第3話 電子の追跡者
こんにちは。まっちゃです。相変わらずの出来ですが、楽しんでいただけると幸いです。
「やつの能力はわかったのか?」
「はい。おそらくですが、現実改変的な能力かと。」
「ふむ。悪くない能力だ。..が、しかし、突き止めるまでに時間がかかりすぎている。これほどまでに優秀なスパイたちがいるのに、一体何故だ。」
「実は彼は、自分自身がその能力に気づいていないものと思われます。よって、発見が遅れてしまったという次第です。」
「ふむ。..やつの能力の発動条件などは?」
「ええ。そこに関してなのですが。」
「なんだ。言ってみろ。」
「あのオーブが関係していると思われます。」
「オーブが?」
「はい。」
「ならば一刻も早くプランBを決行するしかないようだな。」
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凍える手をポケットに入れたまま、彼は猫に会うこともなく駅へと向かっていた。早くサイモンにも伝えたほうがいいのかもしれない。「猫がハッキングされている」と。誰の仕業なのか。何が目的なのかはわからない。しかし、味方が減ったことは事実だ。国の状態は悪化している。早く対アンデッド装備の開発に成功してほしいものだ。そういえば、サイモンが連載している雑誌に、アンデッドの特集が乗っていた。これにより、より一般的にアンデッドの存在が認知された。..姿は見えないけど。
――――――― ―――― ―― ―
「なに?猫がハッキングされた?」
サイモンはそう叫び、恥ずかしかったのか紅茶を啜ってから言った。
「確かに最近、いや10数年前か?..まあ近隣の国が滅びる前だ。」
..彼の話は長いので要約すると、昔は近隣国で、電子的特徴を持った生物が発見されたこと。そして研究者たちは電子生物と名付けたこと。そして、僕の会った猫が電子生物の特徴に限りなく似ていて、しかし全くの別物であるということだった。
メモを取り出し、情報をまとめてみる。
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MEMO
・電子生物は実体がない。
・猫は電子生物の特徴と生物の特徴を併せ持った特別な個体であること。
・猫は何者かの手によってハッキングされていたということ。
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「監視されている危険性もあるから、くれぐれも気を付けるように。」
帰り際、サイモンはそう言った。
わかってるって。彼はそう思ったが、そんなことを言っても意味がないことはわかっているので言わなかった。
――それにしても、猫がハッキングされる理由はなんだ?
僕が猫のハッキングを解除したときに、元をたどってみたが全くどこにもつながっていなかった。つまり、このハッキングのための何かで猫にハッキングをかけたということだ。
彼、改めルシウスは一人考えた。そういえば最近、カラスにつけられているような気もする。いや、近隣に誰も住んでいないせいで、変に勘違いしてしまったのだろう。そう思い、彼は帰りの電車に乗り込む。同じ車両には誰もいなかった。隣の車両には帽子を深々と被った男性(と思われる)が眠っていた。ただそれだけだった。対アンデッド装備を発明し、人類の反撃が始まる―――。
―――はずだった。あんなことが起きるまでは。
第3話はどうでしたか?第2話の最後あたりから第三勢力を登場させてみましたが、今回はそちらの動きを多めに書いてみました。楽しんでいただけましたか?それではまた、第4話で。




