ep.1
夢を、見ていた。
この夢は、きっと、僕が体験した記憶だ。なぜか、そう思えた。
でもそれがいつの記憶なのかは、分からない。
ぼんやりとした意識では、大まかなことしか思い出すことが出来なかった。
渚さんがそこにいて僕が何かを話していた。僕はどうせ、その日の出来事をいつもの調子で、まるでどうでもいいことみたいに語っていたんだと思う。いつも通り、渚さんは話を遮らなかった。まるで空気のように、ノートパソコンの画面を見たまま、相槌も打たず、視線も上げず、ずっと自分の作業をしているままで、僕の話を聞いているのかすらも分からない。
ただ、ただ、そこにいるだけだった。
僕が話し終わっても、渚さんからの反応はなかった。その日は、その態度に、どこか引っかかってしまったような気がする。
「……なんでそんな顔できるの? まるで他人事みたい」
僕は、少し笑って、冗談っぽく言ったつもりだった。でもきっと何かが違ったんだと、今になってそう思えた。
「私にとっては他人事だ」
そう言って、渚さんはノートパソコンを勢いよく閉じた。そのパソコンを閉じる音だけが、やけに大きく響く。渚さんは視線を合わせることもなく、そのままラボへ入っていった。ガチャリ、と気密扉が閉じる音がした。
渚さんは、僕のことを拒絶したんだ。
そう感じた瞬間に、映像が途切れてしまった。




