第5話 死を超えた友
こんにちは。まっちゃです。今回は少しだけいつもより長くなっています。そして相変わらずの低クオリティーです。ご了承ください。
ルシウスが熾天使へと進化を遂げた、その晩。彼はルシウスが宿泊しているホテルへとやってきていた。彼の名はルプス。かつてをルシウスと共に過ごしていた、大親友であり、戦友でもあった。彼の戦闘力はずば抜けたものであったが、命を落としてからは、だれからも認知されないアンデッドとして活動していた。しかし、ルプスはルシウスがアンデッドを認識することができることを知っていた。彼なら自分を信じてくれる。そんな一縷の望みにかけて、ルプスは彼のもとを訪れようとしていたのだった。
時刻は午後10:37。あいつならまだ起きているだろう。まだ完全にアンデッド化しきっていない今なら、あいつとも分かり合えるはずだ。
コンコンコンコン.. コンコンコンコン..
「こんな時間にだれだよ..ここホテルだぞ..?」
眠い目をこすり、僕は突然の来訪者に対面した。――――――まさか彼だとは思いもしなかった。
「―――――ってなかんじでさ、なんか死んだけど生きてるのさ。」
「死んだけど生きてる、か..いや、まあ事実なんだけどさ。」
「けどさ、不思議なことに、俺みたいな境遇のアンデッドが存在していないんだよね。」
「..?」
「つまり、元人間のアンデッドは俺だけってことだ。」
「あぁ、なるほど。確かに不思議な話だな。実に奇妙だ。けど、またお前とこうやって話せる日が来るとはな。」
「そうだな。幸せだ。だが、大丈夫なのか?お前、監視されているんだろ?」
「ここ数日は大丈夫かな。動物たちの視線を感じることが少なくなったし。」
「ならいいんだが。」
「?」
「こっちの話だ。深く気にしないでくれ。」
「親友の話なら気になるだろ?」
「確かにそうだな。」
そういうと、あいつは部屋のカーテンを全て閉め、ドアにはかぎをかけ、部屋の電気を消した。
「なんでそこまでするんだ?」
「この話まで聞かれていたら俺たちはますます劣勢になるからな。そこにいたカラスに、俺たちはもう寝てるぜって思わせるために部屋を暗くした。」
「なるほど。」
そして彼は語り始めた。
―――自分が殺された時のこと。必死に助けを求めたが誰も来なかったこと。『まだ生きたい』と強く願ったらアンデッドになっていたこと。そして、僕を監視していた組織のこと―――。
「もしかしたら、身近に現実を書き換えることのできる能力者がいるのかもな。」
なんて彼は笑って見せたが、これはただ単に彼の運が良かっただけだろう。
「もしかしたら、身近に現実を書き換えることのできる能力者がいるのかもな。」
俺はそう言い笑って見せた。が、俺は知っていた。お前、現実を塗り替えただろ。おかげでここにいるわけだが、自分自身気づいてないのか?ただこんな能力のことをこんなところで話すわけにもいかない。伝えるならもっといい環境で伝えなければならないだろう。..そんなことはさておき、
「なぁ、お前、ブラックウェルとかいう研究者と手を組んだりしてないだろうな。」
「なぜだ?」
「あいつは――いや、何でもない。今度詳しく話す。」
「..? わかった..。」
しかし、困ったものだ。自分の能力に気づいていないとは。どうしたものか。
―――午後10:58。閉まりゆくカーテンを眺める鴉は、深紅に染まったオーブを咥えていた。
―――午後11:21。2人の会話が止まり、あたりに静けさが戻る。鴉は2人が眠る部屋に特攻した。窓ガラスを破り、部屋の中心にオーブを浮かばせる。毛づくろいをし、気高く鳴いた鴉は満月へと飛び去って行った。
「ん..ぅん..ぁれ?」
目が覚めると、窓が割れ、ガラスが飛び散り、紅いオーブが浮かんでいた。
「おい、ルプス。起きろ!大変だ!!オーブがある!!」
「ん..ぅるさいなぁ..ォーブとか別に.. オーブ!?」
そう言うと彼は飛び起きた。
「紅のオーブ、か..」
「何か知ってるのか?」
「確証はないが、昔、こんな逸話があったんだ。簡単に言えば、血に染まりし魔球は世を滅し、自然の力をまとった魔球は持ち主を災いから守り抜き、雷に打たれし魔球は自身の破滅をもたらすだろう。っていうものさ。もしかしたら、この逸話の『血に染まりし魔球』って、これのことじゃないかなって思っただけさ。」
「なるほどな..オーブはその3つしかないのか?」
「いや、今確認されているものは8種類。1種類のオーブは同時に1つまでしか存在できないから、世界に8個だけだ。多分、逸話ができた時代にはその3種しか見つからなかったんだろう。」
ますます謎は深まる。なぜ、ここに世界を滅ぼすほどのパワーを持ったオーブがあるのか。なぜうちにはオーブが存在していたのか。そして、なぜ消えたのか。考えれば考えるだけ――――――――――《能力の使用を確認。直ちに実行します。》――――――――――ますます謎は深まる。なぜ、ここに世界を混沌へと堕とす力を持ったオーブがあるのか。この世界に13個存在するオーブは一体何が生み出したものなのか。ルプスはなぜオーブについてそんなに詳しいのか。アンデッドはオーブを集めているというのは聞いたことがあるが、ルプスはアンデッドなどではない。ただの人間だ。
「それにしても最近はアンデッドによる被害も少なくなったなぁ」
とルプスは退屈そうに溜息を吐く。
「いいことじゃないか。毎日対アンデッド部隊が頑張ってくれてるからだろ?あんまりそういうことを言うと怒られるぞ。」
「そうなんだけどさ。」
..
「このオーブ、取り込んでみようかな。」
唐突にルプスが言い出す。
「世界を混沌へ誘うんだろ?なら――」――――――――――《能力の使用を確認。直ちに実行します。》――――――――――
「このオーブ、取り込んでみようかな。」
唐突にルプスが言い出す。
「水の力が宿るんだろ?アンデッドなんか瞬殺できる。」
「確かにな。けど、対アンデッド兵器が続々と作られているのに、いまさらそんなオーブでいいのか?」
「いいんだよ。オーブを取り込んだ人間は神同等の力を得る。常識だろ?」
僕は何も言わず、親友が神友へ変貌するのをただ見つめていた。
主人公ルシウスの能力をちょこっと出してみました。発動条件やらはまた今後出すと思います。お楽しみに。そういえば、タイトルの文字数をそろえているのに気が付きました?気づかなかった方はぜひ、確認してみてください。ではまた、第6話で。




