第21章 「戦場の心音」
DAY! +16時間
野間が石垣島に上陸してのすぐの出来事だった。空は曇天しかし、その上空――太陽を背にする角度に、わずかに揺らぐ光の「ねじれ」が生じた、その次の瞬間。
「接近、警戒距離突破!数6、低空・高速!」
警報が怒号のようにテント内に響いた。
野間が外へ飛び出した、その瞬間だった。空気が弾けた。
――ズガンッ!
高空から降下してきた固定翼ドローンが、精密誘導された弾頭を車両整備エリアの補給車両に命中させた。爆発で飛び散った部品の破片が、10メートル離れた野戦テント病院の天幕を引き裂く。
「伏せろ!」
三浦一佐が野間を突き飛ばすように遮蔽ブロックの裏に引き込んだ。直後、第二波の爆撃ドローンが降下し、今度は電源車を直撃する。
「……こいつら、補給ラインを狙ってる! CIWSが反応してないぞ!」
「EMPチャフを混ぜてきやがったな、やられた!」
CIWS改良型の砲塔はジャミングによって方向を定められず、空転している。地上部隊は手動照準の銃と、陸自の91式携帯地対空誘導弾で応戦を開始した。
「第3斜面に隠れていた小型歩行型も出た!敵自律型だ、地雷原に入ってるぞ!」
熱線センサーと慣性ナビで行動する四足ドローンが、地形に溶け込むように草原を駆け、通信ケーブルとセンサーアレイを断線しながら突進してくる。
「やれ!91式、撃てッ!!」
火柱が立ち、撃墜されたドローンが尾翼から地面に激突。爆発で地面が抉られ、泥と血が混じった雨のように降り注ぐ。
野間は頭を抱えながらも、無意識に録音と撮影を開始していた。
「第二分隊、反撃!南斜面の左から回れ!赤外センサーブラインド中に制圧しろ!」
「衛生!衛生!四肢欠損だ、塚本三尉がやられた!」
「駄目だ……意識消失。脈、なし……っ!」
通信の断片と断末魔、油と鉄と焦げた血の匂いが混ざり合った現場。
野間は叫ぶこともできず、ただ必死に遮蔽物の裏に身を縮めるしかなかった。
視界の隅、戦死した兵士の腕が、地雷除去装置のリモコンを握りしめたまま転がっていた。