第2章 1945年の沖縄 消滅する空母
1945年8月、沖縄沖合。 終戦の報が届く数週間前、日本の極秘部隊によって、米軍が気づかない範囲で、レーガンからさまざまな装置や兵器が回収されていた。これは、日本が独自の核開発技術を確立するための、最後の希望だった。
終戦から数週間目のある日の午後、沖縄沖合に、微かな変化が起きていた。 レーガンの艦体は、まるでかげろうのように、ゆっくりと揺らぎ始めた。
空気がねじ曲がり、光が歪む。それは、かつてレーガンの乗員であった者たちが開発した、時空の歪みを生じさせる技術の兆候だった。
艦体の表面に、虹色に輝く波紋が広がり始めた。まるで、油膜が水面に広がるように、その波紋は、次第に巨大な渦へと姿を変える。渦の中心は、見る者の視線を吸い込むかのように、黒く、深い。それは、空間の特異点——ワームホールだ。
ワームホールは、次第に巨大化し、レーガンの艦体を覆い尽くそうとする。周囲の海水が、渦に巻き込まれ、激しい潮目を形成する。だが、その渦から、音は聞こえてこなかった。ただ、空間が引き裂かれるような、不気味な静寂だけが、その場を満たしていた。
そして、レーガンは、音もなく、その巨大なワームホールへと吸い込まれていった。まるで、最初からそこに存在しなかったかのように、虚空へと消えていったのだ。
ワームホールが収束する際、それは強烈なエネルギーを放出し、周囲の海水を蒸発させた。そのエネルギー波は、遠く離れた沖縄本島にも届き、微弱な揺れとして観測された。しかし、米軍は、それを終戦後の混乱による、何らかの軍事行動の余波だと判断し、深く追求することはなかった。
【2026年8月・日本海】
その消滅のタイミングは、2026年8月、日本海で「そうりゅう」と「ロナルド・レーガン」が最後の決戦を行い、双方が核魚雷のエネルギーによって時空の歪みを生じさせ、沈没した日と正確に同期していた。
その後、沖縄沖合では、レーガンの残骸が係留されていたはずの場所から、何も発見されなかった。まるで、最初からそこに存在しなかったかのように、レーガンは、歴史の表舞台から、完全に姿を消した。
しかし、1945年の沖縄からロナルドレーガンが消滅した瞬間、日本の極秘部隊によって持ち出された未来の技術が、パラレルワールドの日本の戦後の歴史を大きくかえることになる