表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン6
711/2400

第26章 最初の鼓動


DAY9 15:23 JST

沖縄本島・那覇港臨時整備ドック《大和》艦内機関ブロック室C-2


再起動試験──それは、艦にとっての「鼓動」の確認だった。


機関室の中央、バンク状態に配置されたHGT-4100ガスタービン発電ユニットが、熱を帯びた空気をゆっくりと出力し始めた。


「タービン起動準備。ブレード解放、冷却系統流量良好」


技術1佐・三井敬介が手元の制御端末に目を凝らすと、隣の担当官が小さく声を上げる。


「プラズマ消磁ユニット、スタンバイ完了。KIKYO-Ω、自己診断グリーン」


鋼鉄の奥で、艦内中枢AI・KIKYO-Ωが微細な電磁波を放ち、全系統の初期化と連携を完了させた。メインディスプレイに、作戦の進捗を示すストラテジーが表示される。


【フェーズ1/導入開始】


HGT-4100 回転数:+000800……+012000……


PulseCapバンク:60%充填


EWARフィード:スタンバイ


内部グリッド:Δ=±0.05Hz(許容範囲内)


「……回ったな」


三井の口元が、ほとんど無意識にほころんだ。その瞬間、甲板の下で聞こえる低い共鳴が、整備員の靴底を伝って走る。


「俊一さん……見えますかね」


補機担当の雨宮2尉──かつて佐世保の整備工だった男の孫が、独り言のように呟いていた。


「これ、じいちゃんが作ってた旧砲塔の主軸リング、その加工ノウハウが、パワーノードの防振機構に活かされてるんです。AIの構造推論が、わざわざ再設計したって聞きました」


「聞いてますよ。あれ、いまでは『AMAMIYAスロット』って呼ばれてますから」


三井が微笑む。


「まさか、町工場の削り出し技術が、現代の戦艦に還ってくるとはな」


「戦艦じゃありませんよ、艦隊制御ノード搭載型です」


「おお、それは……長いな」


二人は笑った。


その後、レールガン主電力系統に、初めての起動シーケンスが走った。警告音は鳴らず、チャージラインの各ユニットが、順調に信号を受け続けている。



KIKYO-Ω裁定:稼働中


艦内照明がわずかに揺れる。


「……この感覚、血が通い始めたように感じます」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ