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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン4
605/2364

第97章 非常潜航モード


すぐに第2撃がきた。もはやお互いにステルス行動は意味をなさない。激しい格闘戦への移行


 そうりゅう艦内に激しく響くのは、減速したスクリューが海水を掻く一定の律動と、鋼鉄船殻を押し潰すように包み込む海の圧力音だ。

 「魚雷二、追尾コース維持、距離八百ヤード——減速なし」


 村上艦長はコンソールの深度・速度計を一瞥した。

 深度201、船速10ノット 艦首下げ角:30。

 まだ余裕がある。

 「操舵、艦首下げ角マイナス40度。非常潜航モードに移行せよ。機関、最大出力」

 非常潜航とは、文字通り潜水艦が緊急時に最大深度まで一気に潜るモードだ。

 「構造監視班、限界深度計算を随時更新」

 「了解」

 そうりゅう型の設計最大運用深度は約300メートル。だが、艦長席の後ろにだけ置かれた「設計上の理論圧壊深度」は約600メートルだ。


 音響戦開始。

 「来るぞ——敵魚雷、アクティブパルスに切り替えた」

 ソナー表示に、マーク54の近距離モード特有の高周波パルスが映る。


 村上艦長は即座に命令を重ねた。

 「後部曳航デコイ、指向性で強い反射音を返せ!」

 曳航デコイは、母艦の音響による虚像を生成しはじめた


 限界領域への突入。

 「深度二八〇……二九〇……」

 艦内照明が警告色に変わる。船体外殻を押し潰す水圧は約3MPa、人間なら一瞬で肉も骨も押し潰される重さだ。

 艦体は複数の円筒断面を縦方向に連結した特殊構造だが圧壊深度に近づいている。

 「艦首、わずかに水平——維持せよ。これ以上は沈効率をあげるな。圧壊するぞ」

 村上の声が響く。


  数秒後、ソナーの高周波パルスが急に雑音まみれになり、途切れた。


  「対潜魚雷 追尾回避」


艦長が間髪おかずに発令する


 「急速反転——艦首上げ角プラス十五度」

 スクリューが一旦逆推進力を発生させ、ダイブを停止させると同時に、潜舵角度を変更、艦首を上向き転じる。深海の暗闇から「そうりゅう」は再び海面方向にむけて浮上を開始した


 同時刻、ロナルド・レーガン艦橋。

 「……一度は逃した。だが、あれだけ深く潜れば、船体耐久力は限界だ。再交戦の機会はまだある」

 

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