第106章 ロナルドレーガン帰還
大友は、グレイヴスから託されたUSBメモリの中身を野間に見せながら、今回の爆発は核兵器によるものではない、と確信した。
USBメモリには、ロナルドレーガンで行われていた人体と時空の感応実験の解析データも含まれており、それが日本海で観測された光と爆発が、核爆発の波形とは異なり、時空の歪みを示す兆候がある可能性を補強していた。
「これは、『Ω計画』で予測されていた事態と酷似しています。特定の条件下で、空間を一時的に歪ませることで、物質を別の座標へ強制的に転移させる……」
大友の言葉に、野間は息を呑んだ。
「つまり、レーガンは、核爆発で沈んだのではなく、この『空間の歪み』に巻き込まれ、消滅した可能性があると?」映し出されているのは、日本海で観測された、閃光と爆発のデータ。しかし、それは核爆発の波形とは、まるで違っていた。
大友は、無言で頷いた。
「おそらく、グレイヴス艦長は、この『空間の歪み』を利用して、艦をどこか別の場所へ転移させようとしたのだろう。だが、計画の成否は不明。ただ実施にロナルドレーガンが『消滅』したということは、転移の過程で何らかのエラーが起きたのかも」
「では、彼らはどこへ……」
野間の問いに、大友は静かに首を振った。
「それが、分からない。空間の歪みは、特定の座標への転移を目的としたものだ。しかし、転移先が記録されていない。あるいは、転移先が、日本海ではない、別の場所なのかもしれない」
その時、大和の艦橋で、先進レーがシステムの尾ペレション技官がかけこんできた。新たなデータ解析がでました。
「日本海での空間異常を検知したときの大和の疑似レーダシステムノデータ解析結果です……」
三人はモニターに映し出された波形を、静かに見つめていた。それは、大和に搭載された、時空の歪みの兆候を検知することができる、先進的なレーダーシステムが捉えたデータだった。
「……やはり、そうか」
野間は、大友と顔を見合わせた。
野間はすぐに大和艦長と連絡をとった。
第三者が見つける前に、我々でみつける必要がある
「大和」の存在と、日本海での謎の爆発。そして、ロナルド・レーガンが消えたという事実。過去と未来、そして二つの正義が交錯する物語は、新たな局面を迎えようとしていた。