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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン7

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第5章 熱線の目覚め



午前4時43分(協定世界時19時43分)。


コロラド州シャイアンマウンテン・コンプレックス地下600メートル。

人工衛星監視管制室、通称“スペース・デッキ”では、冷却装置の低い唸り声と、端末の点滅する警告灯だけが静寂を破っていた。


「ヒート・シグネチャ検出。北緯40度57分、東経126度45分——慈江道上空」


シフト中の技術士官が、端末に表示された熱画像を凝視したまま、声を震わせた。

SBIRS-GEO 4号機が捉えたのは、北朝鮮・慈江道東部、複数の山間部地下サイロから同時に立ち上る異常高熱源。


それは、ロケット第一段の固体燃料ブースターが噴き上げる膨大な熱放射。

スペクトラム解析は、赤外帯域のピークがICBMのブースト段階と完全に一致していた。


「分類確定。ICBM発射。マルチポイント・ブースト確認。複数同時」


「なんだと……」


戦略空軍出身の解析責任者が立ち上がり、別のオペレーターに命じた。


「NORADへ即時連携。プロトコル『スカイハンマー』を発動」


SBIRSが捉えた衛星画像は、ミリ秒単位でNORAD本部の核防衛セクターに転送された。

ほぼ同時に、シャイアンマウンテン地下深部の戦略警報灯がDEFCON 1相当へと自動遷移した。


緊急通信ラインが開き、日米共同防衛の司令部群へ向けて、次々と暗号化されたアラートが打ち出される。


「横田、第5空軍司令部に回線開け」

「府中の航空総隊——統合任務中枢にBMD警報を直接投下」


——その頃、地球の裏側、日本列島でも沈黙は破られていた。


《第二場面:府中・航空自衛隊中央指揮所》


航空自衛隊・航空総隊司令部(東京都府中市)。

午前4時44分。


灰色のモニター群に囲まれたBMD(弾道ミサイル防衛)オペレーションルームに、電子音が突如走る。


「米側SBIRSよりICBM発射シグネチャ伝送。着弾予測計算中」


「北朝鮮慈江道より、同時に3地点から発射確認。ブースト段階、軌道補正中」


若い技術空曹が緊張の面持ちで報告する。

だが、すでに自衛隊のレーダー群は、次の動作に移っていた。


青森県・車力に配備された米陸軍TPY-2レーダーが、自動追尾に入り、

日本海側の防空レーダー、航空自衛隊のFPS-5(新潟)、FPS-7(千歳・浜松)が連携して照準を絞る。


「日本上空通過まで、推定480秒」


中央スクリーン上に、弾道軌道が東京湾・首都圏・中京工業地帯に向けて描かれる。

その赤い弧は、まるで死神が指差した未来のようだった。


「こんごう、あたご、即時交戦モードへ——照準ロック指示発令」


艦隊配備の自動通信ラインが起動し、

日本海に展開中のイージス艦「こんごう」、太平洋側の「あたご」が、それぞれ戦闘配置へ。


「SM-3発射管開放、VLS準備確認」


艦内のCIC(戦闘指揮所)では、迎撃ソフトが敵ミサイルの進行予測をリアルタイムで修正していた。


《第三場面:市ヶ谷・統合幕僚監部地下指揮室》


午前4時45分。


市ヶ谷防衛省・統合幕僚監部地下B2指揮室。

赤色回転灯が、艦艇指揮と航空部隊とのリンクを示すラインを照らす中、幕僚長の厳しい声が響いた。


「これは……同時多弾道弾。しかも初弾ではない」


「第二波を考慮しろ。撃ち漏らしは都市壊滅に直結する」


「PAC-3部隊、関東・中部・関西へ即時再配備。空自スクランブル発進確認。全国統合防空モードへ移行」


——もはや、探知の瞬間から、迎撃戦の幕は上がっていた。


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