真白色の言い訳
「だから、キライキライ」
愛してる。
-真白色の言い訳 『彼女理論』
「キライなんですけど」
「は?」
彼女が妙なことを言い出した。
近頃のマイブームらしい、どこかのオッサン職人(パティシエと言うんだと怒られた)がプロデュースしたというシュークリームを頬張りながら。
「キライ、なんだってば」
やはり、聞き間違いではないらしい。
確かに「キライだ」と口にした。
しかも2回目言いやがったな、コノヤロウ。
「何がですか。それはキミのスキなシュークリームでしょう」
「シュークリームはスキ。でも、キライ」
訳が解らない。一体何が「キライ」なんだ。
「何がキライなのか、言わなきゃ解んないんですけど」
「解んないとこがキライなの」
は?
それはつまり、
「キミがキライなのは…ボク?」
「ハイ、大正解」
何なんだ。ボク何かしましたっけ?
「何で?」
「何でもです。あえて言うならそういうところ」
ますます意味が解んねえ。この跳ねっ返り、何考えてんだ?
「何でか言ってくれなきゃ、どうしようもないんですけど」
「そうやって言うところも、キライ」
いい加減腹立ってきたな。
なんなんだ、この態度は。
「あのね、」
シュークリームの残りひと欠片、幸せそうに頬張って、唐突に彼女は言った。
「"キライ"ってねー"嫌がって避けること"なんだって」
は?
「だから、キライキライ。大嫌い。あたしは意地でも"嫌がって避け"ますよ」
「それは、どういう…」
意味も訳も理屈も、何も解んねえ。
何が言いたいんでしょう、この、ボクの彼女は。
「あたし、全力で嫌がってるんです。そして、避けてるんです」
「何を」
「貴方をこれ以上、好きになっちゃうこと」
キライキライ、
愛してる。
ただでさえ大好きなのに、これ以上好きになっちゃうのは、心臓が耐えられないわ。