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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン5

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677/2673

第63章 日本の核保有疑惑


DAY6+23:45

米国・ワシントンD.C./ホワイトハウス地下・国家安全保障会議室(SITROOM)


大統領補佐官マッケナが、最新の電子戦速報をスクリーンに投影すると、重苦しい空気が支配した。

「――当該事象は、対馬沖200キロ西の日本海。数日前、海底で大規模な水中爆発が確認されたものです。複数の衛星が核分裂由来と見られるガンマ線異常を検知。各国がすでに緊急観測態勢に移行しています」


静寂を破ったのは、NSAから派遣された戦略分析官だった。

「爆心の解析結果、通常の爆雷・魚雷・小型核とは異なるパターン。熱中性子束の分布から見て、指向性のある核爆発兵器が使用された可能性が高い。現場はすでに通信沈黙帯にあり、現地確認は困難です」

大統領が視線を送った先には、制服組の中でも異例の若さで登用された太平洋艦隊作戦幕僚、マクレガー海軍中将がいた。


「被害艦は、……当該海域に進出していた『ロナルド・レーガン』。そして、海自潜水艦『そうりゅう』です。両艦ともに沈没が確定。通信記録は直前で途絶しています」

「これは……相打ちか?我々が、我々自身の艦を核で沈めたというのか?」

マッケナは目を伏せ、ゆっくりと答えた。


「いえ、現時点では『意図的な核使用』かどうかの断定は困難です。ただし、敵対行為の記録と核使用の時間的近接性から見て、“核魚雷による相互撃沈”の可能性がもっとも高い」

国家安全保障局(NSC)の法務顧問が口を挟む。


「……仮に『そうりゅう』側が先に撃ったなら、国際法上の正当性の根拠はあるか?」

「――先に攻撃を受けたならば、海域防衛の一環として使用可能なケースもある。そもそも、我が国が反乱をおこした可能性のあるロナルドレーガンの停船依頼を海自側に出したわけですから。ただし、核であることが証明されれば、政治的反発は不可避です」


マッケナは、スクリーンに映された赤黒い放射線分布図を見つめた。

「幸いにも、この情報はまだ外部に漏れていない。中国もロシアも、公式にはこの爆発を“非核兵器由来の事故”として扱っています。世界は……まだ“知らない”のです」


だが、その背後にはもうひとつの“事実”が隠されていた。

「……ひとつ、問題があります」

NSA主任が声を潜めた。

「問題は核爆発は1回ではなかったという事実です」

室内が硬直した

「それはどういう意味だ」

「微妙な時間差で2回核爆発が記録されています。あまりに微妙で、この事実を把握しているんは、日本海に海底センサーを設置している日米両国だけだと考えられます」


「つまり、ロナルドレーガンだけでなく、そうりゅう側も核兵器を搭載していたということか」

「今回の事件は、我々は、1年前の海自の複数艦艇とロナルドレーガンがタイムスリップと今回の事件に深いつながりがあると考えています」


室内の空気が変わる。

「その事実はは、世界は当然、アメリカ、日本双方の議会にも秘匿されてる。」

沈黙の中で、別の高官が低く続けた。

「2015年にタイムスリップした『ロナルド・レーガン』は、80年前の沖縄沖で海自潜水艦『そうりゅう』に核魚雷で恫喝され、結果的に降伏。80年前の過去の沖縄近海に“封鎖”された状態で存在しています」


「2025年と2026年、日本政府はその沖縄沖で、2度にわたり極秘の“兵器回収作業”を実施しています。詳細は明らかではありませんが、旧レーガン艦内に何らかの“非公式核物質”または“時空特異兵器”が存在していた可能性があります」


再び沈黙。そこへ、CIA副長官が重い口を開いた。

「――そして、今回の2回の核爆発の性質から導き出された熱中性子と生成核種の構成比、起爆反応時間と残留放射性同位体の比率……」


彼は、ホログラム映像を指差した。

「これは、ロシア製でも中国製でもない。唯一、過去に観測された類似パターンがある。それは……2026年3月、沖縄沖で極秘回収された“旧レーガン艦内の弾頭”から抽出された分析データです」


マッケナが息を呑んだ。

「つまり……これは日本の手に渡っていた核兵器の残滓――」

「我々は、日本が“核を保有していた”などと正式に認めるわけにはいかない。ただし、現象的事実として……これは、“日本以外にはあり得ない”爆発反応です」


大統領はしばし沈黙した後、静かに言った。

「……事実として認めるか否かは、政治の領分だ。だが、我々は今、世界の均衡の本質を見せつけられている」


――この瞬間、アメリカは知った。

公式な条約上の「非核保有国」である日本が、極秘裏に、しかも“別の時代から流入した兵器”を起源とする形で、核戦力に到達していたという現実を。

だが、それを知らぬまま動く世界の歯車は、すでに音を立てて加速を始めていた。



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