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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン7
880/2512

第53章 救援

午後4時30分 ―― 台湾東岸 花蓮郊外

雨のように降り注ぐ砲弾の轟音の中、陸上自衛隊第1空挺団の臨時拠点は土嚢と鉄板で辛うじて形を保っていた。


爆風で吹き飛ばされた竹林の間から、台湾陸軍の兵士たちが泥だらけの姿で走り込んでくる。

「前線、また突破されかけてる!」


息を切らした声に、日本の隊員が短く答える。

「持ちこたえろ、あと数分で航空支援が来る!」


だが、空は厚い雲に覆われ、轟くのは敵砲の音ばかり。

兵士たちの目には疲労と焦燥が濃く張り付いていた。


その時だった。

遠くの空に低く響くジェット音。

最初は幻聴かと思われた。だが、やがて轟音は近づき、雲間から編隊の影が現れた。

「……F/A-18だ!」


誰かが叫ぶ。

青白い稲妻のように低空を切り裂き、米海軍の艦載機が花蓮の東岸上空へ突入していく。

続いて高高度に、F-22のシルエットが旋回し、防空網を広げる。

その背後に、E-2D早期警戒機のシンボルが僅かに覗いた。


「こちらヴィンソン管制。CAP“DRAGON-ONE”、オンステーション。地上部隊、識別信号を送れ」


無線に英語が割り込み、直後に日本語の通訳音声が重なる。

「こちら〈カール・ヴィンソン〉。対空掩護に入る。識別用ストロボを点灯せよ」

陸自通信兵が慌ただしく赤外線ビーコンを点灯させる。


その直後、雲間からの急降下。

F/A-18の編隊が敵砲兵陣地を狙い、JDAMが次々と地表に落ちる。

地鳴りが走り、台湾陸軍の前線を襲っていた砲火が一気に途絶えた。


一瞬の静寂。

その後に訪れたのは、兵士たちの荒い息と、どよめきだった。

「止まった……砲撃が止まった!」

「本当に来たんだ……米軍が!」


泥に膝をついていた台湾兵が、両手で顔を覆ったまま泣き崩れる。

隣にいた陸自の曹長は、その肩を叩き、短く言った。

「まだ終わってない。だが――これで前を向ける」


頭上を旋回するF-22が、黒い雨雲を裂きながら鋭く旋回していく。

その軌跡は、疲弊した兵士たちにとって、ただの航空機ではなかった。

「まだ我々は孤立していない」という確かな証明だった。


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