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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン7

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第45章 救出列の混乱

秋葉原駅前広場


オスプレイのローターが唸りを上げ、吹き荒れる風が広場の人々を直撃した。

舞い上がった灰と紙屑が視界を覆い、避難民の列は一瞬にして崩れた。


「早くしろ!」

「子どもが! うちの子を先に!」

「押すな、押すな!」


叫び声と泣き声が重なり、列の後方から人波が前方へと押し寄せた。

押された女性がよろめき、腕に抱えた赤ん坊が落ちかける。

隣の男がとっさに抱きとめたが、その動きに釣られてさらに人が倒れ込む。

恐怖が恐怖を呼び、列は崩壊寸前だった。


だが、その混乱を切り裂く声があった。

「――ストップ!」


拡声器越しの、鋭い英語の一声。

米兵が前に躍り出て、両手を大きく広げて人々の動きを制した。

ヘルメットに取り付けられた赤いライトが、乱れた群衆の目を射抜く。


続いて自衛隊小隊長が日本語で叫ぶ。

「止まれ! 順番だ! 子どもと負傷者から!」


その声に、隊員たちが即座に動いた。

一人は転倒した女性を抱き起こし、別の一人は赤ん坊を優しく抱き直して母親の腕に戻す。

さらに別の隊員は肩から担いだ盾板を人波の間に差し入れ、押し合いを遮る“壁”を作った。


「列を二列に分けろ!」

「グリーンスモークを見ろ、そこが先頭だ!」


兵士たちは冷静だった。

焦る群衆の中を、手信号と短い言葉で制御していく。

腕を突っ張る人には肩に手を置き、震える子供には膝をついて目線を合わせ、

「大丈夫だ、君の番が来る」

と穏やかに囁いた。


やがて人々は再び二列に並び直され、前方の兵士が一人ずつ機内へと送り込む流れが復活した。

子どもが抱えられて乗り込み、次に負傷者が担架ごと押し込まれる。

列の後方で泣き叫んでいた母親も、隊員に手を引かれ、安堵の涙を浮かべながら子を抱いて前に進んでいった。


ローターの轟音にかき消されながらも、その秩序は確かに蘇りつつあった。

兵士たちの冷静な制御が、群衆を絶望から「救出の列」へと戻していったのだ

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