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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン5
681/2405

第67章 情報


DAY7 11:00 KST


最初の爆発から1時間半が経過した。大友は、韓国軍兵士たちが展開する道路封鎖地点の一角に、身を潜めていた。運転手は、危険を察知してすぐにジープで引き返していったが、大友は現場を離れることができなかった。この目で見た現実を、どうしても記録しなければならないという衝動に駆られていたのだ。


しかし、状況は彼の想像をはるかに超えていた。機関銃の連射音、断続的な爆発音、そして飛び交う怒号。彼はただ、手持ち無沙汰にリュックからスペクトラムアナライザを取り出し、無意識に電源を入れた。砂埃で汚れていたはずの機械は、なぜか正常に起動した。


アナライザの画面には、様々な周波数の信号が乱舞していた。韓国軍の無線通信、北軍の通信、そしてその中に、不自然なほど強力で、暗号化された信号が混じっていることに気づいた。


「この信号は…」


それは、韓国軍の通信とは明らかに異なるものだった。一定の周期で発信され、強力な電波で他の信号をかき消すかのように存在感を放っている。大友は、それが米軍の通信だと直感した。


大友が耳を澄ませると、近くの兵士たちが慌ただしく動き回っているのが見えた。彼らは、何か特定の場所を指差して無線で報告している。しかし、その通信内容は、彼がアナライザで捉えている強力な信号とは直接繋がっていないようだった。


その時、一人の米軍兵士が、韓国軍の指揮官の元に駆け寄ってきた。彼は、片手に持つタブレット端末を指し示し、韓国語と英語を交えて何かを伝えている。


「すぐに、東南部の部隊に移動を!」

「座標は…北緯37度、東経127度…!」


大友は、その会話を耳で捉えながら、アナライザの画面に注目した。すると、米軍兵士がタブレットを操作するたびに、強力な信号のパターンがわずかに変化していることに気づいた。


「これは…」


彼らは、韓国軍の通信を直接利用しているのではなく、独自の通信ネットワークを構築し、それを介して韓国軍を指揮しているようだった。



さらに分析を進めると、強力な通信信号の中に、いくつかの単語が断片的に含まれていることに気づいた。「ファイアベース」「ブリーチ」「アサルト」。軍事用語に詳しくない大友でも、それが攻撃的な意味を持つ言葉だと理解できた。


彼の脳内で、点と点が繋がっていく。

韓国軍は、ただの防衛戦ではなく、米軍の指揮下で、何らかの大規模な作戦に組み込まれているのだ。


東豆川は、単なる最前線ではなく、米軍が反攻作戦を開始するための重要な拠点。そして、大友が目撃しているこの混乱は、その作戦の前哨戦に過ぎないのかもしれない。


大友は、背筋が凍るような感覚に襲われた。彼は、単なる局地的な紛争の取材に来たと思っていた。しかし、現実は、もっと大きく、恐ろしいものの片鱗だった。彼の目に映る全ての光景が、その事実を物語っていた。そして、この場所から離れなければならないという本能的な危機感と、このまま真実を追いたいという記者の使命感が、彼の心の中で激しく衝突していた。

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