表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死期近き王国  作者: まっちゃ
創る者・壊す者・観る者
17/20

第13-2話 世界破滅組曲序章・創

―――胸の奥が、ざわざわと揺れていました。

夕方の買い出しの時間は、いつも楽しいものでした。

今日の夕食はどうしましょう..とか、ルプスさんはお野菜を煮るよりも炒めたほうが好きでしたっけ..とか、そういうことで頭がいっぱいなはずでしたのに。


「――変ですね..。胸が、少し..痛いような..? 」


八百屋の前で足が止まりました。

風が吹いただけなのに、背中をひやりと、冷たいものが撫でます。

――ピシリ。

小さな音が胸の奥でなりました。 雷にも似た、でももっと、記憶に踏み込んでくるような音。

「―ひ..っ..!」

視界が白く弾けます。体が地面に吸い込まれるように沈みました。  倒れ込むその寸前、”どこか”が見えました。


――二つの影。

誰かの声。 でも、音でもなく、もっと、記号とかに近い..のでしょうか?  頭の中に直接流れ込んでくる”何か”。


(この感じ..私、知っているような..? )


思い出そうとした途端、激しい頭痛が私を襲いました。世界がぐにゃりと曲がり、―――――。



気が付くと、知らない天井でした。

「あれ..ここは..? 」


白衣を着た方が私を見て、安堵したように一息つきました。どうやら、村の病院みたいです。普段は回復担当のはずなの私が病院に運ばれるなんて..顔が熱くなってきました。

「アリアさん、大丈夫ですか? 」

「ふぇっ..は、はい。大丈夫..です..。」

よかったです、お大事に、と言い残し、お医者さんはまたどこかへ行ってしまいました。

それにしても、やけに現実のような夢を見ました。いえ、夢のような現実、だったのかもしれませんね。少し怖くなり、自分の胸に手を当てました。


――そこに、あるはずのない”何か”の鼓動を感じました。

「やっぱり、変ですね..。私、何かを忘れているような気がします..。」


指先に触れた鼓動は、自分のものではありませんでした。

もっと強くて、もっと大きくて、もっと―――――

 ( 創られたものの..反響..? )

何故でしょう。そんな言葉が浮かび上がりました。まったく意味は分からないし、なのに、確信がありました。 それに―――――世界が少しづつ、ひび割れています。

「ルシウス様、ご無事、でしょうか..。」

心がざわめくたびに、その名前だけが浮かびます。 理由は分かりません。でも、あの人がどこか、とても危険な場所にいると、まるで”決まっていること”のように思えるのです。そして、そのときには必ず、世界に異変が起こり始めます。最近の、あの巨大なアンデッドの騒ぎもそうでした。

私は立ち上がりました。

足は少し震えていましたが、それでも前に進みました。


―――ここから”(はじ)まり”が動き出す。


と、胸の奥の何かが、そう告げていたからです。

「行かなくては..いけませんね..。」

何処にかなんてわかりません。誰に行ったのかもわかりません。しかし、言葉にしなければいけないような気がしました。


世界のひび割れる音が、先ほどより大きく聞こえました。

「――私が、繋ぎます。たとえ..そのせいで―――」


―――すべてを思い出してしまっても。


その声はいつもの私の声ではありませんでした。

それでも、どこか懐かしく――――





まるで、世界が”創られる前の記憶”のように感じました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ