表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン7
848/2470

第21章 メルトダウン危機

茨城県・東海第二原子力発電所


黎明の光が太平洋の水平線から滲み出す。

その上空を、黒い影が矢のように突き抜けてきた。


監視ドローンのカメラが捉えたのは、朝焼けに交じる異様な光景——都市ではなく、国家の心臓部を狙う弾頭の降下だった。

目標は街ではない。原子炉施設だった。


「——着弾まで三秒!」


管制室の通信士が喉を震わせる。

カウントダウンは赤い数字となり、液晶上で逆流するように減っていく。


「推定目標、タービン建屋! 原子炉圧力容器まで、およそ九十メートル!」


——一秒。


世界が閃光で反転した。


地響きが大地を突き上げ、地表がめくれ上がるように膨らむ。

遅れて轟音が襲いかかり、監視塔やフェンスが一瞬で軋んだ。

地震計は狂ったように振動を刻み、制御室のランプが一斉に赤を点滅させる。


「ID42、着弾確認! 被弾位置、タービン建屋北西角!」


乱れた映像が復帰し、外壁が吹き飛んだ建屋が画面に現れる。炎と黒煙が空を突き、センサーが次々と数値を吐き出した。


「爆発反応あり! 衝撃波レベル……二・八メガパスカル!」


「放射線モニタリング、異常なし! 核反応検出されず!——通常弾頭だ!」


安堵とも悲鳴ともつかない声が管制室の片隅で漏れた。

だが、その安堵は一瞬で奪われる。


「……待て。非常用変圧器二基、損傷。外部電源ライン遮断!」


「非常ディーゼル、応答なし!」


「タービン出力ゼロ!——全電源喪失の可能性!」


大型モニターに映る配電系統図から、赤ランプが雪崩のように灯り始める。

首都圏へ伸びる高圧送電線が、一つ、また一つとブラックアウトしていった。


サテライト映像には、東京の空から灯りが消えていく様が浮かび上がる。

夜明けの街に、波のように闇が押し寄せていた。


「……東京方面、大規模停電発生!」


「原子炉冷却系統、緊急電源に切り替え不能! ECCS作動遅延!」


指揮卓に立つ雨宮一尉の顔から血の気が引いていく。

核弾頭ではなかった。確かにそれは“幸運”だった。

だが、冷却を失った原子炉は、兵器と同じくらい致命的な“終わり”を呼び込む。


「——冷却が止まれば……もう、同じだ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ