第69章 迎撃網、稼働
日本海・イージス艦「みょうこう」/関東各地・PAC-3部隊
日本海・北西水域。CIC内、SPY-1Dレーダーの探知音が鋭く跳ねた。「弾道上昇フェーズ確認——三基、いや四基だ!」オペレーターの声が震える。弾頭種別は依然不明。しかし、軌道計算では関東圏、首都直撃の可能性が消えない。
艦長の視線は、赤く点滅するトラックシンボルを貫くように追った。「SM-3、射撃シーケンス開始——インターロック解除」火器管制席で短い確認応答が返り、VLS(垂直発射システム)のハッチが油圧音を響かせて開く。
発射まで、残り三七秒。
東京湾岸・市川駐屯地。PAC-3 MSEの発射レールが、夜空を仰ぐ。隊長の声がインカムに低く響いた。「リンク16更新……予測落下まで一二五秒。照準——固定」彼の掌は汗で濡れている。すぐ横で補給員が追加弾を装填するが、その息は速い。この一発で止められなければ、湾岸の街区が火の海になる。
統幕指揮所(市ヶ谷)。巨大スクリーンの軌道予測線が、ゆっくりと、しかし確実に東京湾奥へ迫っていた。「——種別、依然判別不能」統幕長は無言のまま椅子の肘掛けを握り、関節が白くなる。誰も言葉を発さない。全員が、次の数字を待っていた。
日本海・「みょうこう」艦橋。「SM-3発射まで——二十秒!」