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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン7
851/2459

第24章 艦橋、壊滅

蒼井惟人 二等海尉

艦橋砲術副主任


——視界が焼けた。

閃光とともに衝撃波が艦内を貫き、空気が瞬時に引きちぎられるような感覚が走った。制御卓が爆ぜ、CICの前方ブロックが白熱する。床が軋み、あらゆる警報が鳴った——だが、音は一拍遅れて聞こえた。感覚のほうが先に崩れた。


蒼井惟人二等海尉の頭上から何かが降ってきた。破片か、誰かの椅子か。避けきれず、左肩に硬い衝撃を受ける。


「南條大尉!」

声が出るより先に、彼のいた場所が炎に包まれていた。第一主制御卓は跡形もなく吹き飛び、司令席の防爆シールドが曲がっている。艦橋そのものが、中央からえぐられたように裂けていた。


空気の流れが変わった。艦内圧力が急降下している——艦橋上層、装甲を抜かれた。

「減圧! 密閉、急げ! CIC、隔壁作動中!」

艦橋砲術副主任の蒼井惟人の耳に誰かの叫びが聞こえたが、通信系統もやられている。自動制御は部分的に機能しているが、艦内ネットワークの応答が薄い。


彼は崩れた端末から這い出し、補助制御卓に手を伸ばした。生きている。微かに、制御信号が残っている。


「副系統、ルーティングを切り替える……生き残りの火器モジュール、どこだ……」


表示がちらつきながら立ち上がる。レールガン照準ユニットの一部が反応している。艦尾側、かろうじて無傷だ。だが、レーザー兵装は——


「……冷却喪失。管制過熱。レーザー系は沈黙だな……」

声に出すと、現実として受け入れられた。


周囲には煙。火災警報の点滅。酸素濃度の低下も警告が出ている。

制御卓の裏で呻き声。技術兵のひとりが、額から血を流しながら私を見上げていた。


「照準系……リンク切れてます……惟人……」

「大丈夫、こっちで再接続する。生きてる火器は残ってる」


片手で彼を引き寄せ、安全フレームに預けると、私は自分の端末に再び向かった。

CICの空気は熱を帯びていて、まだ火がくすぶっている。


「艦尾ブロック、こちら艦橋補佐。火器制御、生きてる奴に切り替えろ。サブノード、こちらから繋ぎ直す」

「応答確認……ただし、主照準は全損。補助回線のみ有効」

「充分だ。マニュアルでも撃てる」


断続的な振動。艦体がかすかに傾く。推進系がまだ動いている証拠だ。

彼は膝で身体を支えながら、ホログラムの残骸から次の目標座標を手動で打ち込み始めた。


「ID 52、進入速度マッハ7強。レールガン射角——補正が間に合えば、まだいける」

蒼白になった砲術士の一人が言った。


「レーザーが生きてたら、止められたのに……」

「“もし”は無意味だ。使えるものを使う」


火花が飛び、床がまだ震えている。だが、手は止めなかった。

「艦橋制御、暫定引き継ぎ。こちら、蒼井惟人。現在、CIC生存メンバーによる再構成作業中」


誰が指示したわけでもない。だが、その声に応じて、周囲の隊員たちが立ち上がる。血と埃にまみれた顔、焦げた制服。だが、誰も下を向いていなかった。


——あの場所で命を落とした指揮官達の代わりに、だれかがこの艦を動かさなければ。

その問いに、


彼はただ手を動かしながら、こう答えていた。

「まだ沈んでいない。だから、まだ動ける」


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