第7章 ソウル死闘(突入)
日時: DAY8 08:30 KST
韓国・ソウル特別市・漢江北岸
夜明けとともに、ソウルへ向かう米韓合同軍の進軍は、漢江に架かる橋の上で止まった。
「橋は爆破されている!迂回する!」
無線から緊迫した声が聞こえる。しかし、迂回は不可能だった。漢江は、ソウルを守る巨大な要塞と化していた。
「記者さんよ、ここから先は地獄だ。命の保証はない。それでも行くか?」
隣に座る米軍兵士が、ヘルメット越しに大友に問いかけた。大友の心臓は、激しく高鳴っていた。彼は、ここまでの道中で、すでに数多くの犠牲を見てきた。それでも、彼はこの目に焼き付けた真実を、世界に伝えなければならないという使命感に駆られていた。
「…行きます。お願いします」
大友は、震える手でカメラを握りしめた。その瞬間、彼を乗せたハンヴィーが、前方の車両に続いて漢江の岸辺へと降りていく。
大友、武装
「これを着ろ」
兵士が、大友にタクティカルベストと、M4カービンを差し出した。
「…私は、記者です。武器は…」
「この銃は、お前を守るためじゃない。お前が死んだ後、俺たちが誰かの助けを呼ぶためのものだ。いいから持て!」
大友は、その言葉の重みに打ちのめされながらも、言われた通りにベストを着用し、M4を握った。冷たい鉄の感触が、彼の心を冷やしていく。彼は、もはや一人の記者ではなかった。彼は、この戦場の一部と化していた。
漢江を渡るため、彼らは民間人の乗る船を徴用した。船は、北軍の砲撃と銃撃の中、なんとか漢江の北岸へとたどり着いた。
ソウルは、すでに廃墟と化していた。建物は黒く焼け焦げ、道路には戦車の残骸が横たわっている。静寂に包まれた街は、一瞬の安らぎの後、地獄の咆哮を上げた。
「ドォォォォン…!!」
ビルから放たれたRPGが、前方のハンヴィーに直撃し、車両は巨大な火球となって吹き飛んだ。
「伏せろ!ビルの中に敵の狙撃手だ!」
大友は反射的に地面に伏せ、M4を握りしめた。彼は、もはやカメラを構えることすらできなかった。彼の目の前で、仲間が次々と倒れていく。
この戦場から生きて還り、真実を伝えることができるのか。その答えは、誰にも分からなかった。