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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン7

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第90章 北朝鮮の難民



——2027年11月15日、午前5時。38度線北側、開城付近。


冬枯れの平原に、戦車の履帯音が響いていた。

T-80BVMの隊列は朝靄を切り裂きながら南へ進み、随伴する歩兵戦闘車BMP-3が側面を固める。前夜まで北朝鮮軍の駐屯地だった建物はすでに制圧され、破れた旗と放棄された武器が散乱していた。


「抵抗は?」

無線に応じたのは先遣大隊長。

「組織的抵抗はなし。散発的に逃げ出す兵士を拘束中。」

将校は笑った。

「問題ない。連中はもう国を持たない。道は開けている。」


進軍の背後では、補給車両が長蛇の列を作っていた。燃料タンク車、野戦厨房、移動式発電車。全ては“占領ではなく、拠点化”を目的とした装備だった。


同刻、モスクワ・クレムリン地下作戦室。


巨大なスクリーンに、衛星から送られてくる赤外線映像が映し出されていた。

北朝鮮北部一帯にロシア軍部隊のシグネチャーが散らばり、いくつもの赤い帯が南に向かって伸びている。


参謀総長が報告した。

「作戦は順調に進行中。第5親衛戦車旅団は平壌郊外に展開済み。国境からわずか36時間で首都を制圧。現地軍の降伏率は85%。残存兵は中国国境へ逃走中。」


大統領代行は椅子に深く身を沈め、無言でスクリーンを見つめていた。

「よろしい。国はすでに無い。我々が線を引き直すのだ。」


外務大臣が低く付け加える。

「南には押し付けましょう。人民は国境を越えて流し込めばよい。韓国も米国も、“人道”を理由に拒めまい。」


——午前7時、平壌市街。


煙が立ち上る瓦礫の街を、ロシア軍の装甲車両が縦列で通過していく。

兵士たちは既に市庁舎にロシア三色旗を掲げ、通信拠点には即座にジャミング装置が設置された。


市民たちは路地に身を潜めながら、沈黙の目でその光景を見ていた。

老人が小声で呟く。

「今度はロシアか。……もう誰の国でもなくなった。」


若者の一団は国境へ向かって歩き始めていた。南へ、韓国へ。

人の流れは次第に川のように膨れ、難民の列を形成し始める。


クレムリン。


「これで極東の新たな盾が完成する。」

参謀総長の声に、誰も異を唱えなかった。


大統領代行は立ち上がり、最後の一言を投げた。

「北朝鮮は、我々の前線。人民は南へ流せ。領土は赤に染めるが、人は我々の負担ではない。」


その言葉と同時に、スクリーンの中の地図は塗り替えられた。

朝鮮半島北半分は赤い陰影で覆われ、かつての国境線は完全に消え失せていた。


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