第79章 レールの雷鳴
「命中!護衛艦一、沈没……いや、推進系統停止!」
情報官の報告がCIC(戦闘情報センター)の緊張を裂く。即時、スクリーンの赤外線映像に、敵護衛艦の艦橋下部から白煙と油混じりの炎が立ち昇り、黒い海面に反射して揺らめいた。
徹甲弾はマッハ7、音速の7倍で飛翔し、厚い外板を突き抜けた瞬間、その中心的な運動エネルギーを内部構造に叩き込んだ。艦内で爆発し、装甲板の裏側が剥離して飛散、指揮中枢と主砲弾薬庫の間を走るケーブル・配管束を瞬時で切断した。
「二番砲塔、目標変更——機関部!」
雨宮艦長の声が短く鋭く響く。
「メイン容量、再チャージ開始!」
砲術長の指令がレールガン管制室に届く。巨大なコンデンサバンク群が低周波の叫びを上げ、艦内の床板を震わせた。蓄電中、艦の電力系統は瞬間的に優先配分を切り替え、照明の一部がわずかに落ちる。艦橋後部の電力管理盤では、技術員が送電ルートの負荷計を注視し、限界線を超えないよう微調整を続けた。
「チャージ率82%……87%……92%……発射準備、最終確認!」
管制員の声に、砲塔内の自動装填機が唸り、第二弾の徹甲弾をレールの発射位置に固定する。砲尾側で安全ロックが閉じ、弾体周囲に高密度ガスが瞬時に満たされ、真空に近い発射チャンバーが形成された。
「弾体、装填完了!コンデンサ100%チャージ!」
パネル上の緑ランプが点灯し、管制員が声を上げる。
「副砲——撃て!」
雨宮の指令が届くと、レールの間に膨大な電流が流れ込む。瞬間、砲塔全体が耳をつんざく金属音と衝撃に包まれた。電磁力が弾体を加速し、わずか0.07秒でマッハ7に到達。射出口から発せられた圧縮衝撃波が水面を叩き、広がる水煙の筋が艦首から一直線に延びる。
CICの臨時表示では、第二弾は海面すれすれの弾道を描きながら敵護衛艦二に向かう。赤外線画像には、その艦後部の上部構造が迫り、次の瞬間、弾体が艦尾左舷側から突入——装甲を貫いた一瞬後、主戦闘室で炸裂した。衝撃波が機関部を薙ぎ払い、タービンの軸受を吹き飛ばす。推進シャフトがねじれ、回転が一瞬で止まった。
「護衛艦二、推進停止!針路維持不能!」
情報士官が叫ぶ。外部映像では、敵艦の艦橋で慌ただしく信号旗が振られ、消火班が後部甲板に殺到している。しかし艦は惰性でわずかに進むだけで、隊形は崩れ、揚陸艦群の防御網にぽっかりと穴が空いた。
「——護衛艦全滅。揚陸艦、裸だ。次の獲物に移る」