第13-1話 世界破滅組曲序章・零
後書きはある信号です。記号を数字に置き換えているので、ツール等使って復元してみてください。
――何も、聞こえなくなっていく。
遺跡全体が崩れ始めているのに、その轟音はどこか遠くの出来事のようにしか感じられない。
足元の石が弾ける。視界が揺れ、世界の輪郭がゆっくりと滲んでいく。
(間違いない。これは―――――)
――第零宇宙が崩壊を始めている。
ほんの数分前まで確かに”在った”廊下は霧のようで、触れることすら叶わない状態と化していた。
僕は深く息を吸い、崩れ征く遺跡の中心で動くそれを見た。 ””原初観測装置””と書かれた円盤はもう正常ではなかった。黒い光が血液のように漏れ出て、表面を動いていた粒子は渦を巻きながら虚無へと流れ出ていた。
「―――限界か。」
触れた指先に僅かな痛みが蘇る。 あの瞬間から、この空間は”死んだ”。
再び光が弾ける。
円盤の奥、――虚無を指した影がゆらりと動く。影は二つあった。最初にいた”魔導士の影”。そしてもう一つは、光の中に立つ”誰か”。顔も、服も、輪郭すらも曖昧な、形だけの影。
(誰だ..? 記録に存在していない、第三の影..?)
影の口が何かを言った。記号のような、声のような―――言葉ではない”それ”が、脳に直接響く。
その瞬間、僕の視界は一瞬だけ別の誰かと重なった。
白い光。
眩しさ。
胸を走る痛み。
倒れこむ感覚。
(―――?)
次の瞬間にはもう、視界に広がるのは崩れる遺跡と虚無だった。天井が唸り、崩れ落ちる。もうここにいるべきではない、そう感じ、僕は出口へと走った。 ―だが、走るほどに世界は歪んでいく。床が波打ち、壁は液体のように揺れた。
――まさか、この空間ですら世界線の一つなのか?
――――だから、こうも脆く崩れていくのか?。
出口にたどり着いたころには、遺跡の半分以上が闇に沈んでいた。漏れだす光から地上へ出た瞬間、肺の中には”新しい空気”が流れ込む。息を吐いて気付く。
―空が欠けている。
―なにもかも、色が違う。
―遠くで鐘が響く。
―僕の全く知らない音だ。
(世界が、書き換わっている..? )
否定したかった。だが、できなかった。 ””原初観測装置””の崩壊は”世界の終わり”じゃない。
「始まり」だ。
「夜明け」だ。
ルシウスは静かに目を瞑る。
「ルプス、あと少し。少しだけ―――待っていてくれ。」
その声色には、決戦に赴く者の覚悟はなかった。あったのはただ一つ、氷よりも冷たい冷ややかな”破壊者の決意”だった。
彼の背後で第零宇宙、ディス・ユートピアはゆっくりと崩壊し、やがてすべてが消える。 まるで最初から存在しなかったかのように。
ルシウスは静かに目を見開く。
「さぁ―――すべてを終わらせようじゃないか。」
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