2. 少年期 軍隊をつくる
家臣が20人も集まったので、早速、軍隊を作ることにした。
皆非力な子どもなので、剣術が上達して一人前になるまでは、数年はかかるだろう。その間、護衛が居ないのは、とてもリスクが高い。
そこで、一対一の個の力に頼るのではなく、集団での戦いにより、大人と互角の戦いができるように戦術を考案した。
まず、5人一組の四列の隊形を作る。間合いをとり、大人の間合いのアウトレンジから責めることができるように、長い槍を持たせる。ひたすら突くのみ。最初の間合いを突破されれば、二列目が応戦する。その次は三列目、四列目へと順次、対応する距離を分けて分担するのだ。両脇の四人づつは、側面にまわった敵に対応できるようにする役目もある。
みな集まって、ひたすら突いて突いて前へすすむのだけなのだが、10分もつづけるとへばって動けなくなる。それでも、叱咤激励して再び突いて突いて突きまくる。鬼軍曹の地獄の特訓のようだ。大人がやったら幼児虐待になりそうなものだが、同じ(外面だけは)子供の俺がやっているので、大人たちは、『なんか元気にやってるな』的な感じで、生暖かい目で見てくれている。
こいつらは、俺のところで飯もたらふく食えるので、将来体が大きくなることは確実だ。
そして、さらに、こいつらを侍大将にして、それぞれ雇い入れた者を配下に付けて訓練させれば、精強な軍隊ができあがるだろう。
だいたい、領主クラスの騎馬武者とその家臣たちと臨時徴発の農民兵の混成軍では、まとまって訓練もできないので練度も落ちる。俺の傭兵隊と戦えば、勝敗は目に見えている。統一された戦法で家臣クラスの剣士を圧倒すれば、良いのだから。
俺の傭兵隊の長所は、家臣を雇うのに土地はいらないということだ。土地の代わりに銭を与えて雇い入れれば、銭さえあれば、いくらでも家臣を増やせるのだ。
しかし、今はまだ皆は小姓としての扱いであるし、まだ子供なので、飯さえ食わせておけば良いが、大人になったら銭を支給することを考えている。でも、まだまだ、市場経済というものが未成熟なので、銭をもらっても使うことができない。土地ではなく、銭をもらって生きる家臣団を育てるには、銭が使える商店が傍らに居なくてはいけない。それには、商人を集めなくてはいけない。
商人を集めるには、市場を開けばよいのだ。つまり、フリーマーケットを開催して、参加料を払えば自由に商売をできるように便宜を図ればよいのだ。さらに、銭を持った客がいなくては市場はなりたたない。
売り手と買い手が均衡することが大切だ。なので、市場の開催と、銭を持った家臣たちの数がそろうタイミングに合わせる必要がある。売り手の育成と買い手の育成を同時に行っていく必要がある。
俺の軍隊の建設は、ようやく緒に就いたばかりなのである。