第10話 絶望の果てに
こんにちは。まっちゃです。第1章も最終話ですね。今回は3,000字ありますが、ここまで読んでくださった方々には誤差でしょう。
そこで僕の意識突然戻った。
「あれ、ここは..」
そこは僕が、光の力を手にしたきっかけ、アルメリアと対峙した場所だった。 宇宙のような、奈落のような、無限の空間が広がっていた。あたりには”光”と”闇”しか存在していなかった。冷たいような、温かいような空気が身を包む。 少し進むと、現れたのは様々な世界だった。まるで惑星のように、無限の世界線が広がっていた。 とある世界を覗き込む。そこは、「僕があのまま改造されていたら」というif世界だった。悪い予感はした。そしてそれは的中した。
僕はサイモンの人形となり、その大剣で
―――――ルプスを切り裂いた。
「..っ!?」
吐き気がした。腹の底からふつふつと湧き上がる感情。 僕は自分を許せなかった。ただ、それ以上に笑いが込み上げてきていた。 ”面白い”。それが率直な感想だった。 ああ。 ―――いつから僕はこうなってしまったのだろうか?
”魔”と化したルシウスを討伐すべく、俺はもう一度あの銀髪の少女の元へ向かっていた。
「はぁ、また来たのですね。何度も言いますが、私はルシウス様に―――」
「そのルシウスが操られるってのにどうするつもりなんだ?」
「!?」
少女に驚きの顔が浮かぶ。
「ルシウス..あのルシウス様が!?」
「ああ、そうだ。俺はあいつとは長く付き合ってきたからな。あいつに正気を取り戻させたいと思っている。」
少し考えて、彼女は告げた。
「ならば協力しましょう。ルシウス様の洗脳を解けばよいのですね!!」
こうして味方を一人増やした。なんでルシウスのことになるとそんなに食いつくんだ..?
――着々と準備を進め半年。2,000人規模の軍隊を築き上げた。
いつかルシウスの奇襲を食らったあの地へ、俺たちは向っていた。操られたあいつなら、まず俺を潰すに違いない。ならあいつの全力を食らっても被害が少ない場所で戦うのがベスト。そう考えたからだ。
4ヶ月ほどかけて、俺たちは対ルシウスの兵器を開発してきた。大砲、ミサイルをはじめ、ほかにもアンデッドに強い装備を開発した。 2,000人ほどの軍でかかっても、おそらくは全滅するだろう。なぜなら向こうは神を超えた存在であり、数多のアンデッドを従えた存在だからだ。 ――ただ、勝算はあった。あいつは。ルシウスは。
アンデッドであるからだ。
水の力を宿し、神となった俺。そしてそんな俺をサポートしてくれる少女。 ―それでもあいつなら俺たちを瀕死までに追い込むだろう。 そう思った俺たちは、2ヶ月かけて王国中のオーブを探し回った。その時点で軍は1,700人ほどいたから、8個すべてが集まった。回復能力を持つ”自然”。 現実や物理法則を狂わす”混沌”。 時間の概念や空間の概念を捻じ曲げる”時空”。 膨大な拡張エネルギーを利用する”宇宙”。 神話生物の炎を使いこなす”竜炎”。 影に溶け込み、魂を奪取する”影魂”。 光のような速度と雷のような力強さを持ち合わせる”雷光”。 そしてすべての根源。この世界の始まりである”原始”。
―少女には”自然”を与え、回復能力の底上げを。
―我が軍の中で最も攻撃特化な者には”竜炎”を与え、炎属性の付与を。
―奇襲、暗殺を生業とする者には”影魂”を与え、より奇襲特化型へと。
―速度特化な者には”雷光”を与え、速度と攻撃力の底上げを。
―頭脳が優れていたものには”混沌”を与え、盤面をひっくり返すほどの作戦を。
―”時空”、”宇宙”、”原始”は、適したものがいなかったが、俺がすべて取り込んだ。
全てが万全だった。
やがて、空に亀裂が走った。眩いほどの閃光が溢れ、亀裂は穴へと変化する。異空間へとつながっている穴から出てきたのは、より禍々しい姿になったルシウスだった。その瞬間、肌を刺すような風が吹き、地面が抉れ、隠しておいた大砲が煙を上げて爆発した。
彼が軽く振るった大剣からは、ブラックホールよりも深い黒の衝撃波が飛んできた。衝撃波の周りは、空間がねじ曲がっているようにも見えた。 建物にかすれ、そこより上がきれいさっぱり消えていた。衝撃波は推定100mほど飛ぶようだ。
見渡すと、兵士たちは青ざめていた。俺も同じ顔をしていたと思う。
「アレとどう戦えっていうんだ..」
誰かの枯れきった声が聞こえる。冷や汗が流れ落ちる。鼓動の音が聞こえる。何が「全てが万全」だ。あいつには敵わない。直感と脳が告げた。「それでもお前らならいける」。
大””もう使い物にならないが、まだ俺たちに武器はある。
「ミサイル用意!!!」
「はっ!!」
あいつが羽ばたくたびに空気が震える。怖い。死ぬ未来図も見える。 が、リーダーが恐れていてたまるか。俺は堂々とルシウスの前に出た。指先が震える。足が震えるのは気力で抑えていた。
ルシウスに鎌を向ける。俺の愛用武器だ。ここでお別れかもしれないが。
「ルシウス!貴様、いつまで言いなりにされているんだ!いい加減起きろ!」
虫けらが叫んでいた。理解に苦しむ。これほど強大な力を持ったものを人間などという下等生物のもとに置いておくのは惜しい。何故連れ戻そうとする?お前らもこちらにつけば解決するではないか。
ルプスが叫んでいた。心の中の天秤は光側へ傾いた。その瞬間、真横に気配を察知する。リボルバーを向け、粉砕する。そこからは大量の水が零れ落ちた。
「嘘..だろ..?」
”混沌”を使って現実にはないような素材の外殻にしたというのに。一撃で粉砕してくるだと..?
しかし収穫もあった。奴に兵器は効かない。ならば―――
俺は”時空“ ”宇宙“ ”原始”すべてを発動させ、ルシウスの元へと走った。あいつからは一瞬で俺が真下に来たようにも見えるだろう。
「!?」
現にあいつの顔には困惑の色が浮かんでいる。 すべての能力をフル活動させ、最高火力の手榴弾を瞬時に作る。ピンを抜き、”時空”の能力で俺の位置だけ時空を曲げ、自爆をしないようにする。
あいつは瞬時に剣を構えた。が、わずかに俺のほうが早かった。剣を鎌ではじき、爆発を当てる。爆風からは光が飛び出し、感じたことすらない、古代のエネルギーが漂っていた。
「今だ!!畳みかけるぞお前ら!!!」
恐怖に青ざめながらも、皆が各々の武器を掲げ走ってくる。ルシウスはリボルバーを向けるが、そのうちの2丁を奪い取り、残る2丁を打ち落とす。衝撃波が放たれる。鎌で弾く。全員が到着した。 その時だった。爆発音のような轟音が響く。ルシウスの真上から、女性の、魔族と思われる者が下りてきていた。
「ルシウス。何故攻撃されている?お前は完全体だろう?お前の力ならだれにも負けない。」
「ああ。そうだ。僕は完全体となった。」
「なら行け。あいつらを滅ぼせ。」
「なあ、アルメリア。なんで今ここに来た?」
「..?」
「理由はなし、か。ならいいか。」
あいつはその大剣を大きく振りかぶり、――――――――――――――――――――魔族を真っ二つに切り裂いた。血しぶきの中、あいつは何かを取り出した。それはオーブだった。血液に染まった毒々しい紅のオーブを、あいつは迷うことなく取り込んだ。その瞬間、深紅の光が柱となり、周囲の空間が歪んだ。その瞳は、わずかに紅く染まっていた。あいつは冷酷な笑みを浮かべ、嬉しそうに告げた。
「大成功だ。ルプス。今日はここまでにしておこう。君たちとの闘いは―そうだな。3年後にしておこう。そのころには君たちも僕に匹敵するだろう。」
言い終わったころにはすでにあいつの背後には裂け目が生まれていた。俺たちがただ茫然と眺める中、あいつは悠然と裂け目に吸い込まれるように消えていった。
「おぼえてろよ、ルシウス。」
そういう俺の顔も嬉しそうに、笑顔を浮かべていただろう。
待っていろ。すぐにお前に追いついてやるさ。
第2章では戦闘が多くなるので(予定)一応R15設定を設けたのですが、今回の感じを見ると意外と意味がないのかもしれませんね。
ではまた、第2章で。




