第83章 宮古島防衛戦 — 空自F-15視点
宮古島南東沖合 上空2万6千フィート
朝の海はまだ青白く、雲は一時的に散っていた。F-15J第204飛行隊、2番機席。AWACSからの指示でCAP(戦闘空中警戒)を実施中だ。視程は良好、水平線の向こうに巨大な灰色の艦影がかすんで見える——戦艦「大和」。
無線が早口になる。「全機注意、低空で高速接近物多数。大和、パルスレーザー射撃開始」
ヘルメット越しのHUDには、目標情報が赤い菱形でポップアップする。機体をわずかにバンクさせて下方を見ると、海上に走る蒼白い光——直線的な閃光が空気を裂き、その先で小さな火花が咲いたように神風型ドローンが消えていく。煙の帯と海面の白い衝撃痕が残るだけ。レーザーの閃光は無音だ。だが数秒遅れて、爆ぜるような破裂音がヘッドセットの環境マイクにかすかに届く。
大和のレーザーが冷えると、視界の南西に黒い線列が現れる。AWACSから識別:「中国海軍護衛艦二、揚陸艦四、補給艦一」。ここからは海面反射で艦影が揺らいで見える距離だが、大和のAESAレーダーは正確に捉えているようだ。
「副砲レールガン、第一射」
下方で白い閃光が瞬き、その直後、海面に一直線の白い筋が走る。数秒後、護衛艦一隻が艦橋付近から炎を吹き上げ、動きを止めた。第二射では二番艦が艦尾から黒煙を噴き、包囲網が目に見えて広がっていく。
大和の艦尾から、黒い点が直線的に南西へ——監視ドローンだ。ヘルメットディスプレイに、共有映像が割り込んでくる。砂州に造られた橋頭堡、弾薬パレット、燃料バルーン、掩体壕内の火砲……正確な情報が即座に送信され、目標マークが赤く確定する。
「主砲、撃て」
下方で三つの砲口が白炎を吐く。発射の衝撃が雲層を揺らし、上空の我々の機体全体を微かに震わせた。弾道は見えない——だが数十秒後、ドローン映像の中の橋頭堡が閃光に包まれ、黒赤の火柱が立つ。
揚陸艦群は減速し、衝突を避けるように旋回を繰り返している。隊形は混乱し、上陸は成立しないだろう。