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死期近き王国  作者: まっちゃ
創る者・壊す者・観る者
15/20

第13-0話 世界破滅組曲序章・暁

世界は、気づかぬうちに音を失っていった。


最初に崩れ落ちたのは、記憶だった。

誰のものでもない、世界そのものが抱えていたはずの記憶。

あるはずの名前が薄れ、語られるべき歴史が穴をあけていく。


その“空白”は、静かに、まるで夜明け前の風のように広がった。


やがて、ひとつの宇宙がひっそりと音を立ててひび割れる。

第零宇宙―――かつて、誰かがそう呼んだ場所。

名を持たず、記憶もなく、祈りさえ忘れられた最初の空間。


その崩壊は、終わりではなく始まりであった。

世界線は歪み、時間は縺れ、真実はその姿を変える。

何も知らぬ者たちが、同じひとつの“暁”を迎えようとしていた。


この物語は、ただの並行では終わらない。

幾つもの視点は、ひとつの破滅へ向かって重なりあう。

それは調和ではなく、断絶でもなく―――

数多の世界が奏でる、最後の組曲。


ルシウスも。

アリアも。

ルプスも。

フォーローン王国も。

そして、観測者(君たち)ですら。


誰も知らぬまま、世界は“暁”に立っていた。


舞台の幕が、いま、上がる。


―――――11月31日。世界が崩壊を始めた。

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