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ep.4
「渚さんの嘘つき」
僕は、渚さんのお墓の前で言ってみた。返答なんてあるわけがないなんて、とうに分かっているのに。
渚さんは二年前の春に僕を置いていってしまった。今の僕は一人寂しく生きている。一人で気の向くままに歩き、気が向いたら書庫から本を一冊取り出して読み、空を眺め、お腹がすいたら備蓄倉庫の中の食料を一つ手に取るだけだ。生憎、出会う人も、話す人も居ない。これは渚さんのせいじゃない。全ては、こんな計画を企てた駿河首相のせいだった。ヤツが居なければ、こんなにも多くの死者は出なかったし、僕はお父さんとお母さんと幸せ…、かどうかは分からないけれど、三人で生きていけれていたはずだし、古城戸さん(父さん)も政府に殺されなくて済んだはずだった。ヤツさえ居なければ、こんな事にはならなかった。ヤツのせいでこんな事になってしまった。そんな事は、分かり切った事だった。そんな事は、考えなくても分かる事だった。でも、今となってはもう、どうしようもない事だった。




