表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン5
672/2364

第58章 赤十字の旗の下で



DAY5  +12時間  

台湾東方海域


中国の水中ドローンによるEMP攻撃で「大和」が完全に無力化された後、艦橋は沈黙に包まれていた。外部との通信は途絶し、無人兵器の運用能力も失われた。大和は、ただ潮の流れに任せて漂流する巨大な鉄の棺と化していた。


その頃、台湾東方海域には、海中を静かに滑る別のドローンが存在していた。


それは、中国の「雷鯨」でも、日本の「MNV-5R改」でもない。


機体に記されているのは、真紅の十字架。


国際赤十字社(ICRC)のドローンだった。


このドローンは、国連安保理での「人道回廊」設立決議が失敗した後、ICRCが独自に現地の人道状況を確認するために派遣した、小型の自律型観測機だった。


「この海域に、日本の再就役艦『大和』がいます。至急、接近し、状況を確認してください」


ジュネーブの本部から、ICRCのAI管制システムに指令が送られる。


この指令は、単なる人道的な任務だけではなかった。


ICRCは、このドローンが日本と中国の間で起きている「見えない戦争」の証拠を捉え、国際社会に提示する可能性があることを理解していた。


そして、もう一つの目的があった。


「赤十字」のドローンが、日本の艦船に接近し、その存在を中国側に知らしめること。


もし中国がこのドローンを攻撃すれば、国際社会からの猛烈な非難に直面する。そして、もし攻撃しなければ、「大和」は、赤十字の旗を掲げたドローンに守られる形となり、中国はそれ以上の攻撃を続けることが難しくなる。


「大和」は、EMP攻撃で沈黙させられた。


しかし、その沈黙は、今、別の形で利用されようとしていた。


赤十字のドローンは、無力化された「大和」に静かに接近していく。その小さな影が、中国の監視システムに捉えられた時、この海の戦争は、新たな局面に突入する。


それは、単なる軍事行動ではない。国際法と人道の盾を巡る、静かなる防衛戦であった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ