第102章 ALPHA STRIKE:国境を越えて
北朝鮮・慈江道北部山岳地帯(鴨緑江沿い、江界以北)
作戦室の空気が、張り詰めた。
「発射準備兆候、確定。ターゲット、サイト・デルタ13。」
スチールパネルに囲まれた統合指揮室、米インド太平洋軍の特殊作戦部(SOCPAC)のオペレーション・コーディネーター、マーティン中佐は、静かにヘッドセット越しに命令を確認する。
「レッド・ワン、出撃承認。空域ゼロ・ファイブはステルス制御下。電子妨害は‘Phase C’に移行」
壁面のモニターには、中朝国境を流れる鴨緑江に沿って点在する北朝鮮の固定式ミサイル射点が、山肌に半ば埋もれるように赤外線で映し出されていた。サイト・デルタ13はその中でもとりわけ強固な構造で、コンクリートと花崗岩で覆われた固定射点(サイロ模倣型)だ。ミサイルは火星18改と推定されていた。
上空、RQ-180 ステルス無人偵察機が既に標的上空10kmで待機中。搭載するLIDARと高感度赤外センサーが、サイロ上部の蓋の機械的膨張(=開放準備)を検出していた。
同時に進入しているのはF-35A(JSF)2機+F-22ラプター1機+B-21レイダー1機によるハイローミックス攻撃編成だ。さらに、山岳部にはすでにJSOC傘下のデルタフォース隊員6名が2日前に中国側から密かに越境潜入し、レーザー誘導ビーコンを設置済みだった。
F-35Aが搭載するSDB-II(GBU-53/B)が、滑空軌道から高精度で照準に入った。標的は2つ。一つはサイト・デルタ13の地中サイロ開閉機構。そして、もう一つはその裏手、地下指令所への進入ハッチ。指令所は通常、サイロから2〜5km離れているが、事前の信号傍受でここに司令官(副国家主席クラス)が常駐している可能性が極めて高いとCIAは推定していた。
B-21から投下されたのは、GBU-57A/B MOP(Massive Ordnance Penetrator)——地中貫通爆弾の怪物だ。重さ13.6トン、コンクリート6m超の地中構造を破壊可能。
爆発まで数秒。
「着弾!」
山腹の斜面が一瞬で消し飛んだ。MOPが直撃したのは、地下20mに達すると推定された司令室の換気シャフトだ。圧搾爆発が内圧を引き起こし、地下空間を崩落させる。わずかに遅れて、SDB-IIがサイロ蓋の油圧シリンダーを破壊した。開閉不能となったサイロは、煙だけを吐きながら爆発を起こさずに沈黙する。
「Strike成功。ビーコン確認、地上部隊潜入フェイズに移行」
デルタチームは、既に鴨緑江沿いに破壊したターゲットへ移動を開始していた。




