表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン5

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

683/2724

第69章 帰還 曳航線)


DAY7 +6時間後

水平線の東端に、微かな曙光が滲み始めていた。夜を越えた空気には、まだ硝煙と焼けた重油の匂いが混ざっていたが、遠く那覇の都市の輪郭からは、朝の湿気を含んだ土と植物の匂いが、確かに感じられた。


戦艦「大和」の艦橋、最上層。南條正義艦長は、指先にほんの少し湿り気を感じながら、前方に広がる艦首の甲板を見ていた。鋼鉄の肌は抉られ、爆風でめくれた装甲が幾層にも折り重なり、焼け焦げた塗装がまだら模様となっている。


「……よく、この船体でここまで来たものだな」


誰にともなく、南條はぽつりと呟いた。隣にいた副長・加瀬中佐は、黙って頷いたまま、その視線を前方の海面に向けていた。


大和の曳航隊列は、海上自衛隊艦隊によって意識的に構成されていた。先頭には、補給艦「とわだ」。全長167mの巨体が、大和の沈みかけた艦首を支えながら進む。両舷には、「おおすみ」と「あさぎり」が並走。広い吃水と通信中継を担っていた。後衛には、「いなづま」が護衛し、小型ドローン掃海艇が索敵を継続。艦橋右端のデジタルモニターに、曳航速度「4.2ノット」、制御距離「0.47km」の表示が静かに点灯していた。


艦内通信は必要最低限。無線は、戦闘海域の沈黙を引きずるように控えめだった。曳航索は、波に揺られながらもその役目を果たしていた。その振動は繊細に艦体に伝わり、艦底では、機関部の自動排水装置が断続的に稼働していた。


「この艦が——まだ、諦めたくない、と言ってるような気がするよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ