第13章 陸自連携
DAY8 07:05 JST
台湾・花蓮市郊外 第9防衛線(山岳防衛帯)作戦本部
「—花蓮空港の滑走路は、夜間の飽和攻撃で一部使用不可。敵UAV群が接近中。よって、早期警戒機の展開は現在も宜蘭空域に限定されている」陸上自衛隊・第1空挺団 2佐が簡潔に報告した。
ブリーフィングテント内には、先遣隊として既に上陸している陸上自衛隊員の迷彩服と、台湾陸軍のデジタルカモフラージュが混在し、異様な緊張感が漂っていた。地図は等高線と衛星写真を貼り合わせた即製の「共通作戦図」。山岳地帯特有の稜線や谷が複雑に記されている。
前に立つのは、台湾陸軍第10軍団・第5機械化歩兵旅団の林旅団長だ。
「敵機甲部隊は第二陣が成功嶺方面に上陸。第三陣は玉里を経て、花蓮へ広範囲な挟撃を狙っている。だが、ここ──花蓮西部の稜線は、我々が守っている。突破はさせない」
横に立つ第1空挺団長・加地陸将補が、既に台湾に展開している自衛隊員たちを見渡し、一歩前へ出た。
「12時より、第1空挺団の主力は第9防衛線中央区画に前進します。航空機降下は行わず、C-2輸送機からの物資投下後、陸路で進出します。主任務は、第2戦防線での縦深防御と電子偵察支援です」
会場の片隅、台湾陸軍の工兵中隊副官が無言で指示を出す。
「第一戦防線に接続した広域即製IEDフィールドを構築済みです。台北から搬入された多目的トリガー付き自動爆破装置が100セット、今朝方準備完了です。信管は日台でコード共有済みです」
「…我々の電磁妨害装置と干渉しないように調整が必要です。標準の92周波幅では衝突する可能性が高い」
「承知。台湾側は92帯を封鎖し、66帯で固定信号化に切り替えました。日本の94帯とはコンフリクトなしです」
緊張の中にも、ほんの少しの連携の芽が見えた瞬間だった。
テントの外では、上陸した陸自の96式装輪装甲車と台湾陸軍の雲豹(CM-32)装甲車がエンジンを回し、前線へ向けて分散移動していた。衛星通信を中継する高機動通信車が、仮設タワーに向けてアンテナを展開している。上空には、台湾空軍のF-CK-1「経国号」戦闘機が単機で通過し、東の空を旋回していた。