第21章 メルトダウン危機
茨城県・東海第二原子力発電所
黎明の光が太平洋の水平線から滲み出す。
その上空を、黒い影が矢のように突き抜けてきた。
監視ドローンのカメラが捉えたのは、朝焼けに交じる異様な光景——都市ではなく、国家の心臓部を狙う弾頭の降下だった。
目標は街ではない。原子炉施設だった。
「——着弾まで三秒!」
管制室の通信士が喉を震わせる。
カウントダウンは赤い数字となり、液晶上で逆流するように減っていく。
「推定目標、タービン建屋! 原子炉圧力容器まで、およそ九十メートル!」
——一秒。
世界が閃光で反転した。
地響きが大地を突き上げ、地表がめくれ上がるように膨らむ。
遅れて轟音が襲いかかり、監視塔やフェンスが一瞬で軋んだ。
地震計は狂ったように振動を刻み、制御室のランプが一斉に赤を点滅させる。
「ID42、着弾確認! 被弾位置、タービン建屋北西角!」
乱れた映像が復帰し、外壁が吹き飛んだ建屋が画面に現れる。炎と黒煙が空を突き、センサーが次々と数値を吐き出した。
「爆発反応あり! 衝撃波レベル……二・八メガパスカル!」
「放射線モニタリング、異常なし! 核反応検出されず!——通常弾頭だ!」
安堵とも悲鳴ともつかない声が管制室の片隅で漏れた。
だが、その安堵は一瞬で奪われる。
「……待て。非常用変圧器二基、損傷。外部電源ライン遮断!」
「非常ディーゼル、応答なし!」
「タービン出力ゼロ!——全電源喪失の可能性!」
大型モニターに映る配電系統図から、赤ランプが雪崩のように灯り始める。
首都圏へ伸びる高圧送電線が、一つ、また一つとブラックアウトしていった。
サテライト映像には、東京の空から灯りが消えていく様が浮かび上がる。
夜明けの街に、波のように闇が押し寄せていた。
「……東京方面、大規模停電発生!」
「原子炉冷却系統、緊急電源に切り替え不能! ECCS作動遅延!」
指揮卓に立つ雨宮一尉の顔から血の気が引いていく。
核弾頭ではなかった。確かにそれは“幸運”だった。
だが、冷却を失った原子炉は、兵器と同じくらい致命的な“終わり”を呼び込む。
「——冷却が止まれば……もう、同じだ




