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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン6
723/2390

第38章 北京の決断

DAY11  20:00 CST

北京・人民大会堂 地下特別会議室


分厚い防音扉の向こう、長い机の上には朝鮮半島の作戦地図が広げられていた。


「――ソウルを奪還されました」


中央軍事委副主席が静かに言う。


「はい。市街戦は48時間で終結。北軍は組織的な抵抗が困難な状況です」


重い沈黙が会議室に満ちる。机の上に置かれた紙コップの湯気だけが、静かに揺れていた。


軍強硬派(人民解放軍参謀)が口を開く。「北の政権が崩壊すれば、米韓軍が鴨緑江に到達する。我々の東北は丸裸だ。鴨緑江の向こうにM1エイブラムスが並ぶ姿を想像してみろ。参戦を検討すべきだ」


外交部長が反論する。「しかし現在、中国は台湾正面で作戦中だ。主力を朝鮮に回せば、台湾作戦が崩壊する。米国はロシアとの衝突を覚悟でここまで踏み込んでいる。ここで直接軍を出せば、それは全面戦争だ」


政治局常務委員が厳しい視線を投げかける。「ではどうする?北が完全に崩壊すれば、国境に米軍が来るのだぞ。これは第二の1950年だ」


机の上に置かれた古い白黒写真が映し出された。仁川上陸後、鴨緑江を目前に進軍する米第一騎兵師団──その史実の光景だ。


国家主席は腕を組み、深く目を閉じていた。


「我々は、歴史を繰り返している。だが、1950年とは違う。我々は経済、情報、外交力を持っている。直接の軍事介入はしない。だが、国境に部隊を即時展開し、域内における我々の影響力を確固たるものにせよ。北の核技術者、そして指導部の中枢を保護し、速やかに国内へ移送するのだ」


会議室は再び沈黙した。


それは「北を助ける」のではなく、「北の遺産を確保する」という冷徹な決定だった。


壁の時計が静かに進む中、誰もが理解した。


この選択は、米韓による北全土制圧を黙認することを意味する。

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