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一歳差

作者: kunai

 たった一歳。

 だけどそれは絶対の差だった。



 俺、相楽泉さがらいずみが好きなのは一つ年上の女の子。

 藤堂明里とうどうあかり。それが彼女の名前だった。

 突然だが俺には五つ年上の姉がいる。

 小春という名のこの姉、いかにも女の子な名前とは裏腹に『弱い者は虐げられろ、それが嫌なら強くなれ』が座右の銘のとんでもない女で、俺はよくこの姉に泣かされていた。

「お母さんのお兄ちゃんがね、剣道の先生やってるの。そこに通ってみる?」

 小春にいつも泣かされる俺を哀れに思った母さんの勧めで、五歳の時に近所に住む伯父さんの元で剣道を習い始めた。

 そこで出会ったのが明里だった。

 暴君を体現したような小春を姉に持つ俺にとって、明里は初めて接するタイプの人間だった。

 怒鳴らない、殴らない、蹴らない……。

「いっくんは飲み込み早いねぇ。あたしすぐ抜かされちゃうなぁ」

 そして何より優しかった。剣道をやるよりもピアノを弾いてる方が似合うような。

 そんな優しい明里が大好きだった。

「あ、いっくんー!」

 ある日伯父さんの稽古場まで歩いているといきなり声をかけられた。

 俺をいっくんなんて呼ぶのは一人しかいない。

「……あーちゃん」

 初対面の時、明里から好きなように呼んでいいよ、と言われて以来、俺は明里をあーちゃんと呼んでいた。

「今から稽古? あたしも行くー」

 隣に並んだ明里の背は俺よりも高かった。その身長差と赤いランドセルが、絶対に縮まらない俺と明里の差だった。

「……いいなぁ、ランドセル」

「いっくんもすぐ買ってもらえるよ。そしたら一緒に学校通えるね」

 そして数ヵ月後、俺は明里や姉の小春が通う小学校に入学した。

 この時の身長、俺112センチ、明里123センチ。

 明里との身長差は未だに縮まらないが小学校という点では同じ場所に立てた。

 小学校に入学しても小春から泣かされることは多々あって、その度に明里に慰められていた。

 そしてこの辺りから、明里の剣道の才が開花していく。

 ある大会の小学生の部に参加した明里は自分よりも背の高い相手に果敢に挑み、見事三位をもぎ取った。

「いっくんやった! 勝てた!」

 面と手拭いを外し、満面の笑みを浮かべる明里が好きだった。

 だけど同時に明里に勝ちたいという対抗心もちらついていた。

 小学生の六年間で、俺もいくつかの大会に出場しそれなりの成績を納めてきたけど、いつまで経っても明里には追い付かない。

「あんたが明里ちゃんに勝つとか無理じゃない?」

「うるせぇ」

 小六ともなると言葉遣いもぞんざいになった。

「うっわ可愛くな! チビのくせに!」

「今から伸びるからいいんだよ!」

 この時の身長、俺147センチ、小春156センチ、明里152センチ。

 明里が中学校のセーラー服を着ているのを見た時、また一歳差を突き付けられた。

 俺が上達した分、明里も上達していく。勝負しても負かされるのはいつも俺。

 一年に何回負けたかすら分からない。そんなことを繰り返しているうちに明里は高校に入学して、俺は中三になった。

 そしてこの時期に起こった一大事件と言えば。

「いっくん聞いて! あたしね、彼氏が出来たんだー!」

 明里に彼氏が出来たことだった。

「……へえー」

 高校の剣道部の人だという。とにかく話していて楽しい人で、付き合おうという流れには自然となったらしい。

 何歳の人なの? とかどんな感じの人なの? とかは聞かなかった。明里の口から聞くのが嫌だった。

 中三ともなれば目の前に迫ってくるのは受験である。いつまでも剣道ばっかしてる訳にもいかなくて、明里と会える日も徐々に減っていった。

 尤も、明里だって部活だ補習だでそれなりに忙しい生活を送っていたけど。

「泉、あんた高校どこ行きたいの?」

 母親からのその問いで脳裏をよぎったのは明里の姿。

 ――――もう見たくない。

 だって俺がどんなに明里を好きでいてもそれが報われることなんて一生ない。

 会おうと思えば簡単に会える距離に明里はいる。けど明里が俺を想ってくれることは絶対なくて、俺はいつまでたっても『いっくん』から抜け出せないんだ。

 明里を見る度に痛い思いするくらいなら、いっそ――――。

「俺……――――」



 春。俺は自宅から市を二つ跨いだところにある志望校に何とか合格することが出来た。

「合格オメデトーっ!」

 合格発表のあったその日に、明里は俺にスーパーの袋を差し出しながらそう言った。

「ありがと……。けどさ、これ何」

「ん? 合格祝い」

 背を覆う黒髪をポニーテールにし、脚剥き出しのショートパンツにブーツという見るからに寒そうな恰好なのに、それを気にもしないような笑顔でニコニコ笑う明里から渡されたのはスーパーの袋。

 その中にぎっしり詰め込まれていたのはお菓子だった。

「感謝してよー。スーパーで千円以上かかってんだから」

「何で合格祝いが菓子の山?」

「だっていっくん昔から甘いもの大好きだったじゃんー」

 当たり前のように明里が呼ぶ、いっくんと言う俺の名前。

 もうそう呼ばれることには慣れてるけど、それでも痛いと思わずにはいられない。

「……それ昔のことじゃん」

 あんたの頭の中で俺は成長してない訳?

 いつまでも甘い菓子が好きな幼児のままな訳?

 気付いてる? 俺、もうあんたより身長高いんだよ。

 この時の身長、明里155センチ、俺168センチ。

 いつも見下ろされてた俺が、いつの間にか見下ろす側になってたことに気付いてた?

「今もう好きじゃないっけ?」

「好きだけどさ、俺今チー鱈はまってんだよね」

「……可愛げのないモンにはまったね……」

 まあこれもありがたく頂くけどね、と俺は袋の一番上にあったクッキーを取り出して齧った。

 甘い筈のクッキーがこんなに苦く感じたのは初めてだった。

  


 自宅から通うのは遠いから、という名目で学生寮に入った。けど本当の理由は明里に会わなくて済むという身勝手な理由から。

 明里は市内の高校で、余程のことがない限り出会わない。

 それでもスマホのある時代。明里から時々LINEが入ってくることはあった。

『寮馴れたー?? あ、もしかして彼女出来た(笑)?』

『それなりに。出来てねぇよ。そっちは彼氏とどーなの』

『あら残念(笑)。んー、それなりに毎日楽しいよー』

 ……LINEで良かった。面と向かって話してたら絶対顔に出てた。

 自分でも説明出来ないような複雑な表情が。

「振られたらいいのに」

 なんて何度思ったか分からない。

 けどその度に振られた後のことが脳裏をよぎる。

 振られてボロボロになった明里を、振った側の元彼氏はきっと見ない。

 だって絶対明里は泣かないから。

 俺知ってるよ。あんた昔からそうだった。

 剣道の大会であと一歩のところで負けた時も、『号泣必須』とCМで散々うたっていた感動映画を見ても、絶対に明里は泣かなかった。正確に言うと泣くのを我慢していた。バレバレの下手な演技で至って平然なふりをしていた。

 だからきっと振られたら、あんたは誰も知らないとこでこっそり泣いてこっそり傷つくんだろ?

 泣き腫らした目で下手くそな演技かまして誤魔化すんだろ?

 そんなの俺見たくないんだよ。

 だから振られたらいいのに、なんて思いはしても願いはしない。

 明里の恋愛を応援するいい子でいるから。

『振られんよーにガンバレ』

 俺がどんな思いで、表情かおでその一言を打ったのか、明里は絶対に知らないんだ。



 高校で剣道部に入っている間、明里と手合せしたのはたった一度だけだった。

 言い出したのは明里から。一回だけという条件付きで渋々了承したのは俺。

 俺が高二で明里が引退間近の高三。高校合格発表日以来初めて会った明里の髪はまた伸びていて、二年前にあった時より身長差が開いていた。

 この時の身長、明里157センチ、俺174センチ。

 どんだけ身長差が開いてもたった一つの歳の差を埋めることは不可能だ。もう分かり切ってるその事実に胃が痛くなる。

 渋々受けたけど、だからと言って負けること前提で手合せなんかしない。

 小学生の頃のようなボロ負けなんかしたくない。

 けど手加減されるのは死ぬほどムカつく。

「手加減とかしたら殴るからな」

「ひどっ!? 手加減とかしたらあたしが負けちゃうからねー。悪いけど本気でやらせてもらう」

 ――――結果は、俺の負け。

 竹刀を構えた瞬間から明里の目は変わった。それまでの優しさだけの目から優しさが消えて獲物を狩るような鋭さだけを宿す目に。

 身長差も体格差もあるのにそれでも負けた。何年も前に姉の小春に言われた台詞を思い出す。

「……俺が明里に勝つの、一生無理かもな」

 寝転がり天井を呆然と見つめながら独り言のように呟いた。

「やー、それはないない。今だって結構ギリだったし」

 いつもの優しさだけの目で明里が笑う。似たような言葉を何度も何度も、それこそ保育園に通ってる時から聞いてきた。それが本当なら俺はとっくに明里に勝ってる。

 何でもズケズケ言い放ち無自覚に相手の心を抉るのが小春なら、相手が傷つかない言葉を意識的に選びどこまでも優しくあろうとするのが明里だった。

「明里が引退したとしても勝てる気しねえ」

「まあそう易々と負けてあげないけど」

 ニッと笑った明里は転がった俺に向かって手を差し出した。

「けどいつでも手合せしたげるから」



 その後明里は引退し、俺も順調に三年生になった。

 三年の五月、いきなり小春から電話が来た。

「子ども生まれたから見にきなよ。ただし出産祝いに何か買ってきて」 

 姉が妊娠していたことも出産していたことも初耳だった俺は「へえ……、オメデトウ?」なんていう疑問符付きのありきたりな言葉しか出てこなかった。

 珍しく小春から指定(という名の命令)が下されなかったのでとりあえず学校の近くに建つケーキ屋で数個のケーキを購入。

 家に着くなり小春はおかえりもそこそこにケーキの箱を奪い取り、

「あー、やった! ザッハトルテがある! あんたにしたらいいチョイス!」

 といい笑顔で親指を立てた。俺が家にいる間は全然起きなかった甥っ子の寝顔だけ眺めつつ自分が買ったケーキを一つ食い、さて帰ろうかと玄関で靴を履く。

「あ、あんた明里ちゃんと会わなかった?」

「何で明里?」

 二つ目のケーキの載った皿を持ったまま玄関に見送りにきた小春はフォークで俺を指さす。

「明里ちゃんにも報告したから。あんたじゃあるまいし何か買ってきてとは言ってないけどお祝いに行きますね! って言ってたから」

 それを聞いてほんの少し血の気が下がった。もうここまで来たら本能が明里を避けてる気がする。

「うわ会いたくねぇ……」

 逃げるように玄関から出て、駅まで走ろうと足を踏み出した時――――。


「あ、いっくん?」


 一番聞きたくなかった声に捕まった。

 走り出そうとした体に急激なブレーキがかかってややつんのめる。

 ぎこちなく首を巡らせて――――息を呑んだ。

 誰だ? これ。

 いつもポニーテールにしていた黒い腰まであったストレートの髪は、肩下あたりで切られ緩いパーマのかかった栗色に。

 ショートパンツやジーンズなど動きやすさ重視の男っぽかった服は、淡いピンクのワンピースと白いレースのカーディガンに。

 声といっくんという呼び方がなければとても明里とは気付けない姿をした明里が、そこにいた。

「何、そのカッコ……」

 呆然とした俺の声に明里が苦笑に似た笑みを浮かべた。

「あー……、ほら、せっかくの女子大生になったんだしイメチェン?」

 その笑い方と微妙な間に、何があったのかだいたい分かった。

 分かったのと同時に――――、明里の手首を掴んで歩き出した。

「えっ!? いっくん待って! これ、小春さんの出産祝い……!」

「後でいーよ。それより先に行きたいとこある」

「え? 行きたいとこ……?」

 明里を引きずるようにして連れてきたのは昔通っていた伯父さんの道場だった。

「伯父さん、稽古始まるのまだだよね? ちょっと道場借りていい?」

「そりゃいいけどえらい唐突だなお前」

 寛容な伯父に感謝しながら明里を道場に連れていく。立てかけてあった貸し出し用の竹刀を二本取り、そのうちの一本を明里に渡した。

「手合せ、してよ」

「え!? だって防具とかないし……!」

「このままでいいよ」

「あたしストッキングだし……!」

「明里強いんだからそのくらいのハンデあってもいいでしょ」

 渋々といった表情で明里が構えの姿勢をとる。見るからにお嬢様風な女子大生が竹刀を構える姿がなんともミスマッチだった。

 特に開始の合図はなく自然と始まった。動きにくい服とストッキングのせいか明里の動きは微妙に鈍く、去年手合せした時のような鋭さを宿す目に切り替わってなかった。

 今の明里の目にあるのは俺の考えてることが分からないというような戸惑いと、そして――――。

 明里の表情を一瞥した後、俺はすっと竹刀を右にずらした。それを追うように明里の目線が右を向き、面を打突しようとする。――――笑えるほど、思惑通り。

 内心の意地の悪い笑みを隠して俺は体を左斜め後ろにさばきながら反らし打突をかわした。

 明里の驚いたような表情が目に飛び込む。俺がやろうとしてること、誰よりもあんたが一番分かってるよな。

 だって――――。

 驚きつつもかわされてから姿勢を立て直すまでは俊敏だった。栗色の髪とピンクのワンピースを大きく揺らめかせ振り返った明里の目の前に、振り上げた俺の竹刀。

 本来なら打突する一撃は、目を見開いた明里の文字通り目の前でピタリと止まった。

「……竹刀を開いて面を誘い、抜いた体をバネにして裏から面を打突。明里が一番得意だった技だよな」

 去年の手合せでもこの技で俺は負けたのだから。

「何で負けたの」

 質問というより詰問に近いような冷たい声音が口から零れ出た。

「何でって……。いっくんが強くなったからでしょ……?」

「違う」

「違わないよ。あーあ、とうとういっくんに負かされちゃったかー」

 へらりといつもの調子で笑う明里に俺の中で何かが切れた。

 自分が嘘も演技も下手なこといい加減気付け。

「ヘッタクソな笑い方。全然笑えてねぇじゃん」

 明里の嘘くさかった笑みが静かに消えていく。

「絶対に勝てる筈の俺に負けるほどの何があったの」

 明里の握っていた竹刀が手から滑り床に落ちた。

 竹刀が床に叩きつけられた音が道場内に響く中、明里がおもむろに口を開いた。

「……振られちゃったんだー……」

 普段からは想像も出来ないほど覇気のない声がやけに耳に残った。

「二股かけられてたの。それ卒業式の前の日にカミングアウトされてさ。バッカみたいでしょ? あたしの高校三年間はあの人に全部あげてたのに、それを最後の最後に全部捨てられた」

 一度は消えていた力ない笑みを再び浮かべ至って平気そうに打ち明けていく。  

 けどそれが泣きそうになる明里の癖だと知ってるのは多分俺だけ。

 ……これ、何かの罰かなぁー……。

 「振られたらいいのに」と何度思ったか分からない。思いはしても願いはしない、なんてさもいい子ぶって立派なこと考えたけど、そんなこと思った時点で俺は明里の恋を応援するいい子でなんかいられなかった。

 人の不幸なんか願ったから一番見たくないものを見るハメになった。

 これが罰じゃなかったら何なんだ。

「それカミングアウトされたら何かもうどうでもよくなっちゃって。今までの自分壊したくて仕方なかったんだよね。その結果がコレ」

 緩いパーマのかかった毛先を指で摘み苦笑する。

 誰も知らないとこでこっそり泣いてこっそり傷ついて。そしてこの痛々しいような笑い方に辿り着いたたのだろう。   

「……俺が明里より一つでも年上か、せめて同い年なら良かったのに」

「え?」

 今までの明里の面影もなくなった今の姿。綺麗に染まったミディアムヘアーの毛先を摘んで独り言のように呟いた。   

「俺さあ、ずっと明里が好きだったよ」

「え……?」

「一年先にランドセルやセーラー服着てオネーサンになってくの見るのがすげえ嫌だったんだよ、俺。身長差はとっくに逆転したけど年の差だけは絶対どーにもなんないから」

 たった一歳差。

 だけどそれは絶対の差だった。

「だからいつまでたっても弟扱いのいっくん呼びだし」

「だって、いっくんはいっくんじゃん……」

 ここまで来てまだその呼び方か。小さく嘆息してから俺の発した言葉は。

「あーちゃん」

「……っ!?」

 もう何年も前に呼ぶのをやめた明里の呼び方だった。

「実は泣き虫の演技下手っていうあーちゃんの正体、知ってるの多分俺だけだよ」

「わ、分かったからさ、その、呼び方やめて……。懐かしいけどめっちゃ恥ずかしい……」

 俺が目の前に立っているせいか、首を横に回し明里が顔を背けた。

「なら俺もいっくん呼びやめてよ。すげえ恥ずかしいんだよマジで」

 もういい加減名前で呼んでくれたっていいだろ。

「ってか俺の下の名前知ってる?」

 割と本気で心配しそう訊ねてみたら。

「知ってるよ! 泉でしょ!」

 顔を真っ赤にした叩き付けるような言い方がただ闇雲に可愛かった。

「次からは泉って呼んでな」

「ええぇぇ~……。慣れないな~……」

「たった平仮名三文字くらいすぐ慣れろ」

「癖だったんだもん! 今まで弟みたいな感覚で呼んでたし!」

 ああ、やっぱり弟だと思って呼んでたんだ。予想通りの答えに嬉しいやら悲しいやらごちゃ混ぜになった気持ちを抱えて勝手に使った竹刀を片づける。

「あ、でもね」

「?」

 元あった場所に竹刀を立てかけて振り向く。

「その……、好きって言ってくれてありがと。あたしの正体知ってるの俺だけっていっくん言ってくれたよね? 言われてみたらその通り。だって三年も付き合ってたのに、あの人の前で泣いたこと一回もないの、あたし」 

 いつの間にかいっくんに戻ってる。若干眉を寄せつつも黙って明里の話を聞いていた。

「あたしいっくんの前なら泣けるかな。嘘も演技も下手ってバレてるみたいだし」

 あの演技なら俺でなくても見抜けたと思うけど。

 明里が照れくさそうに、けど本当に嬉しそうな笑顔を浮かべた。

 そして――――。



「あたしも好きです。……い、泉」


 ぎこちなく呼ばれた自分の名前に、訳もなく体温が上昇した気がした。

 


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