第55章 空と海の交錯
DAY5+16時間
与那国東方海域・南方130km
ミサイル艇「うみたか」は、石垣港を出港して30分が経っていた。艦長・鷹野3等海佐は、艦橋で双眼鏡を手にしている。
「通信、まだ封鎖中か?」
「はい。摩周からのAIS(自動識別信号)は生きてますが、主系の防衛回線は完全ブラックアウトです。大和も沈黙。これは空域ジャミングを受けている可能性が高いです」
隣で副長が画面を睨みながら報告する。今、この周辺の無線通信帯域はすべて「濁って」いた。
「鷹野艦長、確認しますが、我々の任務は石垣方面の警戒支援です。『大和』への直接護衛は、上級部隊の指示なしでは――」
「……言いたいことは分かる」
鷹野は言葉を遮るように、電子光学センサーの赤外線探知画面を指差した。
「だがこれを見ろ。『あの熱源』は何だ? 上空100mを横切って近づいている『群体』がいる」
画面には、高度70〜110mに点在する小型ドローン群。その軌道は、曳航中の「摩周」へ直進していた。
「これは……空中からの**飽和自爆型ドローン攻撃(SFW式)**だ」
副長が呻くように言った。
「目標は摩周か大和。どうせなら、味方艦艇の直上で炸裂させるだろう。行くぞ」
鷹野はハンドセットを取り、僚艦の「しらたか」へ向けて無線を入れる。
「全速、北北西へ転針。艦砲即応体制。対空レーダー出力をフルに、指向性ジャマーを使え」
「摩周と大和に、今……火の雨が降ろうとしてる」
両艦は、頭を切り裂くように急進する。高速艇としての最大出力、**フルスロットル35ノット(約65km/h)**を維持した。
「来るぞ、上空にステルスドローン、推定16機。赤外線ステルス処理済み、非従来型シルエット」
「うみたか、しらたか、CIWSレーザー起動。主砲発射管制に切り替える!」
交戦開始:空中自爆ドローン迎撃
摩周の上空に迫ったドローン群から、一つが機体を傾け、金属製の自爆弾カバーを露出させた。
「センサー、レーザー照射可能距離――60m、入ります!」
「撃て!」
うみたかの76mm速射砲が火を吹き、迎撃プログラムに基づいて数発を放つ。直後、上空で黒煙が広がり、ドローンの機体が空中で「裂ける」ように炸裂した。
「一機撃破!でも、まだ来る……!」
遠方に「摩周」と「大和」が視界に入る。遠方の大和は、右舷後方が損傷したまま曳航され、甲板に作業員の姿がうごめいていた。
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