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死期近き王国  作者: まっちゃ
始まりの終わり=終わりの始まり
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第9話 光神、時に闇神

こんにちは。まっちゃです。ひさしぶりに前書きを書いた気がする。3回くらい書いたものが消えたせいで時間がかかった.. (´;ω;`)

「あーあ、なんで誰も気づかないんだろうな。」

彼は猫を撫でそういった。猫は何もわかっていなさそうな、しかし、真剣にも見える顔でニャーと小さく鳴いた。

「どんな姿でも僕は僕なんだけどな。」

猫はもう一度ニャーと鳴いた。

「ごめんな..いつもこんな愚痴ばかり聞かせて。」

そういうと猫は茂みの奥に行ってしまった。彼は猫についていくようなことはしなかった。その姿はかつての、青年の姿ではなかった。しかし、彼は紛れもなくルシウス本人でもあった。

――彼の心には天秤が作られた。闇に傾けばあの魔族の思い通りに。光に傾いている間だけは自分の意志で動くことができた。ルプスを助けたのも、偶然光側に傾いたからだった。あの魔族の名前は憶えていないが、すでに彼女の手によって幾つかの世界は融合されてしまっていた。この世界―1"Aも、気づけば他世界と融合されていた。しかし、それによりこの世界線の技術力は格段に上昇していた。アンデッドに関する研究も進み、アンデッド進化論までも出ていた。アンデットによる死者も大幅に減少し、王国は平和を保っていた。 しかし、その裏ではフォーローン政府がひそかに計画を立てていた。


その日、ルシウスは散らばってしまったオーブの破片を集めに、街へと繰り出していた。


(あれか..?)

近くの林に薄明かりをとらえた。ゆっくりと歩みを進める。薄く、黒く光るそれはまさにオーブの破片であった。オーブは基本、破片では力を発揮しない。だからこそ僕は油断していたのだろう。

(こんなに見つけづらいものをあと幾つ見つければいいんだ..)

――手に取り気づく。

(これ..”破片”じゃない..) 

鼓動が早まる。闇夜に浮かぶ満月に照らされたそれは、オーブであった。

(”深淵”..)      直感が告げる。ここは危険だと。今すぐ離れろと。しかし体が動いてくれなかった。

(ならば別世界に..)     思い、僕は魔力を集中させる。  が、無駄だった。能力も封じられている。これが”深淵”か。噂には聞いていたが、ここまで強力で、 ――凶悪な罠だとは思いもしなかった。 気づけば僕は何者かに囲まれていた。全員黒いローブに身を包み、素顔も見えなかった。わかることは謎の器具を持っていることくらいだろうか。

「..やれ。」  冷酷な声が響く。その声はかつての仲間、サイモンのものであった。 ―僕を囲んでいたやつらが全員動き出した。 瞬間、半分ほどが音もなく倒れた。

「助けに来たぞ、ルシウス。」  目だけを動かし、声の主を見上げる。そこには満月を背に立つ、戦狂神(バーサーカー)がいた。

「ルプス..頼んだ。」

「言われなくてもやっているさ。」

彼はそう言い、圧倒的な速度で敵をなぎ倒していく。その間、サイモンは僕に近づいてきていた。

「やあ。久しぶりだね。君は..ルシウスだったか? 人の名前を覚えるのは苦手でね。」  そういう彼の顔は以前あった時とは全くの別人であった。サイモンは謎の器具を取り出し、囁く。


「国のために、民衆のために死んでもらえるかな?」


得体のしれない器具が腕に、足に、首に。瞬く間につけられていった。ようやく戦いが終わったルプスは僕らのほうへ来たかと思うと、瞬時にサイモンの首にその剣をぶつける。  が、切れない。

「「!?」」

「残念だったな。私は自らの研究により、文字通りの鋼の肉体を手に入れたのだよ。」

そういったサイモンは腕を掲げ、手に持った懐中電灯を点滅させた。

「なにやってるんだ、あいつ。」

と、ルプス。奇遇だな。僕も同じことを考えていたところだよ。  彼が次を喋ろうとした瞬間、発砲音がした。隣ではルプスが血を吐いていた。彼は胸のあたりに穴が開いていた。

「スナイパーか..!!!」  その声には怒りがにじみ出ていた。サイモンは楽しそうにその光景を見ていた。

「ルシウス君、いつだったか、君は言っていただろう? 猫がハッキングされていると。犯人は私だよ。君たちが寝ていたホテルに、その寝室にオーブを運ばせたのも私だ。すべては君のその能力(アビリティ)を手にするためだったのだよ。」

「..!?」

「さようなら。ルシウス君。」


ああ、もっと、ルプスと話しておけばよかったー。  最後に思ったことはただそれだけだった。








気づくと僕は何かに寝かせられていた。目には目隠しが施され、何も見えなかった。しかし、鼻を突くような薬品のにおいと無機質に響く機械音、不気味な歪んだ空気は感じることができた。

「ここは..?」

「目を覚ましたか、ルシウス。」

「ルプス..お前、怪我は大丈夫なのか..?」

「ああ、びっくりしたが、これでも一応、オーブを取り込んだ存在だ。常人とは比べ物にならない肉体を持っている。」

「それもそうか。」

聞きなれた声との会話に安心し、僕の意識は再び遠のいた。




次に目を覚ました時には目隠しなどされていなかった。薄暗い部屋、意味をなさない蛍光灯。中身が不明な試験管たち。そして大きなモニター。そこには僕とオーブについての情報が映し出されていた。

「やっと目を覚ましたか。ルシウス君。それじゃあ今から―」



――――改造を始める。


寒気がした。こいつ、正気か? 改造なんてできるわけがないだろう?    ..わかってるさ。強がりだって。こんなことを思っていても運命には逆らえないんだって。この場所に助けは来ない。ルプスも動けない。ルシウスっ!!!ルプスの声が響く。


何処からか機械が出てくる。それらは僕に近づき、 ―腕をもいだ。

「..ぁ..ぁあ"あ"!!!!!!!!!!」   喉は既に潰されていた。はずなのに、僕の声は絶叫として響き渡り、蛍光灯が揺れた。

痛い。熱い。やめてくれ、頼むから。痛いんだ。業火の中にでもいるような熱さも感じる。しかし、痛みよりも恐怖のほうが勝っていた。僕の体は無意識に魔力を開放し、未知なるものを払おうとしていた。


―すさまじい衝撃だった。あいつが放った魔力はそこらの悪魔とは比べ物にならないほどに強かった。この俺がたじろぐほどに。蛍光灯は落ち、モニターにはノイズが走り、扉は吹き飛んだ。あいつの眼は、先ほどのような神聖な光は宿っていなかった。禍々しいほどの紫に染まったその眼で、あいつは研究者を見つめていた。そんなあいつの腕は、すでに再生していた。背中から禍々しい大剣を取り出し、自らを縛る鎖を断った。神々しいほどに眩いリボルバーを乱射し、研究者を追い詰めている。そして大剣を振るった。      ――残ったのは切り刻まれた肉塊だった。

光が宿っていない眼をしたあいつは、俺を縛る鎖を一振りで断ち、莫大な空へと飛び去って行った。その翼は光神(ルシファー)のような純白のものではなく、闇神(サタン)のような漆黒の翼であった。

最近はタイトルの文字数をそろえるのに苦戦してます。2章でもそろえるつもりですが、十文字程度にしようかな。

ではまた、フィナーレで。

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