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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン4
567/2290

第58章 転進

戦艦「大和」艦橋

艦橋前方の大型スクリーンには、二つの戦域が同時に映し出されていた。


北西の尖閣海域では、中国海軍の補給船団が動きを止め、1,500名の陸戦部隊が孤立している。本来なら中国側は救援のために戦力を貼り付けるはずだった。だが、その動きは――ない。


航海長が首を振った。「尖閣方面、艦艇配置に変化なし。宮古島へ転進する艦影、多数」


雨宮艦長の視線が、スクリーン下部の海図に落ちる。自艦は尖閣と宮古島のほぼ中間、どちらにも動ける位置にいた。尖閣防衛はすでに水中自立型ドローン群と海自第5護衛隊がカバーしている。


野間がタブレットを掲げた。「大友からの暗号通信です。防衛幕僚の会話を傍受したもの。……『尖閣維持は困難、宮古島も損耗覚悟』とのやり取りが入ってます」


雨宮は目を細めた。「損耗覚悟、か……それは守る意思がないということだ」


野間は淡々と続けた。「統幕は宮古島への戦力集中を渋っています。政治判断待ち、と」


その瞬間、艦橋の空気が冷えた。雨宮はゆっくりと息を吸い、決断を口にする。


「尖閣は無視する。ドローンと護衛隊に任せろ。我々は宮古島へ向かう。敵が橋頭堡を固める前に主砲で港湾ごと叩く」


砲術長が反射的に頷き、航海長が南東への最短航路を描く。機関科からは出力120%維持可能との報告。


雨宮は艦内広報を開いた。「全乗員に告ぐ——目標は宮古島。防衛幕僚の指示は待たない。我々がここを守る」


艦体が低く唸りを上げ、南東へと舵が切られる。


スクリーンの中で、宮古島方向の赤い艦隊シンボルがじわじわと近づいてくる。


その中心には、まだ未完成の敵橋頭堡があった。

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