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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン6

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第113章 霞ヶ関


首相官邸地下B1「国家安全保障会議 実務調整室」。


部屋の空気はすでに酸欠気味だった。


大型モニターには、サテライト通信を経由してホワイトハウス地下のシチュエーションルームが接続されている。

画面の向こう、ホワイトハウス地下。バイデン政権の国家安全保障担当補佐官、ジェイコブズが映し出される。


ジェイコブズ(NSC補佐官)

「日本側の判断は理解する。しかし、アメリカとしても懸念がある。核を搭載している大和の『存在自体』が中国とロシアを刺激している。」


首相秘書官が毅然と答える。

「承知している。だが、東京が標的になっている以上、『もう撃たれた後の世界』を想定せざるを得ない。我々はエスカレーションを防ぐ立場に立ちながらも、報復能力がゼロではないという姿勢もまた必要なのだ。」


防衛政策局長が苦渋に満ちた表情で語る。

「抑止の三条件、すなわち生存性、信頼性、明確性。その全てが日本には欠けている。唯一米国の拡大抑止に依存している我々が、先に撃つというカードは本質的に“反則”なんですよ。」


ジェイコブズが深く頷く。

「Exactly.


我々も先制核を選択肢から外した。だが、報復には全力を尽くす。問題は、『どうやって先に撃たせないか』だ。


北米局長が沈黙を破った。

「アメリカの信頼性を、ここで可視化できるかに尽きます。例えば、SSBN(戦略ミサイル原子力潜水艦)の東シナ海展開を公開する。あるいは、ストラトフォートレス(B-52)をグアムに向かわせ、マスコミに意図的にリークする……。」


首相秘書官がその先を見据える。

「本当に効くのは、撃たれても国家が倒れない姿勢だ。迎撃能力、インフラ分散、首都機能の予備化。『東京をやられても、この国は倒れない』というロジック。それを北が読み取れるかにかかっている。」


防衛政策局長は焦りを滲ませる。

「BMDは今夜、最大警戒レベルです。SM-3 Block IIA、PAC-3 MSE、THAADで三層構え。しかし、全て撃ち落としても東京の被害をゼロにするのは不可能です。だからこそ、迎撃だけでは足りないのです。」


ジェイコブズが最終的な戦略を提示する。

「だからこそ、併用する。Punishment(懲罰)とDenial(拒否)の二重設計だ。『撃っても意味がない』、そして『撃ったら終わりだ』。メッセージを三つに絞ろう。一つ、撃たれても倒れない(否認)。二つ、撃ったら終わる(懲罰)。三つ、出口は残してある(戦中抑止)。この三つだ。」


北米局長は決断を迫る。

「それを今日中に北に『伝える方法』が必要だ。直接か、間接か。いずれにせよ、時間はない。」


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