第67章 三方面の警鐘
東京・市ヶ谷/ハワイ・キャンプ・スミス/韓国・烏山基地
米早期警戒衛星SBIRSからのデータが、同時多発的に三つの指令系統へ送信された。在韓米軍司令部、在日米軍司令部、そして防衛省統合幕僚監部だ。
韓国・烏山空軍基地では、管制塔のサイレンが甲高く鳴り響き、滑走路脇のTHAAD(高高度防衛ミサイル)発射部隊が慌ただしくカバーを開ける。オペレーターの指が端末を連打し、弾道予測の最新曲線が巨大スクリーンに描かれる。「THAAD発射部隊、シーケンス開始!PAC-3、即応態勢へ!」
東京・市ヶ谷の地下危機管理センターでは、防衛大臣と統幕長がスクリーン前に立ち尽くしていた。通信士官が声を張り上げる。「在日米軍横田・嘉手納、即時迎撃態勢入り!自衛隊もBMDフェーズ・アラート発令!」別の士官がPAC-3部隊とイージス艦群の配置を示すマップを指差す。「こんごう型2隻、沖縄南方に展開中。発射認定時点でSM-3ブロックIIA迎撃可能!」
ハワイ・キャンプ・スミスの作戦フロアでも、警告灯が一斉に点滅する。米インド太平洋軍司令官が短く命じた。「全防空部隊にコード・レッドを送れ。標的は不明でも、上空で燃えるのはこっちの責任だ」
だが、そのスクリーンにはまだ、赤い軌跡の終点がソウルか、横田か、あるいは横須賀か——確定しないまま、ただ秒針だけが、冷たく刻み続けていた。