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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン6
712/2412

第27章 陽炎二型

DAY10 13:20 JST

防衛省市ヶ谷庁舎 地下第3会議室「統合戦備状況総括会議」


防衛事務次官の言葉が、部屋に重く響いた。「米国防総省は、『空海優勢維持』の領域を出ない。今朝、サリバン補佐官経由で『地上部隊投入は検討外』との再確認を受けた」


国家安全保障局代理の報告に、部屋の空気が張り詰めた。「ホワイトハウスも『国連の承認なしには派兵できない』と。つまり、『アメリカ抜き』で東部台湾を維持できる実戦計画が求められている」


統合幕僚長・河島大将の声が、静かに、しかし決然と響いた。「よろしい、我々が用意していた『陽炎二型』防衛案を提案する」


画面には、台湾東半分の詳細な地図が投影され、各戦域には色分けされた指揮系統が表示されていた。


「この『陽炎二型』防衛戦略は、台湾東岸地域の『限定防衛』を現実的に達成することを目的とします。防衛対象は、台東市から花蓮市、蘇澳漁港一帯にかけての山岳地形を利用したものです」


河島は続ける。「敵は、西部を制圧した後、山脈を突破し、東岸に降下して補給港を確保することを予想しています。これに対し、陸上自衛隊は第1空挺団と西普連を主力として展開させます。海上自衛隊は、輸送艦『おおすみ型』『くにさき型』、護衛艦部隊を動員し、対艦・防空を担います。航空自衛隊は、F-35AとF-2によって東部の制空権を確保します」


「連携勢力としては、台湾陸軍第5軍団・空軍花蓮基地司令部と共同指揮所を設置し、想定継戦日数は14日から21日間。補給線は、那覇、与那国、花蓮沖を経由し、陸揚港湾を暫定拠点とします」


陸幕運用部長が簡潔に報告した。「空挺団は3個中隊が蘇澳側に展開済み。花蓮への上陸は明日夜以降。工兵は滑走路と地対空誘導陣地構築に備え中だ」


海幕運用部長が続いた。「護衛艦『いなづま』『くろべ』が第4水域で警戒中。054B型フリゲート複数が偵察範囲内に接近しています。米第7艦隊は『非介入』を言明済みで、中国艦との偶発事件に警戒するよう伝えてきています」


空幕運用部長が付け加えた。「嘉手納、築城発のF-35A部隊が花蓮から台東間の制空を確保中。F-15Jの支援が不足しており、稼働率は綱渡りです。燃料ドローン支援が急務となっています」


河島は語る。「問題は、敵が中央山脈を水平縦断し、我々の裏をかくことを企図した場合だ。我が方は『東岸には行かず』、山系で遮断し、後退線へ誘導する形とする」


防衛研究所特別補佐官が、地図を指しながら説明した。「地政学的には、台東から花蓮へのルートに加え、蘇澳の南北補給路が生命線になります。ここを『維持できるか』が防衛戦略の成否を分けます」


国家安保局代理人が決意を固めたように言った。「たとえ台北が陥落し、花蓮が孤立する形になっても、『台湾東岸の保持』が対中交渉における最後のカードとなる。その準備を、これから始めます」


統合幕僚長の言葉に、全員が声を揃えた。「『陽炎二型』作戦を、即時実施する」


「了承」

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