アイツって誰よん?」


 占い師の表情が和らぐ。


「それは……」


 アイツとはオレの幼馴染の春菜麗(はるなうらら)だ。隣の家に住むオレとタメの女のコ。生まれた時から一緒で小中高となにかと一緒に過ごしてきたが、オレはアイツが気に食わなかった。


 なにがって? アイツ、パーフェクトなんだ。容姿、頭脳、身体能力、芸術、いわば生まれもったハイスペックス者だ。本人はクールビューティで愛想はないが、デキのいいアイツのおかげで、オレは実親から「麗ちゃんは可愛い」「麗ちゃんが娘だったら良かったのに」だとか言われ、肩身の狭い思いをしてきた。


 いや、親だけじゃない。先公やクラスメイトからもチヤホヤされて、いつも持ち上げられていた。今も有名な国立T大学在中で、今年のミスキャンパスの有力候補だと、オレの大学まで流れてくるほどの有名人だ。アイツ、大してなにもしてないにも関わらず、天性と人徳だけで、いつも得に生きている。


 高校まではなにかと比べられ、ムカついたオレは一つでもアイツに負けずと勉強にスポーツ、芸術とあらゆる方面で努力をしてみたが……全敗だった。今となっては痛い……いや苦い思い出だ。


 しかし、唯一アイツにはまだ彼氏がいた事はなかった。告る相手は多々いる筈なのだが、アイツのスペックが高すぎるのか(それはそれでムカツクが)選ばれる者はおらず、未だ独り身だ。という事で、アイツよりも先に彼女を作り……そして大人になるのだ。


「でもそれって、だたのお主独りよがりの勝負じゃん?」

「あー、そうだよ、オレの自己満だよ」


 占い師から突っ込まれてオレは恥ずかしかったが、素直に受け入れた。


「お主、痛いヤツやのぅ~。相手は女のコだしねん」


 心底憐みの表情を向けられ、オレの苛立ちは頂点へと達しそうになった。が、


「あ~ん、暑いのぅ」

「そりゃ、真夏にその格好はね」


 透かさず、オレは冷めた目で占い師を見る。この季節にそんな分厚いキングローブを身に纏ってれりゃ、あっついわな!


「一枚脱いでもいいかのぅ?」

「いいですけど」


 オレは考えなしに答えた。が、


「どわ!」


 度胆を抜かされる思いに声を上げた。


「なんだ?」

「なんだじゃないっすよ!? なんで中に服着てないんですか!?」

「だって暑いんだもん」


 ローブを脱いだ占い師は裸体を晒していた。下は一応穿いているけど……。


「ローブまた羽織って下さい!」

「え~なんで? 今脱いでいいって~」

「オレ、変質者と一緒にいるって思われたくないですから!」


 オマエは裸の王様か!


「あ、時間過ぎたから追加料金もらうよん♪」

「腹いせかよ!?」


☆☆☆☆☆★★★★★


 ――やっと、メンバー揃ったな。


 これから合コンの開始だった。とあるオシャレ居酒屋で男女が集まった。男子は同じ学部の仲間で、女子は近隣の女子大のコ達だ。店は一応、女のコが好みそうなアンティークな装飾品が並ぶ可愛らしい造りだ。個室で落ち着いた雰囲気だし、店の選びは好感度が高いだろう。


 今日の男性陣のメンバーはイケメン、自称イケメン、フツメンのオレ、ブサメン、キモメンと、ある意味バランスのとれた(?)メンバーだ。女性陣はまぁまぁなコ達だな。


 男女それぞれが対面式に座っていた。少ししたら、席替えをするだろうから、気に入ったコがいたら、即隣をゲットしなきゃな。しかし、実は女性陣一人が急な用事で来れず、一人男があぶれるんだよなー。まぁ、とりあえずいっか。


 この合コンで、オレはロンリーボーイズから脱出するんだ(一見、ロンリーボーイズとは響きはいいが、直訳は“淋しい男子達”だ)。オレは先日の胡散臭いオヤジ……ではなく占い師マーベラスからのアドバイスを(一応)信じ、出会いの場へと足を踏み込んだ。


 とは言っても、なんせ目的は「クマちゃんオパンティー」を穿いたコだ。そもそもどうやってそれを確かめればいいのかと(占い師はケチッて教えてはくれなかった)頭を悩ませ……確かめられる状況まで至る努力が必要なんだという結論に辿り着いた。オレも相手のコ達も未成年で、お酒の力は借りれんしな。相当な努力が必要とみた。


 トークタイムが開始され、三十分ほどで席替えをし、女性陣、替わるがわると話をしてみるけど、これといってしっくりくるコがいないんだよな。みんなイイコだとは思うんだけど、恋愛視点で見るとどうもだった。


 他の連中(男性陣)もそんな感じだよな? 独占しそうなイケメンの秋月はな、確かにすこぶるイケメソだが、変に癖があるからな。自己啓発の主張が強くて変に自信満々のヤロー。理論的に物事を話すから、柔軟性に欠けてイマイチ君になるんだよな。今日のピンクシャツも痛くねぇ?


 だから今女性陣から冷めた目で見られているよ。残りのメンズもな、さほど興味をもたれてないもんな。んーオレもな、今日の会では「例の件」を確かめるのは無理そうだ。とはいえ、せっかくの会だから、それなりに楽しまないとな。


 そして始まって一時間ほど経った時だった。いきなり個室のドアが開けられ、フラッと腰まである綺麗なストレートの髪を靡かせる人物が現れた。


「!?」


 オレは相手を見るなり、目をみるみる大きく見開いた。周りの連中も目を丸くして、相手をガン見している。それもそうなる筈だ。いきなり息を呑むぐらいの「美少女」が現れたんだ。しかも、その人物とは!


「え? 春菜さん? なんで!?」

「うっわ、すっご可愛い~♪」


 女性陣は疑念の眼差しを、男性陣からは歓声が上がる。オレはというと……げぇぇええ!! な、なんで麗がここに!? クールな雰囲気を醸し出すアイツには不似合いな場じゃん!?


「今日、ここに来る筈だった京香に言われて」


 麗は「なんでここに?」という質問に淡々とした口調と表情をして答える。うん、愛想良くねーな。本人からしたら普通なんだろうけど、案の定、女性陣の表情が不穏なものに変わっている。


 しかし、野郎からは熱い眼差しを送られているな。そして麗は適当に端の席へと座った。幼馴染のオレという存在に気付いているのかどうかもわからないほど、スルーされたな。


 麗の飲み物をオーダーして、再びトークタイムがスタートした。完璧、麗独占の場となったが……。今日のアイツはキャミの上にクリーム色のカーデを羽織って、下はシフォンスカートと清楚な格好だった。化粧はしてないのに、顔のパーツが完璧でキラキラとしてやがる。


 が、オレには見慣れた美貌で今更トキメキなんつーもんはないけどね。アイツ、笑わないし泣かないし、女のコとしての可愛い要素が欠けているんだよ。それがクールビューティだというヤツもいるが、オレのタイプではない。それに昔からの因縁で好まんしな。


 トークが始まってからも、アイツと目を合わせる事はなかった。一向にこちらを気にする素振りがない。いや、気にされる方がなんだが……。その内、女子三人が席を外し(多分手洗い場)、自分と話しているコも離れたから、今の内にオレも手洗い場に行ってこうっと。


 ――数分後。


「春菜さんってT大のイケメン冬馬君と付き合ってるんでしょ? なんで来たのかな? あの人来てメンズから相手にされなくなったから、超つまんないんだけど」


 ――はっ!?


 用を済ませたオレは手洗い場から出ようとした時だった。聞き捨てならない声が耳に入り、オレは瞬時に足を止める。 どうやら女子の手洗い前で、さっき部屋を出た女子三人が固まり、会話をしている様子だった(ちなみに手洗い場は店の外のホールにある!)。


 ――今、麗に男をにおわせる話が聞こえたよな?


「冬馬君とは別れたんじゃない?」

「そっかー、そしたら今、冬馬君ってフリー? 狙おうっかな」

「もしかしてさ、付き合ってるけど、他の男の味見もしに来たって事もあり得るよね」

「それガチ最悪ぅー、ちょっと綺麗だからってイイ気なもんよね~」


 ――うわ、こっわ!


 女子の噂ってビビるな。麗も美人だからといって、なんでも得しているとは限らないってか。オレは初めて麗に同情した。しかし……アイツの男説はリアルなのかそうじゃないのか! あ~~~~! 気になる!


 なんか出づらいのもあって、オレは暫く手洗い場で待機していた。女子達がいなくなる頃合いをみて、


 ――そろそろいっか。


 と、出ようとした時だった。


「春菜さん、今彼氏いないってさ」

「え? T大の冬馬は~?」

「周りがはやし立てている噂にすぎないらしい」

「そうなのぉ~!? じゃぁ、ボク狙っちゃおうかな~♪」

「いや、オマエじゃ無理だ。今日オレが頂く。心も躯もね」

「え~~!!」


 手洗い場の前に今度はイケメン秋月とキモメンの二人が現れた。しかも今の会話って、またしても麗の事だよな? 秋月が相手じゃキモメンも太刀打ち出来ないな! って、そんな悠長な事を思っている場合ではない!


 どうやら秋月は今日、麗を持ち帰りしようと企んでいるようだった。ヤバイ! 偏屈な秋月だけど、無駄に容姿はイイもんな! もしかしたら麗の心も動かされてしまうかもしれない。オレは妙に焦燥感に煽られ、この後は心ここにあらずの状態だった。


☆☆☆☆☆★★★★★


 今回は二次会までは至らず(二次会はカラオケの予定だった)、オレ的にもその方が助かった。なんか会の途中から、女性陣の一人にやたら好かれていたようで。


「夏芽君ってフツメンだけど(そこ言わなくて良くね?)他のメンズと違って、春菜さん春菜さんじゃなかったし、良かったらライン交換してもいいよ?(なんで上から目線なんだよ?)」


 そのコ、似合わない化粧をしている上に無駄に濃いし、見た目も中身もからっきしタイプじゃなかったから、丁重にお断りをした。(めっちゃ機嫌を悪くさせたけど、知らん!)


 今、オレは麗を送る秋月の後を追っていた。このままヤツ等を野放しにしておけば、秋月が告って付き合いが成立してしまうかもしれない。さらにそのままイイ雰囲気になって、事を先越されたら! そしたらオレは勝負に負けてしまう(独りよがりだけど)。断固して避けさせなければならない!


 こう後ろを歩いているとアレだな……。ス〇ーカー? いや、麗の家の隣はオレ家だ。別に後をつけているわけではない。それにしても麗も秋月も背が高くてスタイルがいいな。後ろ姿の二人は絵になるカップルに見える……って、そうなっては困るのだ!


 ちゃっかりと秋月はオレと麗の家のある最寄り駅まで送りに来ていた。そこまで来なくても良くね? つぅか、マジ家まで送るつもりか。暫く二人は家の方向へと歩いていたが、細めの路地に入ると、一度立ち止まった。なにやら麗が片手を前に出して……? 結構です! って合図に見えるな。


 さすがに家まで来られるのって、なんか嫌だよな。あの感じだと、カップル成立の確率はなさそうだ。オレは安堵の溜め息を吐いた。が、秋月は麗に言い寄っているように見える。うわ、麗の手を引いて、半ば乱暴に連れて行こうとしてね!? 麗は無表情ではあったけど、引かれる手を強く払い退け、秋月に背を向けて歩き出した。


 しかし、秋月は諦めが悪いとみた。それでも麗の後を追って……いきなり後ろから抱きついた!? セクハラじゃね!? さすがにオレも穏やかには見れなくなり、麗の元へと足を走らせた。


「おいっ、やめろよ! 麗嫌がってんじゃん!」


 オレはやりとりしている秋月と麗の背後から声をかけ(なんか秋月、麗にチューしようとしてね!? ガチヤバキモッ!)、秋月の躯を麗から遠ざける。が、勢い余る秋月の顔がオレの顔へと近づき、なんと!


 ――ぶっチュゥゥ――――――!!


 熱い口づけをかまされた!!


「げぇぇぇええええ!!「ぎゃぁああ!!」」


 瞬時に互いに離れたオレと秋月は雄叫びを上げる。オ、オレの初めてがコイツに!!


「夏芽! オマエ後つけて来ていたのか! 春菜さん目当てか! しかも麗と呼んでキモイにもほどがあるぞ!!」


 なんだコイツ! オレのファーストキス奪っておいて! 返せよ! って、そうじゃない! イケメンも甚だしい言葉を吐くと、ブサメンに見えるな! こんな性格の悪いヤツだったのか!


「キモイのはオマエじゃん! いきなりコイツに抱きついてよ! しかも嫌がられてるし? それにオレはコイツの幼馴染で帰る方向が一緒なんだから、つけてたわけじゃねえよ!」

「そ、そうか、でもオレと春菜さんの取り込み中に勝手に入って来るな! 邪魔だ! 空気読め!」

「口の減らねーヤツだな。で麗オマエ、コイツ相手にすんの?」


 オレは顔だけ向け、後ろにいる麗へと促す。麗はプイッと視線を横へと背けた。秋月には全く眼中ないようだ。


「答え出てんじゃん。これ以上コイツに手を出すと、強制わいせつ罪で訴えるぞ」

「な、なに言ってんだよ! オレは彼女に誘われて、ここまでやって来たんだからな!」

「はぁ?」


 なんだ、その切り替えし? 虚言という名の捏造! コイツ狂者か!? オレはヒシヒシと秋月に痛い視線を向けると、居た堪れない気持ちになったのかヤツは、


「本当はこれからカレンちゃんと約束があったんだからな!」


 そう吐くとスマホを取り出し、いきなりコールを鳴らした!


 ――誰だよ、カレンって!


「あん、カレンつぁん? 今から帰るよ、もう嫌な事あったから慰めてん!」


 喋り方ガチキモイな! しかもコイツ同棲している女がいるのに、合コンに来たってのか!? そして電話を切り次第、秋月はオレ等に背を向け去ろうとしたが、最後……。


「ケッ、オマエみたいな愛想のない女、少し相手にしただけでイイ気になってんじゃねーよ!」


 ――は!?


 麗に対して吐きゼリフを飛ばしてきたもんだから、


「おい、ふざけ「そんなセリフ吐く時間あるなら、愛想のいいカレンお母さんに慰めてもらいに早く帰れば?」」

「「!?」」


 へ!? カレンって秋月の母ちゃん!? 麗は無表情で冷然とした口調で返した。なんで知っているんだ? と、秋月は間抜けにも口をポカンとしていたが、すぐにワナワナと震え上がって、プンスカとしながら、オレ等の前から去って行った。


 そして……。


「大丈夫か?」


 麗と二人になるとオレは(一応)彼女を気遣って聞く。が、プイッと顔を背けられる。か、可愛くない! 人に助けてもらっておいて「有難う」の言葉もないのかよ!


「オマエさ、なんで合コンに来たの? 男に困ってないじゃん?」

「……代わりに来たって言ったでしょ?」


 呆れたような蔑んだ表情と口調で言われ、ムカッってくる。


「つってもオマエの素行からして合わないじゃん?」

「…………………………」

「だんまりかよ? 助けたお礼の言葉もないし、ほんっと可愛げがねーよな、オマエ」

「誰が助けてなんて言ったのよ?」

「はぁ?」


 麗もオレの言葉に頭に来たのか、とんだ言葉を返してきやがった!


「相手は好意的に送ってくれようとしていたのに、勝手に邪魔してくれてさ」

「オッマ、あんな最低なヤツの肩をもつのかよ! 物好きなヤツだな。いいよな、オマエは! 生まれもった才能だけでなんでも手に入れられてさ!」


 吐き捨てるように叩きつけると、今までそっぽを向いていた麗が視線を合わせてきた。


 ――ドッキュゥゥ――――ン!!


 いきなりオレは胸を射られた! 麗が唇を噛みしめ、瞳を潤ませていたからだ。


 ――か、可愛いな。


 不覚にも麗相手にそう思ってしまった。普段、無表情でこういった感情を表に出さないから驚いた。そして、さらに意外な言葉が飛んでくる。


「一番欲しいモノを手にしてないわよ」

「は? いつも欲しいモンは手に入ってんだから、一つぐらい手に入らなくたって、どって事ねーだろ、他で補えよ!」


 麗って意外にも貪欲なのか?


「それじゃ意味ないわよ!」


 感情を剥き出しにした麗からボロボロと涙が溢れ流れた。


 ――ヤ、ヤバイゾ!


 変に心臓がドキドキとしてきた。こういうのキュン死にというのか萌え死にというのか。麗を無性に抱き寄せて抱擁したい衝動に駆られていた。それやったらさっきの秋月のセクハラと一緒になって出来ないが!


「わ、悪かったよ。オレ、オマエの事が羨ましかったんだよ。オマエ、生まれた時から万能で、なんでも上手くやってきていたし。それでなにか一つでもオマエより先に手に入れられるものがないかって思っててさ。今日の合コンはオマエより先に恋人作って大人になってやるっていう考えで参加したんだ」


 なにバカ正直に話しての、オレ?


 ……………………………。


 変に静寂とした空気が流れていた。泣き止んだ麗はきっとオレの事「痛いヤツ」だと思ってんだろうな。でも彼女から意外な言葉が出た。


「…………………………」


 ――え?


 麗の言葉を耳にし、意味を理解しようとした時、


 ――ブワッ!


「わぁ!「きゃあ!」」


 いきなし突風が舞い上がって、オレ等を襲う。一瞬目を閉じたが、ふと開くと……。


「!?」


 目の前に映った「モノ」にオレはガン見した! ソレは夜にも関わらず神々しい光を放ち、(まばゆ)かった。そう、それは……ワンポイントの「クマちゃんオパンティー」だったのだ! 麗が穿いているのはオレが探し求めていたオパンツではないかぁああああ!!


 ――もしかしてオレの運命のコって麗なのか?


 風が落ち着き、麗のスカートが元に戻ると視線が合わさり……? オレはさっきの麗の言葉を思い出す。


「だったら私の気持ちを受け取ってよ。そしたら欲しいモノ手に入るでしょ?」


 意味を理解したオレは一瞬で麗に陥落した。


☆☆☆☆☆★★★★★


 晴れて結ばれたオレと麗は毎日LOVE×2の生活を送っていた。あの合コンの夜、麗が一番欲しかったモノというのが「オレの気持ち」だった。オレはずっと麗に敵対心を向けていたけど、逆に麗はずっとオレを想ってくれていたようだ。


 偶然オレが合コンに行くという話を耳にした麗は事上手く参加したんだと。可愛いよな♪ オレに彼女が出来るんじゃないかと思って、全く興味のない合コンに参加してきてくれるとは。それだけ、オレってば愛されてんだな♪


 僻む連中からは凄まじい罵声と嫌がらせを受けているが、そんなんケサランパサランさ。そして今、オレは麗と部屋でマッタリと映画鑑賞をしていた。


 ふと考えてみたらだけど、麗の気持ちを受け取って晴れて「彼女」が出来たわけだけど、逆に麗も彼氏が出来ちゃったわけだから、おあいこなんだよな。結局アイツに勝つ事はないのか。って、どうでもいいっか!


 それと一つ気になっている事があるんだよな……。実は麗って毎度、色気のあるショーツ穿いてんだよな。じゃぁ、なんであの合コンの日に限って「アレ」だったんだ?


「なぁ、麗。オマエなんで合コンの時、クマのパンツなんて穿いてたんだ?」

「え?」


 オレの質問に麗は目を見張る。珍しく少しばかり動揺している?


「実はね……」


 …………………………。


「は!?」


 麗の答えにオレは素っ頓狂な言葉を発した。


 ――マーベラス様に言われたの。好きな彼をゲットするにはクマちゃんショーツを穿きなさいって。


 そう、麗の言う「マーベラス様」とは。オレもみてもらった占い師のオヤジだ。実は麗、オレの前に占い師へと相談しに行ったらしく、そこで言われた言葉が「クマちゃんショーツを穿きなさい」だった!


 そんなふざけた言葉を麗はちゃんと鵜呑みし、そしてクマちゃん柄パンツをなんと十着ほど買って毎日替わるがわるに穿いていたそうだ。


 ――あ~あのオヤジ、わかってってオレにクマのパンツと助言しやがったんだな。ガチヤラれた。まぁ、でもそのおかげでオレの長年の麗に対する敵対心も消え、身も心も結ばれたわけだし、今となっては感謝だよな。


「今度、マーベラス様にお礼を言いに行きたいな」

「そうだな」


 オレと麗は満面の笑顔を見せ合い約束をした。


『もし、恋にお悩みの方がいらっしゃるのなら、是非マーベラス様にみてもらってはいかがでしょうか❤』


ここまでお読み頂き、有難うございました!少しでも皆様の心に残る作品となれば幸いです!

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