思い出
死亡、虐待描写があります。ハッピーエンドです。児童は、成年でゴリゴリマッチョなので、こんなことでは死なないです。苦手な人はブラウザバック。
時刻は夜20時を回っている。
Mの今日の稼ぎは、中間試験に遅刻しそうな高校生と観光客2組、ホストと姫、とまずまずといったところである。
(酔っ払いはその時の気分で過去や未来の自分のバカな行動を見せびらかそうとする。会社の上司など、特におじさんたちは部下を連れて過去の武勇伝を見せるケースをよくみる。逆に、女どもは精神が不安定な奴が多いが、今の自分に不安があるのか未来を見たがる。)
今日はもう閉めて帰るかと、いつもの停留所へ戻ると、サラリーマンが手をあげて待っている。
Mがこのタクシー業を始めてからというもの、多くの客を乗せてきたが、しばしば真夜中に近くなると普通のタクシー扱いをしてくる客がいる。
プライドを片付けられる気持ちになる。
今日は平日の木曜だ。大方このサラリーマンも課内の飲み会が終わって、タクシーを使おうというのだろうか。それはまっぴらごめんと思う。
普通のタクシーじゃないんだぞ。
それでも黙って扉を開くのが、サービス業の辛い所である。
(リーマン)「2***年の×月*日へ行かせてくれ。実はね、今日は息子の誕生日なんですよ。」
(M)(あー、おおかた社畜生活で廃れた心を社会人になった息子の小さいころをみて心洗われたい系リーマンだろう。)
Mはセンターコンソールにある転移パッド上のメモリに手を当て、反時計回りに10メモリ動かし、その隣にあるボードに数字を打ち込む。
(リーマン)「息子は、本当に可愛くていつもわたしが帰ってくると笑顔で迎えてくれていたんですよ。みます?」
/ケータイの写真を見せてきた。
運転中だけど、後部座席に乗っているリーマンが見せた画面を、ルームミラー越しにチラッと覗くことができた。
そこには小学3年生くらいだろうか?小さい男の子とそれを抱き上げる若々しいリーマンの写真だった。」
(M)「あー、はいはい、ははは、可愛らしいですね、小学生?くらいですか、一番可愛い頃ですよね。」
(リーマン)「ええ、そうなんです。
この子は本当によくできた子で成績も良くて塾で覚えたことをわたしの前で話してくれたり、サッカーで覚えた技を披露してくれたり、かわいいですよ。
週末は家族でバーベキューに行ったりしてたんですよ。」
(M)「へー、いーお父さんじゃないですか。さあ、つきましたよ。というかこんな夜更けの公園にこんなところでなにするんです?ご実家なら中途半端でないですか?こんな離れの駐留所でいいんですか?」
時刻は21時である,
転移場所の停留所は、元の時間の停留所とほぼ同じで設定されているので、実質20年前の様子がわかるということになる。思えば、ここ数年で色々変わったものだ。
今は、区画整理が進み人が増えた住宅街の中の公園であるが、ここは20年前はだだっ広い都営公園だったのか。こんなところにあんまり人は来ないだろう。
流石に、何も手もないところに客は下ろせないので、少し付近の地図を調べると、少し歩くと国道があり、民家もちらほらあるし、3年前に日本から撤退した大手外資24時間営業のバーガー店もある。それなら降ろしても安心だろう。おそらく10分くらい歩いたところ集落群があるから、この客はここに用があるのだろう。
(リーマン)「いや、いいんですよここで。あと、運転手さん、用事はすぐ終わるんで、帰りもこのタクシーで乗って帰りますわ。30分くらいしたらここにくるんで、その間、どっか適当な所で休んでてください!その間の分はこちら持ちで大丈夫なので!」
(M)「え?そうですか、じゃあお言葉に甘えて。くれぐれも過去を改竄しようとはしないでくださいね!」
(まあ、時間移動以外のタクシー利用には、追加料金かかるし、近ければ歩く人なんてザラにいる。まあ、こんなとこで改竄できるような大きな出来事も人も研修で聞いたことがないので大丈夫だろう。)
Mは、停留所のある公園をでて、24時間営業のバーガー屋でヒマを潰す。50分立っても中々戻ってこない。
(M)(ひまだ。なにやってるんだ、ちらっと様子を見てみようか。)
イタズラされないように保護シールを車体にかけるため、公園まで戻って、そこから徒歩で民家の方まで向かう。
公園の出口に差し掛かったあたり、30mくらい先で、塾帰りらしい青いランドセルを背負った男の子が反対方向へ歩いていた。
すると突然、男の子が4人くらいに囲まれ、Mの体が動く前に国道に止まっていた黒ハイエースへ運び込んだ。あたりはもう22時である。国道といえども往来する車は少ない。
刹那、リーマンが登場した。
タクシーに乗っていた時に持っていたくたびれた黒い肩がけバッグの中からハンドガンを取り出し、その窶れた面立ちからは想像もできないほど軽やかな、確かな身のこなしで、数発拉致犯の幾人かに打ち込みつつ、ハイエースのタイヤに打ち込んだ。
しかし、拉致犯4人は銃弾が当たったのに振り返りもせず、パンクした様子のないハイエースは乗り込み、過ぎ去ってしまった。
どんどん見えなくなっていくハイエースに、がっかりと膝から落ちたリーマンは咆哮した。あまりの急展開に驚きを隠せなかった、しかし、リーマンはぐるりと私の方向を向き、立ち上がってこちらへ走り出した。
狼狽する彼の叫びをMは何とか宥めつつ、できることと言ったら、今一度、停留所にあるタクシーへ戻ることだった。
Mは、彼をベンチに座らせ、さっきそこでテイクアウトしてきた、カフェモカをリーマンに渡し、落ち着かせた。
過呼吸が治りポツポツと彼は話し始めた。
(リーマン)
「あれはわたしの息子なんです。息子は20年前に誘拐されてその後散々に乱暴された後殺され、バラバラにされて海に投げ込まれたそうなんです。私の元には遺品のランドセルのみ。警察には不幸な事件として、犯人の行方は掴めず。わたしは苦しみました。家に帰るたび仏壇からみえる息子の笑顔がわたしを責めるようで。
当時のわたしは海外出張で、その事件を知らず、日本にいたら、かならず助け出せたのに。
20年間、自分に言い聞かせましたよ。もうこれは仕方のないことで運が悪かったんだよって。ただ、ある日ねプツッと仕事をしている上で、思ったんですよ。
何のために働いてるんだろうって。あの子がいない世界で、あの子を殺した世界で、この世界のために、働く意味などあるんだろうかって。
疲れちゃってね。もう辞めるんだったら、いっそのこと、過去でも改変して、捕まろうじゃないかってね。それで息子が助かるんなら、息子の生きた姿が見れるんなら。本望ですよ。」
そんな自信どこから、、。。
Mは会話の中で気になった点について聞いた。
現代ではハンドガンを持てるのはこのご時世、限られている。
「お客さん、普通の会社勤めでしたよね。身分証も警察ではなさそうですし。どうやって武器を手に入れられたんですか?」
(リーマン)
「もう、あなたには言ってしまいましょう、私は要人専門の雇われ殺し屋なんでですよ。
表向きはこうやってリーマンしてますけどね。あの時は海外の役人を始末するために、一ヶ月ほど別人として過ごしてまして、日本と一切連絡を経っていたんです。そうでなければ、、、、くそっ、、、。
そのあと、妻は事件のショックで手紙を残して実家へ戻ってしまいました、、、。はは、、まあ、それは甲斐性なしの私が悪いんでまあおいといて。
事件の後、犯人の足取りを掴もうとはしたものの時間が経っていてこれと言った証拠もなく。今ならまだ間に合う。息子を救い出したいんだ。って、ここにきたんですが、まさか犯人も防弾装備だったとは、、。
だけど、まだ間に合うはずなんです。打った弾丸の一つにGPSを、いれましてね。まあ、私は几帳面なのでリスクヘッジです。20年前産のGPSなので使えるはずです。あとは足があれば。運転手さん、厚かましいのですが、乗りかかった船です、どうか、どうか、追跡していただかないでしょうか!」
M「未来が変わってしまうんですよ?それでもいいんですか?あなたならわかるでしょう、人を1人殺めただけでも、周囲の環境がどれだけ変わるか。
そして大変残念なことなのですが、我々は法律で過去改変ができないんです。過去を変えたらすぐに時間警察が来て元通りにしてしまうんです。罪歴のみがのこるんですよ。」
リーマン
「わかっているさ、それでも、それでも、、!。。。」
「、、、わかったよ。じゃあせめて犯人の面だけでも拝ませてくれ。」
M「なにをするつもりですか。」
リーマン「そいつの顔を覚えて、未来までまつんだよ、息子をこんな目に合わせた奴らの死をな。」
M...(まあ、それならいっか、、、。
殺人の共犯者にはならないよな、、。これ以上妥協させるとこちらの身があぶないし、、。)
今はもう使われてないものとなった、GPSを辿って、古びた廃工場へ着いた。
(リーマン) 「運転手さん、あなたもついてくるんですか。バレないようにしてくださいね。、、いた、、犯人はだれだ?その面を拝んでやる」
廃工場の中は、セキュリティが割と甘く、破れたガラス窓から2人は入ることができた。打ち捨てられたハイエースは後方扉が開けっ放しで、まだついてからそう時間が経っていないことがわかる。
Mはさすがにリーマンが何をするかわからないので監査役として慣れない潜入をしたが、リーマンの動きには音が一切ないのに関わらず、素人のMが必死についてくるため、リーマンはフォローに手間取っていた。
あの4人組と、真ん中に人のような大きさに膨らんだ麻袋が投げ捨てられてあり、袋が上下しているのでまだ生きているのだけはわかる。
4人組は、かぶっていた黒面をはずした。Mはリーマンが少し戸惑った表情をしたのを後ろから見た。
組織の人間だった。
つい先日まで、一緒に働き、息子がいなくなった時も、彼を慰めていた同僚だ。息子さんの20回忌だからとこの1ヶ月は暗殺業務は入れなかった上司だ。来週のみに行こうとも言ってくれた先輩だ。自分が初めて持った直属の部下だ。
リーマンは動けなかった。怒りで瞳孔が開いている。組織の人間は麻袋を開こうとした。
ガッシャーーーーーン!!!!!!
天井からガラスが割れ鉄が降り落ちるような、爆発音が降り注ぐ。突然視界が眩い光に覆われる。
10秒経ち、やっと目が慣れて、麻袋を見たら、ヘルメットを被ったパンツスーツの人間が倒れた4人組の間に立っていた。
パンツスーツは、身をかがめ、4人組の意識がないことを確認すると、ヘルメットからどこかへ連絡しているようだ。
静まり返った工場内から、辛うじて、会話が聞こえる。
???「....こちらマザー、任務を遂行した、どうぞ。...」
???「こちらフレンド、隠蔽工作も終了した。どうぞ。」
???「ありがとう、フレンド、あの人にはもう会えないけど、これもあの人とあの人との大切な子供を守るためよ。許してもらえるかしら。」
女の人の声だった。パンツスーツは、香川で麻袋を開き、中から出てきた男の子を抱きしめる。
「俊太!あぁ俊太!ケガは?乱暴されてない?ごめんね、色々あってお父さんとはもう会えなくなっちゃうけど、新しい土地でやってくのよ。」
リーマン)「なんで、、、あいつが、ここに、、、。」
よろよろとリーマンは、泣きじゃくる方へ向かう。
女の人は、足音が近づいてくる気配を察知し、慈愛に満ちた雰囲気から、気配を変え、銃口を向ける。
リーマン「わたしだ、拓矢だ。」
⁇?「そんなはずない、あのひとは出張中だし、こんな老いてもない、、貴方、かなりの手練れね。物腰から伺えるわ。あの人のことをよく調べているんだろうけどそんな手には引っかからないわよ」
パンツスーツは、近くにあった四人組の1人(先輩)を持ち上げて盾にしながら、男の子を自分の背後に誘導した。
M「あ、あの!お客さんたち!
すみません、私たち、未来から来まして!信じてもらいないかもしれないんですけど。この人未来のあなたの夫なんですよ。誘拐されたと知ったあと、誘拐犯を未来で殺すために来たんですよー!」
まだ信用していない様子である。
⁇?「...フレンド、まだ奴らの仲間が残っていたみたい。もうちょだとかかるわよ。」
「疑わしきは罰するのが我らの世界の情動!」
弾丸を発射した。
軌道が読めていたのか、リーマンは、身をかがめて弾丸を避けると同時に、大きく一歩踏み出して間合いをつめた。パンツスーツが次の弾丸を打つ前に、手首を掴み、上に捻じ曲げ、右に引き込みつつ、そのままパンツスーツを地面に倒れ込ませ、足で組み伏せる。
地面に顔がめり込みつつもパンツスーツはリーマンを睨みつけ、
「くそっ!!よほど腕が立つようね!わたしの息子は渡さないわ!」
リーマンは、持っていた手をひっぱり、彼女を起き上がらせると今度は、彼女の腰を抱きしめ、自らの懐へと引き込む。抵抗しようとする女であったが、その力の強さには抗えなかった。リーマンは静かに彼女を見つめた。見つめ続けた。だんだんと近づく唇、まつ毛同士が触れ合いそうなほど、見つめあう。抵抗はどんどん弱まっていった、、。
あなた、、、。
おまえ、、、。
Mはこの後起こる展開について、夫婦の間のことなので無粋なことはしないとしたが、俊太くんには健全な成長のために目と耳を隠してあげた。
.....
リーマン)
「未来は改変できないから、20年後この場所で待ってる。それまで、この子をよろしく頼むよ。」
Mは廃工場の横に止めてあるタクシーにリーマンを乗せて、現代に戻った。
そう、歴史は何も。変わっていないのだ。
現代に戻ってきた。この場所は、スーパーの駐車場になっていた。すると、目の前に綺麗なおばさんと青年が駆け寄ってきた。
俊太「これが親父、、お父さんなの?」
妻「あなた、、ずっと会いたかった。もう2度と会えないと思った。
あなたがずっと私たちのことを思ってこの20年生きていたことは伝わっているわ。どんなに私たちの消息を伝えようとおもったことか、、
でも、それを言ってしまうと未来を変えてしまったことになる。ごめんなさい、そして、20年も私たちを思ってくれてありがとう。」
リーマン「こちらこそだよ、京子、俊太、いや今は2人とも別の名前だったか。
まあいい、これから語る時間は沢山ある。家で語り明かそうじゃないか。」
京子「ええ、失った20年をこれから私達3人で取り戻してきましょう。」
俊太「運転手さん、私たちの家まで送り届けて頂けませんか?」
M「いいですよ。深夜料金で高くつきますけどね。」
Mはこの時ばかりはタクシー運転手の役割を務めた。
家族は助手席にはのらず、大きくなった息子も含めて後部座席でぎゅうぎゅうになりながらも長い長い帰路に揺られていた。
今度は南アジアに行きます。




