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死期近き王国  作者: まっちゃ
創る者・壊す者・観る者
16/20

第13-1話 世界破滅組曲序章・零

後書きはある信号です。記号を数字に置き換えているので、ツール等使って復元してみてください。

――何も、聞こえなくなっていく。


遺跡全体が崩れ始めているのに、その轟音はどこか遠くの出来事のようにしか感じられない。

足元の石が弾ける。視界が揺れ、世界の輪郭がゆっくりと滲んでいく。

(間違いない。これは―――――)


――第零宇宙が崩壊を始めている。


ほんの数分前まで確かに”在った”廊下は霧のようで、触れることすら叶わない状態と化していた。

僕は深く息を吸い、崩れ征く遺跡の中心で動くそれを見た。 ””原初観測装置””と書かれた円盤はもう正常ではなかった。黒い光が血液のように漏れ出て、表面を動いていた粒子は渦を巻きながら虚無へと流れ出ていた。

「―――限界か。」

触れた指先に僅かな痛みが蘇る。 あの瞬間から、この空間は”死んだ”。

再び光が弾ける。

円盤の奥、――虚無を指した影がゆらりと動く。影は二つあった。最初にいた”魔導士の影”。そしてもう一つは、光の中に立つ”誰か”。顔も、服も、輪郭すらも曖昧な、形だけの影。

(誰だ..? 記録に存在していない、第三の影..?)

影の口が何かを言った。記号のような、声のような―――言葉ではない”それ”が、脳に直接響く。

その瞬間、僕の視界は一瞬だけ別の誰かと重なった。


白い光。

眩しさ。

胸を走る痛み。

倒れこむ感覚。


(―――?)

次の瞬間にはもう、視界に広がるのは崩れる遺跡と虚無だった。天井が唸り、崩れ落ちる。もうここにいるべきではない、そう感じ、僕は出口へと走った。 ―だが、走るほどに世界は歪んでいく。床が波打ち、壁は液体のように揺れた。

――まさか、この空間ですら世界線の一つなのか? 

――――だから、こうも脆く崩れていくのか?。


出口にたどり着いたころには、遺跡の半分以上が闇に沈んでいた。漏れだす光から地上へ出た瞬間、肺の中には”新しい空気”が流れ込む。息を吐いて気付く。


―空が欠けている。

―なにもかも、色が違う。

―遠くで鐘が響く。

―僕の全く知らない音だ。


(世界が、書き換わっている..? )

否定したかった。だが、できなかった。 ””原初観測装置””の崩壊は”世界の終わり”じゃない。

「始まり」だ。

「夜明け」だ。


ルシウスは静かに目を瞑る。

「ルプス、あと少し。少しだけ―――待っていてくれ。」

その声色には、決戦に赴く者の覚悟はなかった。あったのはただ一つ、氷よりも冷たい冷ややかな”破壊者の決意”だった。

彼の背後で第零宇宙、ディス・ユートピアはゆっくりと崩壊し、やがてすべてが消える。 まるで最初から存在しなかったかのように。


ルシウスは静かに目を見開く。

「さぁ―――すべてを終わらせようじゃないか。」

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