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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン5
653/2311

第39章 那覇沖再び異変

DAY4 +6時間

― NNN報道局・現地支局レポートより

DAY5・午後1時20分 NNN報道局 沖縄支局 特設中継ブース

「……リグの全景、固定カメラから入った。スチール回ってる?」


「回ってる。ここからは遠景中心。映像処理で圧縮する。船名と登録番号はモザイク必須」


東京・汐留の報道フロアから、報道デスクの速水が指示を飛ばす。沖縄支局の中継デスクにいるベテラン記者・島田は小さく舌打ちした。


「モザイクって……あれ、民間登録外だぞ。港湾局のリストにも載ってない。いくら防衛省絡みとはいえ、あのリグは“海上無登録”だ」


「じゃあ余計にアウトだ。映せるわけないだろ」


「官邸報道室から連絡が来てる。『映像使用は自主的判断を含めて抑制』。要は『報道規制』じゃなくて、『慎重』という言葉で潰せってやつだ」


「またそれかよ……」


島田は受話器を置くと、現地カメラ班の浅尾に向けて無線を入れた。


「浅尾、ドローン飛ばすな。航行制限区域に接触したら即アウトだ。それに、周囲の警戒船、海保じゃなくて『防衛装備庁技術研究本部』名義だってさ」


「自衛隊じゃなくて技本……? 民間船で偽装ってことか?」


「たぶんな。潜ってるのは潜水士じゃない。『研究班』って名乗ってたが、どう見ても軍用潜水作業装備だ。ヘルメットも国内製じゃない。あれは西部製だ」


その時、匿名の情報提供者から電話が入った。電話口の声は押し殺されていたが、内容は決定的だった。


「あれは、“リグ”じゃない。海底から、米軍が1950年代に廃棄した『何か』を回収している。自衛隊じゃなくて、アメリカの『退役軍事回収チーム』が入っている。日本側は協力しているが、主導権は米側だ」


「何を回収しているんだ?」


「……核関連。形式上は旧式潜水弾頭の『放射線調査』という建前らしい。だが実際は、なにかを秘匿している」



取材班の視線が一点に集中した。モニターの中、リグの下に影が動いている。ドローンの一台が、まるで水面下に吸い込まれるように消えた。


「……誰か、俺たちに取材させてくれよ。本当に民主国家か?」


島田が無駄に呟くと、速水の声が無線から返ってきた。


「報道の自由は、政府と視聴率の両方に守られている。ギリギリまで攻める。だが、一歩でも踏み越えたら――潰されるぞ。わかってるな」


沈黙の後、島田が静かに応じた。


「わかってますよ。ええ。だから、やるんです」

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