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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン5
671/2364

第57章 火線を越えて


DAY5+16時間

台湾東方135km・曳航中の大和護衛戦域


「接近距離、残り1,800!」


ミサイル艇「しらたか」の艦橋に、警報が鳴り響いていた。


「第3波、確認!機数18、内8機が超低空。残りは高度120m前後を直進中!」


CIWSオペレーターの声が張り詰めている。光学センサーには、海面ぎりぎりを疾走するステルス自爆ドローン群が映っていた。


「来たな……あれは完全に自律型AI機体だ。電波誘導はない。こっちを目で見て襲ってくるぞ!」


鷹野3等海佐(「うみたか」艦長)は、火器自動制御から手動照準への切り替えを即断した。



「うみたか、主砲、前方照準角60度。追尾軌道を0.2秒ごとに補正しろ! しらたか、CIWSレーザー、水平90度に注力して射撃。あの海面組を落とせ!」


――バンッ! バンッ! バンッ!


76mm砲が怒涛のように火を吹き、レーダー連動CIWSが精密照射レーザーで前方を薙ぎ払う。海面に黒い閃光が走り、爆発のキノコ雲が立つ。


「撃墜確認、5機——だが残り、まだ接近!」


「ここに来る!接触まで15秒!」



その時だった。低空で回避行動をとった1機が、レーザーの射線を外れて急上昇、次の瞬間――


「右舷甲板、被弾ッ!!」


衝撃が「しらたか」を斜めに揺らす。


「右舷第2区画、装甲に損傷! 外板変形。副燃料タンクからの軽度漏洩あり! CIWS2番機、破損!」


白煙が右舷後方から上がる。


「火災は無し!応急措置班、消火弾頭確認に向かいます!」


艦橋内の乗員は歯を食いしばる。あと1発抜けていれば、このクラスの艇は沈んでいた。まさにギリギリだった。



その直後、曳航中の補給艦「摩周」から、混乱を突いた短波通信が届く。


「こちら摩周。曳航速度を10ノットに維持。大和は警備不能、完全曳航状態。敵ドローン群はすべて沈黙。今のところ追加の波は確認されていない」


「分かりました。こちら、うみたか。しらたかが右舷損傷。現在も航行可能です。防空確保を維持して再展開する」


鷹野の声は落ち着いていたが、手の甲には汗がにじんでいた。


「南東側、残骸漂流。まだ終わってねえ。やるぞ、最後まで――大和はまだ動いてる」


そのころ、大和艦内では……。船底のUUVハッチを破壊され、応急区画では浸水対策班と電源復旧班が交錯していた。


上空の砲声が聞こえなくなるほど、艦内は静かに、しかし緊迫していた。


副砲管制士・長谷川3曹がぼそりと呟いた。


「……護ってもらっているのか、俺たちが護られているのか。わからなくなるな」

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