ゆめにっき~ももこ~
小さくて、顎あたりで切りそろえられた髪。背には大きな剣を背負っている。彼女はももこと言う。そう聞いたような気もするし、聞いていない気もする。彼女はいつも長い吊り橋の真ん中に体育座りをしていた。吊り橋の下はすぐ湖になっている。弛んだ吊り橋の真ん中は水にかかっている。ももこの足首くらいの水かさはあった。
その吊り橋は二つの世界を分ける役割をしていた。ももこが向いているこちらは私たちが住んでいるこの世界。ももこが背を向けているあちら側は違う世界。まるでRPGのモンスターのような生き物がたくさんいた。
私はよくももこの所へ足を運んだ。二人で良く話したし、湖で泳いだりした。そして時々、あちら側の世界へ行き、奇妙な生き物を殺したりした。特に恐怖はなかった。それが良いこととさえ思えた。彼らは肉食だった。特に人肉を好む。私たちは吊り橋に近づくそれらを容赦なく切った。その後は湖で体にこびりついた血を落とした。
ある日、いつものように湖でももこと遊んでいた。そこに、私と同い年くらいの男の子がやって来た。どうやら私とその子は知り合いらしい。私はその子にももこを紹介しようとしたのだが、彼にはももこは見えないようだ。
そこに突如現れたのはあちら側の生き物だった。牙を向けた魚類。すーっと泳いでこちらに来たのである。男の子に被害があっても困ると思い、私とももこはそれを殺してしまおうと考えた。だが、小柄なその生物はなかなか逃げ足が早い。すばやくどこかへ消えてしまったので「逃げたのだな。」と思った。そろそろ家に帰ろうと、吊り橋に上がろうとした次の瞬間。私は後ろにぐいっと引っ張られた。どうやらさっきの生物に噛み付かれているらしい。「油断したな。」そう思った。さきに吊り橋に上がっていたももこは何かを叫びながら私を引き上げようと手を伸ばしたが、その手は何も掴めなかった。
どんどん水に引き込まれていき、最後に私は、食い散らされた。