表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

コンビニ異世界転移物語

作者: 蟹地獄
掲載日:2025/08/30

夜中の2時。

残業帰りの俺は、駅前のコンビニでカップラーメンを買おうとしていた。


「すいません、テレビで見たんですけどセブン限定“究極の塩ラーメン”ってどこですか?」


レジのお姉さんは眠そうな顔で、棚の奥を指さした。


「そこの異世界ゲートの横です」


「は?」


何を言ってるんだこのお姉さんは。


異世界ゲート。


ふざけるのにもほどがあるだろう。


ちょっとイラッとした。

だがこんな深夜のコンビニだ。

恐らく彼女はずっと客が来なくて暇だったんだろう。

気を取り直して考えてみた。


「女性の店員がそんな冗談を言うのも珍しいな。」

「どんな展開になるのか少し興味が湧いて来たし軽く話に乗ってみるか。」


そう心の中でつぶやいて「ありがとうございます」とお礼を言いながら棚の奥へと歩いていくふりをしてみた。


しかし女性店員はどんな展開どころか一向に声をかけて止めてこない。

ひたすら無視だ。


「なんだよ、何か言えよ。これじゃ俺がバカみたいじゃないか。」


コンビニの店内は狭い。

そうしているうちに気がついたらすぐに言われた場所に着いてしまった。


「なんだかなぁ〜。なんなんだろうあの女性店員は。」


と小さくつぶやいてとりあえず目当てのカップラーメンを買って帰ろうとしたその時だった。


なんと棚の横に青白い光を放つ巨大な渦があった。

女性店員の言葉を借りるなら異世界への入り口とおぼしきものが確かにあったのだ。


「え、これ何?!本当?!これ何ですか?!」


振り返ると、レジのお姉さんは淡々と言った。


「異世界ゲートです。うちのチェーン店、最近こういうサービス始めたんですよ」


聞くとどうやら、このコンビニは「異世界で勇者体験ができる無料サービス」というのをやっているらしい。

制限時間は30分。無料。カップラーメンを買えば利用OK。


「お得すぎない?」と疑いつつ、冒険心がうずいた。


俺は急いでカップラーメンを買い、すぐに渦に飛び込んだ。



---


気づけば、目の前にドラゴン。

その隣には、胸元がやたらと露出したエルフの魔法使いが立っていた。


「勇者よ!この世界を救ってください!」と叫ぶエルフ。


「ちょっと待って、俺ラーメン買いに来ただけなんだけど」


「心配無用です!倒せば無料クーポン進呈です!」


なるほど、コンビニの販促か。


勇者用の武器として手渡されたのは――セブン限定・極太割り箸。


「ハイ!セブン限定の超武器スーパーウエポンです!」


「……いや、これ割り箸だよね?」


「はい、勇者専用の神器です!」


「神器っていうか……木じゃん。木の棒じゃん」


「この世界では“魔法樹木マホガニア”の枝から作られた最強装備です!」


「でもセブン限定って言っちゃったよね!? それ日本のチェーン店じゃんね!?」


言い争ってる間にも、目の前の巨大ドラゴンが唸り声を上げた。

全長15メートル。ウロコは黒曜石のように硬く、口からは灼熱の炎が漏れている。


「……いやいやいや、ムリムリムリムリ!!!」


「勇者よ!早く戦ってください!」


「いや、これどう見ても物理的に無理でしょ!? 俺の武器、割り箸なんだよ!? しかも折り目ついてるタイプ!!」


割り箸をパキッと割ってみると、案の定、中からトゲが出てきた。

ますます頼りない。


「せめて剣とか槍とか、もっとこう……ねえ!? ドラゴンと戦うのに割り箸て!!」


「勇者ならできます!」


「勇者じゃなくて残業帰りの会社員なんだけど!!」


そのとき、ドラゴンが大きく息を吸い込んだ。


「あ、これ火を吐くパターンだ。」


カップラーメンを入れたコンビニ袋持ったまま、火炎放射であぶられて死ぬ未来が見えた。


「うわあああああああああ!!!」


とっさに割り箸を構える俺。

すると、なぜか割り箸がギュイイインと光り出した。


「え?……光った!? これ本当に神器!?」


「そうです!“セブンイレブソ・ポイントカード”と連動しています!」


「何その連動システム!? Tポイントかよ!!」


もうわけがわからなくなったままとにかく身構えて光り輝く割り箸を盾にした瞬間、俺の身体がふわりと軽くなった。

足元から風が巻き起こり、まるで重力がなくなったように宙に浮く。


「勇者よ、今です!“二段突き”を!!」


「二段突きって、割り箸だよ!? いいの!? ほんとに行くよ!?」


俺は叫びながら、宙を跳んだ。


「割り箸・二段突きィィィ――ッ!!」


ドラゴンの巨体をすり抜けるように、光の軌跡が走った。

一瞬後、ドラゴンは轟音と共に崩れ落ち、煙になって消えた。


……。


俺は、ポカンと割り箸を見つめた。


「……いや、やっぱこれ割り箸だよな」


エルフが満面の笑みで駆け寄ってきた。


「さすが勇者様! お見事です!」


「いや、絶対この割り箸、普通のよりちょっと高いだけの割り箸だろ……」



---


そして再び気づくと、コンビニの棚の前に立っていた。

手には「究極の塩ラーメン」。

レジのお姉さんがにこやかに言った。


「お疲れさまでした。こちら異世界勇者クーポンです」


クーポンの内容はこうだ。


“次回、異世界ボスを5体倒すとラーメン1個無料”


「……二度と来ねえ」


そう心に決めてコンビニを後にした。

だが、家に帰って袋を開けた瞬間、俺は凍りついた。


カップラーメンのフタには、こう書かれていた。



『お湯を注ぐと異世界ゲートが開きます』

             BYセブンイレブソ




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ