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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン6

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第1章 発射カウントダウン 固定サイロ



■ 発射30分前(T-30:00)


「第2確認コード、受領」


通信士官が声を低く抑え、暗号信号をプリントアウトする。赤インクで印字された12桁の英数字。二人の当直士官が、独立した端末で同時に読み上げ、照合する。一致すれば——命令は「現実」となる。


「コード一致、確認」


「……これで、発射権限は完全移行した」


コンソールには、大きく赤いランプが点滅していた。“READY TO LAUNCH”。通常訓練では絶対に点灯しない、実戦時のみの表示だ。サイロ内部の油圧系統がかすかに唸り声を上げた。重量110トンの鋼鉄製ハッチに圧力がかかり、即時開放可能な状態へと移行する。センサーが、ハッチ上の芝生状偽装シートを剥ぎ取る準備を始めた。


地上では、外周警備部隊がすでに二重に配置されていた。迷彩服に身を包んだ兵士たちが赤外線スコープを構え、1km四方の森林と空を監視する。


「セクターB、異常なし」


「セクターE、ドローンによる追加監視投入」


静けさの中で聞こえるのは、冷却ファンと警備無線だけだった。


■ 発射5分前(T-05:00)


「最終システムチェック開始」


「誘導システム:緑」


「推進系統:緑」


「弾頭シーケンス:緑」


全てのパネルが“GO”を示した瞬間、室内の空気がさらに張り詰めた。二人の士官の足元には、赤と黒、二本のキーが差し込まれている。距離は約2メートル。片方が一人で二本を同時に回せないよう設計されていた。


「最終確認、残り5分」


「……これが中止される最後の機会だ」


誰かが呟いた。だが、ヘッドセット越しに聞こえてくるのは、冷たい司令部の声だけだった。


「全サイロ、カウントダウン継続」


外界では、ハッチがわずかに浮き上がり、開放準備を示す油圧音が夜空に響き始めていた。冷たい風が吹き込み、草木がざわめく。まるで、地面そのものが息を潜めているかのようだった。

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