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1.幼年期 侍女を得る

プライベートな問題で、ながらくつづきを上げることができませんでした。今後もこんな感じですがお許しください。

津島を中心とした濃尾平野の物流を掌握するためには、川並衆と馬借衆を配下にする必要がある。そこで、まずは馬借衆の中でも筆頭の生駒家を尋ねることにした。

生駒家は、代々良馬を育てており、尾張における陸上の物流を一手に引き受けていた。この時の生駒家の主人は、生駒家宗という20代の穏やかな若者であった。


 「これは、これは、織田家の若様。このようなところにお運びいただき、恐悦至極にございます。」

口調は丁寧であるが、目は俺の方を向いていない。秀正の爺に向かって挨拶していやがる。まあ、見た目幼児なので仕方がないが、あまり、こういう意味のない挨拶の応酬は好きではないので、早速本題を切り出すことにした。


 「本日そのほうを尋ねたのは、他の議にあらず。津島を通る荷駄は、今後すべて織田家が買い取ることにした。ついては、津島からの荷運びを生駒家に頼みたい。尾張の領内から伊勢国や畿内へ行く荷も津島を通るので、行も帰りもそれなりの駄賃が取れるはずなので、生駒の家にとっても悪い話ではないであろう。」


幼児な外見の俺が、いきなり大人な発言をするのを聞いて固まるのは、いつものリアクションだ。馬借の親分といっても例外ではない。あんぐりと口を開けて呆けた顔をしているが、もう少ししっかりしてもらいたいものだ。少し待ったが返事が無いので・・・


 「わしの言うことが分からぬか。家宗殿。」

政秀は、少しは口添えをすれば良いものの、いつものことなどで、にやにやと笑っているだけだ。


 「いえ、良くわかりましてございます。若様があまりに大人のようなお話をされましたゆえ、すこしおどろきました。お許しください。もとより、生駒家にとっては、たいへんありがたきお申し出。喜んでお受けいたします。」

立ち直った家宗は、俺の申し出を快諾してくれた。駄賃の条件などは、後で政秀と決めるように申し付けた。委細まで口を挟むのは、さすがに3歳児にはやりすぎであろう。すでに十分にやりすぎであるが。


そこへ、白湯を持った女児がやってきた。10歳くらいの小学校の高学年くらいに見える子だ。黒黒とキューティクルが輝くような髪を首の後ろくらいの高さで紐でむすんでいる。その先は、馬の尻尾のように腰まで届く長さがある。前髪は、既に切りそろえられておらず、大人びた雰囲気の正統的な美少女といっても差し支えない。とても美しい所作で、俺の前に白湯を置く。その間、俺は一瞬たりとも目を離すことができずに、彼女をガン見してしまった。


 「娘の吉乃にごさいます。」

宗家が早速紹介してくれた。俺が幼児であったので、宗家の妻ではなく年の近い娘を差し向けてくれたのであろう。茶ではなく、白湯を出したのも同じ配慮からか。

しかし、それ以上に俺の心は、この吉乃に奪われてしまった。中身五十のおっさんなので、本当は円熟した大人の女が良いのだが、この子には、実年齢を超越した輝きと気品がある。伊達正宗の妻、愛姫を演じた後藤久美子のような美しさだ。


 「家宗殿にたのみごとがある。吉乃殿をわしの侍女としてくれまいか。わしは今那古屋の城主を務めておるが、わしの身の回りの面倒をみる母や乳母は、皆、父とともに古渡へ移ってしまったので、この秀正の爺しかおらぬで、とてもこまっておるのだ。もちろん俸禄はだす。ゆくゆくは、織田家が嫁入り先もみつけよう。」


 「それは、重ね重ねありがたきこと。謹んでお受けいたします。」

家宗は、瞬時に織田家とつながりを持つ利点を計算したようだ。すぐに快諾した。娘の吉乃は、動ずることもなく、よろしくお願いしますと挨拶をした。まったく腹の座った大人びた子だ。この子が、あんなことやこんなことをした時に、どんな表情をするのかと考えただけで興奮してしまう。いかん、今の俺は三歳児だ。まして、立派に嫁に出すと約束したのだ。そんなセクハラまがいのことを考えるのは不謹慎だな。

俺は、自分で自分を戒めたのだった。

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