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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン7

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第140章 叔父の記憶 ― ジャングルの罠


花蓮の山道を警戒して進んでいたときだった。

黄の足が草を踏みしめた瞬間、視界がまた滲み、空気が一変した。冷たい霧ではなく、まとわりつくような湿熱、甘酸っぱい腐葉土の匂いが鼻を突く。彼は再び叔父の戦場にいた。


——1970年、南ベトナム中部の密林。


小隊は汗で軍服を濡らしながら前進していた。セミのような虫の鳴き声、上から滴り落ちる水滴。米軍顧問とともに歩いていた叔父は、靴底の下にかすかな違和感を覚え、反射的に足を止めた。


「待て!」


直後、先頭を歩いていた米兵が草を払いのけた瞬間、ワイヤーが張り詰め、手榴弾が枝からぶら下がって転がり落ちた。爆風が前方を薙ぎ払い、二人が即死した。耳鳴りの中、叔父は地面を睨む。泥に半ば埋まった竹の杭が、尖った先を血に濡らしていた。パンジースティックの落とし穴だった。


黄の胸が締めつけられる。足を一歩誤れば、自分も串刺しになっていたかもしれない。叔父の声が低く響く。

「罠は敵の銃弾より恐ろしい。目に見えず、足元から心を奪う。」


さらに小隊が進むと、再び罠が待っていた。

木の枝に吊るされた竹籠が落下し、中に仕込まれた竹槍が兵士の背を貫いた。トリップワイヤーに触れると作動する仕組みで、米軍はこれを「スイング・バンブー」と呼んだ。直接の死よりも、負傷と恐怖を狙った罠だった。負傷者の呻き声が、仲間の足を鈍らせる。


叔父は後にこう語った。

「ベトコンは弾丸ではなく“時間”を奪った。罠で進軍を止め、救助を強い、列を乱す。兵士の心に『次の一歩が最後かもしれない』という恐怖を植え付けた。」


視界が花蓮に戻る。

台湾兵の仲間が「足元にワイヤー!」と叫んだ。慌ててライトを当てると、細い針金が枯葉の下から伸びていた。敵のブービートラップだった。黄はすぐに処理班を呼び、慎重に解除させる。


胸の奥には叔父の声がまだ残っていた。

——罠は銃よりも時間を奪う。恐怖が兵士を止める。


黄は息を吐き、仲間に声をかけた。

「大丈夫だ。ワイヤーは切った。進め。」


その声は、叔父が半世紀前の密林で仲間を励ましたのと同じ響きだった。


こうして黄は理解した。

ベトナムの戦場で使われたブービートラップの恐怖は、戦術的に見れば「時間と士気を削る兵器」だった。そして今、台湾の山岳戦でも同じように、敵は罠を仕掛けている。

戦場の道理は変わらない。


——銃弾だけではない。恐怖そのものが、戦いを支配するのだ。


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